ドラッグストアに置かれたティッシュペーパー、ある時から「商品名」が微妙に変わったのはなぜ?

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「今回はネピネピにしようか?」「いいけど、ネピネピって何?ネピアじゃないの?」
ドラッグストアに買い出しに行った時の私と家内の会話です。
昭和の時代、ティッシュペーパーの4大ブランドといえばクリネックス、スコッティ、ネピア、そしてエリエールでした。そのうちクリネックスは今でもクリネックスなのですが、残りの3つはなぜか商品名が令和になってみると変わっています。
具体的にはスコッティフラワー、ネピネピ、そしてエリエールイーナです。なんで商品名が変わってしまったのでしょうか?
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実はこれまで長い戦略コンサルタント人生を歩んできたこの私、今から40年前、新卒で最初の仕事がティッシュの流通戦略のお手伝いでした。
そのため社会人として最初に叩き込まれた業界知識がティッシュというわけです。その時の古い話から始めさせていただきます。実は昭和の時代、ティッシュには大きさについて二種類のJIS規格がありました。
大手の4大ブランドは大きい方のJIS規格で、枚数は記憶では当時200組が標準だったはずです。もうひとつ小さい規格があって、これは今はM&Aでなくなってしまったホクシーという会社のティッシュがその大きさでした(現在ホクシーは王子ネピア内のブランド)。
ホクシーは昭和の時代、スーパーでより安いティッシュを買いたい顧客向けの商品で、枚数は150組程度、価格は大手よりも大幅に安かったものでした。

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それで面白いことに、どちらが売れるかといったら圧倒的に4大ブランドの方が売れていました。一億総中流の時代でしたし、日本がイケイケの時代でしたから。デフレが始まるのが1997年頃で、その当時、サラリーマンの平均年収は500万円だったのです。
そこから先はみなさんよくご存知の「給料も物価もどんどん下がる時代」が始まりました。それでもティッシュはもともとスーパーで安売りの目玉商品として売られていたのでデフレでも価格を下げる余地がほとんどなかったのです。
それで大手各社が始めたのがステルス値下げ(?)でした。一箱の中身が180組になり160組になり、やがて150組になり、値段も少し下がったのです。

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ただ大手メーカーもそういった値下げがうまく行くかどうか不安になるものです。
「もしステルス値下げをして枚数を減らしたら、ホクシーと同じレベルに思われてしまって逆に売れ行き悪くなるんじゃないだろうか?」と心配するわけです。
そこで各社が行ったのが、兄弟ブランドを作ることです。スコッティはスコッティフラワー、ネピアはネピネピ、エリエールからはエリエールイーナが誕生したのです。
実は各社とも、もともとのブランドの商品は残っています。スコッティとエリエールはそれぞれ元と同じ名前で200組と180組の商品を発売していますし、ネピアはネピアプレミアムソフトという商品名でやはり180組の商品を発売しています。

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こうして2種類の兄弟ブランドに分かれた結果、時代がデフレだったせいでしょうか、今では新しく誕生した枚数が少ない方のブランドが主流になったというわけです。
ちなみに豆知識ですがクリネックスだけは今でもブランドが変わりません。その理由はクリネックスとスコッティが合併したからです。
合併の結果、庶民向けのブランドはスコッティとスコッティフラワー、富裕層向けのティッシュはクリネックスということで今ではすみ分けているようです。ご参考まで。

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Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「ティッシュのブランド名」をテーマにお届けしました。

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