福島・双葉郵便局が震災から13年ぶり復活…住民帰還1年半「町が前へ進んでいる」

東日本大震災による東京電力福島第1原発事故後、営業を休止していた福島県双葉町の双葉郵便局が7日、13年ぶりに復活した。これで避難指示が出た11市町村全ての自治体で郵便事業が再開。午前9時のオープンから町民20人が訪れ、お祝いムードとなった。双葉町は震災直後から全町民が避難を強いられていたが、2022年8月に帰還困難区域のうち一部地域の避難指示が解除。現在は102人が町内で暮らす。いまだ厳しい状況のなか、郵便局復活が町の本格再建への第一歩となる。(樋口 智城)
午前9時。業務が開始されるとともに、はがきや小包を手にした町民が次々と新しい建物へと入っていった。東日本大震災と福島第1原発事故のため、13年にわたって業務を休止していた双葉郵便局。長いブランクを経て、ようやく復活を遂げたのだ。
今年1月にいわき市内から双葉町に帰ってきたという石井みゆきさん(86)は「住んでいる場所の近くにできたことがうれしい。これからどんどん利用したい」と喜んだ。この日送った3つの小包は、自宅の新築祝いのお返し。「再開をずっと待っていました。町が前へ進んでいると感じますね」と感慨深げだ。
石井さんは郵便こそ双葉駅前の町役場に設置されているポストに投函(とうかん)していたが、小包の郵送や郵便貯金の引き出しなどは、電車で1時間かかるいわき市内の郵便局を利用してきた。「『帰りたい』を生きがいにして、やっと帰ってこられたわけですから。大変な思いをしなくて済むってことだけでも、私には大きいことなんです」
震災直後から全町民が避難していた双葉町は、2022年8月に帰還困難区域のうち町の面積の15%で避難指示が解除。避難指示が出された11市町村のうち、最後に住民帰還が実現した。現在戸籍のある5411人のうち、町内に住むのは102人。昨年の住民意向調査で約15%の人が「町に戻りたい」と回答したことを考えると、700人ほどが戻りたくても戻れない状況だ。
解除実現以降の1年半で、町役場や診療所は新設できた。一方で商業施設は住宅地から離れた場所にコンビニが1軒しかなく、日用品は隣町のイオン浪江店の移動販売が平日昼ごろに訪れている。今後は駅近くにスーパー、飲食店ができる予定だが「実際の営業は、再来年になる」(双葉町職員)。生活インフラは、まだ整い切れていない状態だ。
だからこそ、郵便局の再開は大きい。オープン前のセレモニーでスピーチした佐々木範雄局長(52)は「ここがみなさんの情報交換の場になれればうれしいですね。地域の憩いの場として復興に貢献していければ」。震災から13年だが、住民帰還が実現して1年半の双葉町にとっては、今が復興のスタート地点にいる。
◆東日本大震災 2011年3月11日午後2時46分に発生したマグニチュード9.0の巨大地震。三陸沖を発生源とし、最大震度は宮城県栗原市での震度7。死者・行方不明者が2万2200人以上に上った。建築物の全壊半壊は合わせて40万戸以上。津波の影響で、東京電力福島第1原発の事故が発生。政府は隣接地域での居住を制限、15万人以上が避難生活を強いられた。

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