旅行をするとき、絶対に必要なもの。
それは一つではないだろうし、人それぞれだろうが、僕の場合はいつも、“紙の本”が筆頭に挙がる。
本好きが高じて編集者兼ライター/コラムニストという職業を選んでいるようなものである僕の家には、もう嫌になっちゃうくらいたくさんの本がある。
それでも最近は少しずつ断捨離しているし、買うときも電子書籍の方を選ぶ努力はしている。
○■旅行に行く際に必ず持っていくものの筆頭は“紙の本”である
しかしどうしてもページをめくる感触や、紙や印刷の香り、本の厚さや重みが好きで仕方なく、思い入れの強いタイトルほど紙の本を選択する。
そして日常を離れひとときの心の安らぎを得るため旅行に出る際は、特に興味がある内容の“紙の本”をお供として持っていくのが、自分にとっては大いなる楽しみなのだ。
2月の上旬、7泊8日の日程でタイに行ってきた。
コロナ禍や、コロナ明けのエンヤス禍に苛まれて足が遠のいていたので、実に5年ぶりの海外旅行である。
今回は万難を排して旅立ち、久しぶりに異国の空気を満喫してきたのだが、その間にもたっぷりと本を読むことができた。
旅をしている間は本を読む時間がふんだんにある。
乗り物の待ち時間や飛行機に乗っている間はもちろん、いつもの生活以上に妻や娘と行動をともにするので、女性の身支度を待っている時間なども馬鹿にならない。
僕は下戸で酒を飲まないから夕食後もシラフであり、眠りにつくまでの長い時間をベッドの上で読書タイムに充てる。
今回のタイ旅行は半分の日程をバンコクで、残りの半分をピピ島のリゾートホテルで過ごしたが、ゆったりした雰囲気のリゾートに行くとさらにゆとりが生まれ、快適至極な部屋の中やプールサイド、ビーチにも本を持ち出した。
そう聞くと何冊もの本を持っていって次から次へと読み進めたのかと思うかもしれないが、僕は読書家の中では相当な“遅読派”。
一文字ずつ一行ずつをゆっくり噛み締め、3歩進んで2歩下がったりしながら読書を楽しむスタイルなので、7泊8日の日程でも厚い本なら一冊持っていくだけで十分だ。
今回は念のため400ページクラスの文庫本を2冊持っていったが、結局、読破したのは一冊のみで、もう一冊は手付かずのまま帰国した。
そうそう、いくら紙の本が好きだと言っても、旅行中はやはり荷物の重さや大きさがネックになるので、持ち出すのは文庫本に限るということも書き加えておこう。
さて、そんな僕が旅行に行く際、文庫本を持ち出すために必ず使っているブックカバーがある。
それがgo slow caravan×BIBLIO PHILICの『ブックサック』という代物だ。
○■小さな小さなアイテムを入れられるのが、旅先の読書では意外なほど便利
go slow caravanは、旅行・フェス・キャンプ・サーフィン・サイクリング等々の外遊び好き仲間が集まって始めたというブランドで、衣類をはじめとするアウトドアテイストのアイテムを多数展開している。
BIBLIO PHILICは“「本のある生活」を楽しむ”というコンセプトを持つブランドで、ブックカバーや本棚、ブックトートなど、本と人を取り持つさまざまな「道具」を取り扱っている。
そんな2つのブランドがコラボすることによって生み出された『ブックサック』は、リュックサックをそのまま小型にしたようなデザインの、存在感があるブックカバー。
「読書に必要最小限のものをすべて持って出かけられる」というテーマに添い、アウトドアでの「本のある生活」を楽しむためにデザインされた、ポーチ型のブックカバーなのである。
僕はこのブックカバーを数年前に蔦屋書店で見つけ、おしゃれで面白いなと思い購入。ポーチ型という商品の最大の売りポイントについては、正直言って「使うかな?」と疑問で、デザイン要素の方を重視していたのだが、使ってみるとこれがなかなか便利だったのだ。
ポーチといっても所詮はブックカバーなので、そこまでいろいろなものが入れられるわけではない。
「小銭や読書に必要な付箋、ルーペなどの小物を入れるべし」とされている表面のジップ付きポケットに、僕の場合は錠剤(頭痛持ちなので)や目薬などを入れている。今回のタイ旅行の間は、タイの名産品と言っても過言ではない、メンソールのリフレッシュ嗅ぎ薬・インヘラー(現地語では「ヤードム」)を入れていた。
裏面には「スマートフォンがすっぽりと収まる」と謳われたポケットがあるが、僕は大型のiPhone 15 pro maxユーザーなので、スマホは無理。代わりに虫除けのハッカ油を入れておいた。
ちなみに、プールサイドやビーチなどタイの屋外で読書をする場合は、蚊に悩まされることが多く、このハッカ油は大変な活躍をしてくれた。
内側にはペン刺しと2つのカードポケットが付いている。
ペン刺しは文庫本ではなく、スケジュール帳などのカバーとして使う人用なので僕には必要なかったが、カードケースの方にはお気に入りの革製しおりを入れておくのにぴったりだ。
これも僕はあまり使わないのだが、裏面の上部にはカラビナがついていて、バッグやズボンのベルトループに取り付けられるようになっている。
○■ごちゃごちゃのカバンの中に放り込んでおいても、本が傷まないのだ
そしてこのブックカバー最大の特徴と言ってもいいのが、全体がラウンドジップ仕様になっていて、読まないときは中の本を完全に収納できるところ。
これが非常に便利なのだ。
旅行のお供に持ってきた本は、カバンの中に入れて移動している時間がおのずと長くなる。そしてお土産など、行く先々で買ったモノもそのカバンの中にどんどん放り込んでいくことになるので、フツーのブックカバーやカバーなしで本を入れておくと、ページが折れてぐちゃぐちゃになったりすることがよくある。
その点、このラウンドジップ仕様の『ブックサック』は、可愛い本を完璧に守ってくれるので、長い旅であってもピカピカの状態を保つことができるのである。
ちなみに僕は、半信半疑で使い始めたこの『ブックサック』がとても気に入り、もう一個追加購入。
今は2冊の文庫本を同時に『ブックサック』で守りつつ、旅行に連れ出せるようになった。
なかなかマニアックな商品かもしれないが、『ブックサック』は発売以来けっこうな年月が経過し、さまざまなファブリックで作られたバージョンが世に出ている。
お気に入りのデザインを見つける楽しみもあるので、気になる人はぜひ探してみたらいいのではないかと思う。
文・写真/佐藤誠二朗
佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。新刊『山の家のスローバラード 東京山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』発売。
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