東京都台東区のホテル経営者夫妻が昨年３月、当時4歳の次女を毒殺させたとする事件。警視庁に殺人容疑で逮捕された妻の細谷志保容疑者（37）が、児童相談所に保護されていた子どもを“奪還”するのに利用した実の父親に、不満や愚痴などを延々と綴ったメッセージを送りつけていたことがわかった。集英社オンラインが入手したメッセージは計9000字近くに及び、3人の子どもを産んだ自分を徹底的に賛美する一方で、子どものわがままを聞いてくれない保育園の方針に怨嗟をぶつけ、母親と離婚した父親に対しても「美しい孫を産んでやったのだから子育てぐらい手伝え」などと、驚くほど自分勝手な言い分を書き連ねていた。
#6で詳報したように、志保容疑者は2019年３月に自宅のベランダに放火して逮捕され、長男Aくんと長女Bちゃん、次女の美輝（よしき）ちゃんの3人の子どもは東京都児童相談センターに保護された。同センターは子どもたちを家庭に戻すにあたり、細谷夫妻以外の親族を監護者につけるよう求めたため、子ども“奪還”に執念を燃やす志保容疑者は自分の父親に協力を依頼した。両親が離婚した志保容疑者は母親を伴って北海道から上京、千葉県で暮らしたのち、勤務先の店舗で出会った健一容疑者と結婚。母親は数年前に死去し、父親は北海道に残っていたが、娘からの「SOS」に呼応して監護者になり、2020年9月までに3人の子どもを順次「取り戻す」ことに成功した。
乳児を抱く志保容疑者（知人提供）
しかし、細谷夫婦のあまりの無軌道ぶりに嫌気がさした父親はほどなく、北海道に戻っていった。9000字のメッセージは、その父親に対して志保容疑者がLINEで送りつけたものだ。支離滅裂な個所も多いが、ほぼ原文通りでお伝えする。〈お父さんが保育園のノートが酷いと言っていたが保育園で寝不足がひどいせいで集団生活が送れないような事が書かれていたりしますが同じ時間に寝た二人のうちBちゃんは朝からしっかり食べて元気いっぱいで行ってもAは朝ごはんもあまり食べれず保育園でもグダグダで過ごしていた 寝不足のせいではないのではないか そもそもそうだったとして母親が妊娠中だったり父親が甘えん坊で全て食べさせて欲しいと言う幼児二人を抱えて必死でやっていてなおかつBちゃんとAはすごく喧嘩したりお風呂や歯磨きがシッターさんでもかなり手を焼いている状態で誰ならそこまで出来るんですか？祖母なり祖父が手伝ってくれる家や子どもが大人しかったり甘えん坊じゃない家で兄妹仲も良ければ出来るでしょうが誰も手伝ってくれずやっていて何をそこまで言われなければいけないのでしょうか 日本が少子化しているのはこう言う風に二人ですらうるさければ育て難くて人に迷惑をかけるな自己責任子どもがおかしくなると大らかな気持ちで見てもらえず大変な事が分かっているからではないですか〉
細谷家が住んでいたビル
句読点もなく、誤字脱字だらけのメッセージは保育園への愚痴から、父親への悪口に変わっていっている。〈死んだ母は元気だった頃父親みたいな体を使った事もやってくれたし面倒もしっかり見てくれたし祖父はいなかったくせに言う権利もないのにどの口で言っているのですか？（中略〉美しい孫を産んでもらって感謝して欲しいくらいです どこにあんなに美しい孫がいるおじいちゃんがいるんですか アイドルよりかわいく女優より美しい 悪魔のような性格も含めて完璧な女性なんです 悪女の娘が産んだから天使の様にかわいく悪魔の様に美しい性格仕草まで完璧な美の化身が誕生出来たんです パパの遺伝子はほとんど関係ないので私の功績です）
逮捕された志保容疑者（撮影/集英社オンライン）
〈Aは今のところ会社を継がせるつもりですが勉強熱心だったり集中力があったり社交的だったり信念があったりするのは私が上手く産んだからです イケメンだとかみんなが言われると思ったら大間違いですよ お父さんはそういう風に容姿を褒められた事ありませんよね 申し訳ないですがお父さんにはもったいない孫です。よっちゃん（美輝ちゃん ※編集部注）まで美しいとなれば3人連続であり得ないくらいの孫を産んであげたんですから子育ては俺がやるくらい言ってください〉父親の夫（健一容疑者）に対する態度が気にいらなかったのか、志保容疑者はさらにこう父親を中傷した。〈AのおじいちゃんはAにパパはすごいと言わないといけないんですよ 母は絶対にパパママをAの前では褒めました Aの前で悪口は絶対に言わないで下さい虐待もしていないしパパもママも子どもの為に生きていていつでも死ぬ覚悟で人生捧げて来たので子どもが児相でおかしくなったんですよ＜中略＞あなたの様な無責任な親ではありません 私はAを産んでからいつでも死ぬ覚悟です Aを産む為に生まれて来てAを育てる為Bちゃんよっちゃんを育てる為に生きてるんです 母の遺言は孫を守れって事で昼夜逆転もそのための行いです お父さんにはわからない事がたくさんあるんです お察し下さい〉
