親から墓じまいの相談が……流れやお金について調べてみました

お墓は先祖から受け継がれてきたものですが、近年、様々な事情で今あるお墓の承継が難しくなってしまい、墓じまいを選択する方が増えています。先祖代々受け継いできたお墓でも、その後の管理や維持が難しくなってしまうケースがあるからです。今回は、墓じまいをするにあたって、必要な手順や費用感などを解説していきます。
○急に親から墓じまいに相談がきた

急に親から、「墓じまいをしようと思う」と相談を受けたら、まず何をすればいいのか分からないですよね。「子どもや孫に負担をかけたくない」、「年を取ったことにより、夫婦の実家のお墓の維持がたいへん」など、供養に対する価値観の多様化もあり、墓じまいを検討する方もいます。

また、現在の日本では、少子高齢化や核家族化が進んでおり、単身世帯、夫婦のみの世帯などでは、お墓の跡を継ぐ人がいない、という理由から、墓じまいを選択するケースが少なくありません。
○墓じまいって何?

墓じまいとは、文字通り、お墓を解体・撤去し更地にしたあと、その使用権をお墓の管理者に返還することをいいます。法律上、墓石の撤去、遺骨を取り出して別のところへ納骨をする、または廃棄するなどの行為は、勝手に行うことはできず、きちんとした行政の手続きをする必要があります。

お墓の解体から、遺骨の新しい納骨先を用意するところまでを墓じまいと考えられることがほとんどです。

では、墓じまいをする際の手続きの流れを説明していきます。
○墓じまいの流れ

墓じまいの流れとして大きく7つの手順があります。

(1)親族の同意を得る

墓じまいをするにあたって、お墓に関係する親族にあらかじめ同意を得ましょう。同意を得ずに勝手に行ってしまうと、後々親族間でのトラブルになってしまう可能性があるからです。「墓じまいをする理由」や「費用の負担」、「撤去後の遺骨はどこにいくのか」などをきちんと説明し、納得してもらう必要があります。

(2)改葬に必要な手続きや書類を確認する

改葬とは、お墓のお引っ越しとも呼ばれ、現在のお墓から遺骨を取り出し、別の場所へ納骨することをいいます。その際に、事前に行政の手続きを行い、「改葬許可証」を取得する必要があります。

自治体によって改葬の手続きは異なるため、今あるお墓が所在する自治体に問合せをし、書類を取得・作成してください。

(3)墓地管理者へ改葬の意志を伝える

現在あるお墓の管理者、寺院や霊園に改葬したい意志を伝えましょう。そこで「埋葬証明書」を取得します。長年、お世話になっていた場合は親族の同意と同じように、きちんとした事情を説明し手続きを進めることが望ましいです。

(4)納骨先(新しい供養先)を決める

次に納骨する先としては、一般的には納骨堂や永代供養を行っている施設や手元供養などがあります。納骨先が決まったら管理者へ「受入証明書」を発行してもらう必要があります。

(5)改葬許可証を取得する

以前のお墓の管理者から発行された「埋葬証明書」と、次のお墓の管理者のある自治体に「改葬許可申請書」を提出し、「改葬許可証」を発行してもらいます。「改葬許可申請書」は自治体の窓口やHPからダウンロードすることができます。「改葬許可申請書」に記載する内容は、各市区町村により異なるのであらかじめ確認し、情報を用意しておくことをおすすめします。

(6)遺骨の取り出しと墓跡の閉眼供養

上記の改葬許可証を取得した後に、お墓の中に入っている遺骨を取り出すことができます。お墓によっては、お墓に宿っている魂をお坊さんに抜いてもらう「閉眼供養」を行う場合があります。

(5)墓跡の撤去、解体、使用権の返還

遺骨の取り出しが終わったら、お墓を解体し、墓石の撤去を行います。お墓のあった土地をならし、整地にした後に、管理者へ土地を返還し、墓じまいは終了です。

○墓じまいの費用

墓じまいにおいて、さまざまな手続きがありますが、その際にかかる費用もざっくり解説します。

・お墓の解体、撤去費用

一般的にはお墓の1平方メートルあたり10万円程度が相場とされています。しかし、土地の広さや墓石の大きさ、遺骨の数、作業人数などでもかかる費用は変わってきます。

・各種書類の交付費用

上記で述べたような埋葬証明書や改葬許可証などの発行にかかる費用は、自治体によって変わりす。大体数百円~千円程度と考えて良いでしょう。

・お布施

墓じまいにおいて、僧侶に閉眼供養など僧侶に支払うお布施があります。一般的な法要と同じで、2万円~5万円と考えて良いでしょう。決まった額はなく、地域やお寺ごとに異なっているため、あらかじめ確認しておくことをお勧めします。

・離壇料

それまでお世話になっていた寺院や墓地へ離壇料を支払う場合があります。3~20万円程度が相場とされ、法的な根拠はありません。あくまでお礼のためにお渡しするものです。もし高額な請求をされた場合は、専門家へ一度相談してみるのも良いでしょう。

・遺骨の新しい移転先へのお布施や法要費用

移転先で、僧侶にお布施を渡す場合があります。通常の法要と同程度の額を用意することが望ましいです。納骨の方法によって費用が異なってくるので、移転先を探す際にしっかりと確認をしておきましょう。
○墓じまいの注意点

墓じまいをしようとする上での注意点は、事前に全体の流れを把握し、親族へ相談し同意をきちんと取っておくことです。個人の意見だけでなく、親族間での異なった意見にも耳を傾け、事前に考えを共有しておくことが非常に大切と言えます。お墓は先祖代々引き継がれてきている物のため、事前の確認と準備を怠ってしまうと後々、親族間でのトラブルや、費用が思ったよりかかってしまったなんてことにもなりかねません。
○まとめ

お墓に関しての考え方は、ひとりひとりの価値観や死生観が反映されるものです。先祖代々受け継がれてきたお墓でも、やむを得ない事情や、それぞれの考え方によって墓じまいを検討する方は多くいます。墓じまいをするとしても、今までと変わらず、先祖への感謝の気持ちとお礼を伝えられるよう事前の準備をしっかりしておきましょう。

この記事を執筆したファイナンシャルプランナー紹介
小峰一真(こみねかずま)
所属:マイホームFP株式会社

MILIZE みらいず AIとITと金融工学の力を駆使し、お金の計画・管理・運用まで完結できる次世代の金融ウェブサービスを手掛けている。個人の方向けには、専属FPにオンライン相談・メール相談ができるサービス『TAMARU』や、お金の情報について動画で分かりやすく解説する『MILIZEチャンネル(YouTube)』など、”金融商品を売らない”完全中立的な金融サービスを提供している。 この監修者の記事一覧はこちら

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