逮捕された健一容疑者（撮影／集英社オンライン）
自分と夫と子どもについては過剰な自慢、他人に対しては父親を含めて全方位を攻撃、といっても過言ではない超アグレッシブな志保容疑者のメッセージは続く。〈私の産んだ子どもを児相が人権無視して蹂躙した結果幼児退行させられた！取り返すのはママが選んだ弁護士だ！親として昼夜逆転しても何しても大事な所抑えてる！わからないのは無知だからです！母が私の育児方針を尊重したのはどんな母親でも母親は子どもの為に死ねる子どもを人生の1番にしてるからだ！そもそもパパが頑張って一人で用意して送り迎えしてるのを悪し様に言うのは人間として終わってる！お父さんは楽してて取り繕ったよその母親を褒めてABちゃんよっちゃんの母親を侮辱して口が腐ってる！Bちゃんが将来育児が下手でも私は何も言いません！私が手伝って何ならシッターさんも頼むしパパも絶対手伝って全面的に産まれる前から協力します！お父さんは何もしてなかったでしょ！〉
志保容疑者の実家を捜査する捜査員、中はゴミ屋敷だった
〈3人共大きかった！健康に産んだ！Aは5歳でスーパー戦隊のレッドのスーツアクターと同じ動きするフィジカルエリート！Bちゃんは全ての女性の頂点！よっちゃんは知らないけどね！こんなレベル高い子どもどこにいるの！Bちゃんよりかわいい子どこにいるの！Aより動きのすごい子どこにいるの！足は並でもスーツアクターと5歳で同じ動きはスーパーフィジカルエリートだ！〉
長男と長女に対しては無批判に親バカぶりを発揮する志保容疑者も、後に毒殺する美輝ちゃんに対しては「知らないけどね！」と突き放し始めていたのが見てとれる。そして、やたらと「遺伝」にこだわりをみせてこんなメッセージを送っている。〈遺伝を無視して環境でどうこうなるというのは無知の極み！頭の良い親から頭の良い子どもが生まれお金持ちになったり医者や弁護士になる！やる気も性格！夜鷹も遺伝！夜鷹の遺伝子持ってると昼夜逆転してる方が健康！私は母の遺伝で元々夜鷹！子どもの為に合わせてただけ！運動神経も容姿も遺伝！時々出てない遺伝の部分が出たり両親より頭良い悪い極端に違う場合もあるけどある程度決まってるの！＜中略＞ABちゃんがピンク好きなのもママの遺伝！まつげは遺伝！Aの発達障害っぽいのも遺伝！ママをひどくして独自の進化をとげたの！Bちゃんのバイオレンスはオリジナル！育て方ではないので兄妹違う！虐待されてるならなぜ帰りたい？喧嘩したからって施設って人権侵害だから！言わないけどね！いつのまにか親がおかしいだけになってるどうせそう言う人がいるからだし！〉
志保容疑者（知人提供）
家事をしないことも志保容疑者なりに正当化している。〈料理は子どもが帰って来たら作ります 自分の食事は作らないしお父さんにも文句言われたので作りません パパも文句言ったので作りません みんな外食すれば良い嫌なら自分でどうにかすれば良い大人でしょ＜中略＞そもそも家事をした結果子ども1人より家事しなくて3人の方が良いんじゃない今時家事やって3人は中々難しい そもそも幼児2人赤ちゃん1人は家事育児って無理 そもそもママは家事苦手片付け出来ない パパも片付け出来ない 出来ないけど家事代行頼んでて子どもたちは普通に暮らしてた 食器洗うと潔癖症で水が飛びお風呂に入らないといけなくなり私が洗うなら全員紙コップ紙皿使ってください無理です掃除もお風呂入らないといけないので そもそもお父さんがやっても良いんじゃないですか 母親は子どもを産む育てる女性であって家事をする女性ではありませんよ＞
ゴミ屋敷だった細谷家（知人提供）
以降も他人への悪口や父親への中傷が続くが、ここまでの「自分語り」で志保容疑者の人となりは十分に伝わったのではないだろうか。
取材・文／集英社オンライン編集部ニュース班