〈浜名湖・17歳殺人〉「互いにブラザーと呼び合っていた」フィリピンをルーツに持つ主犯格の少年たちは白と黒のレクサスを乗り回し、爆音、ポイ捨て、路駐…かつての少年は「ぽっちゃりした穏やかなヤツ」

静岡県湖西市の浜名湖で通信制高校2年、斉藤宇川さん(17)が溺死体で見つかり、浜松市内のアパートに集まった多国籍グループのメンバーら5人が監禁などの容疑で逮捕された事件で、斉藤さんはメンバー所有の高級車レクサスのトランクに押し込められて浜名湖の現場まで拉致されていった疑いがあることがわかった。県警は5人が殺害に関与した可能性もあるとみて調べを進めている。
この事件ではともに浜松市中央区に住む無職、堀内音緒(21)とフィリピン国籍の少年C(18)の両容疑者が傷害と監禁容疑で、17歳の少年3人(うち1人はブラジル国籍のB)が監禁容疑で逮捕されている。社会部デスクが解説する。「主犯格とみられる堀内容疑者は黒いレクサス、C容疑者は白いレクサスを所有し、ふだんから乗り回しています。2月5日未明にメンバー全員と斉藤さんがアパートに集まり、トラブルから暴行され、けがを負った斉藤さんはトランクに押し込められて浜名湖まで運ばれて外に出され、生きた状態で湖に突き落とされたとみられています。司法解剖では溺死と判明、肺に浸入した水から現場一帯の水質と矛盾のないプランクトンが検出されているのは間違いない。トランク内に付着した血痕や微物の鑑定も進んでおり、今後明らかにされると思います」
死亡した宇川さん(知人提供)
「白と黒」の2台のレクサスは、堀内容疑者の自宅周辺でもよく知られていたようだ。ともに車高をイジるなどした改造車で、また、タバコを投げ捨てて騒いだりするなど、彼らの評判はかんばしくなかった。堀内容疑者の自宅近くの商店主は苦虫を噛みつぶしたような表情でこう話した。「堀内なら知ってるよ。いつもタバコをくわえながらマンションから出てきて、ウチの店の敷地に捨てていったから。もう何本拾ったかわからないくらいタバコの吸い殻を捨てていった。ひどいときはウチの植え込みにゴミを入れたり、もうやりたい放題だったね。車もエンジンふかしてものすごい大きな音を鳴らして、とにかく迷惑していた。ヤツの友だちも車に乗って集まるんだけど、マンションの駐車場に車が入りきらなくてウチの駐車場に勝手に停めて、そこで仲間と溜まってベラベラ喋ったりね」
堀内容疑者が所有していたとみられるレクサス
この商店主の目には、仲間も含めて皆、その容姿は外国人風に映っていた。「私が見た限りはほとんど外国の若い男女が集まっている感じだったよ。何度か堀内容疑者が若い女の子を連れて近所を歩いてるのを見かけたね。あいつが家に何人で住んでるのかもわからないけど、働いてないのか昼も夜もバラバラの時間帯に出てきて、出てくるたびにタバコを捨てていくから、ほんと迷惑していた」別の商店の店主もこのグループをよく見かけたが、注意すると意外に素直な反応が返ってきたこともあるという。「いつも仲間と4~5人で溜まっていましたね。暴走族みたいな改造した白と黒の車に外国人の若い男が乗っていて、女の子も派手な軽自動車で来ていました。音もうるさいし、みんなガラも悪いから怖いけど、あまりにもひどいんで『ここに勝手に車を停めたらダメだろう』って注意したら意外にも『ごめんなさい』って車をどかしていなくなりました。しかし、今度は道路向かいのお店の駐車場に勝手に置いてたむろするようになりました。営業時間が終わっていたものの、放っておくわけにもいかないので『そこも人の駐車場だから停めたらダメだろう』と注意すると、そのときも『ごめんなさい』と素直に移動したんですよ。でも、そしたら今度は道路に路駐するようになった…」
この「白黒レクサス」コンビがいつから親しくなったのかはわからないが、C容疑者は幼少期に単身フィリピンから来日した「苦労人」だったようだ。友人がこう証言した。「Cがフィリピンから日本に来たのは小学校高学年のときです。両親はフィリピンに残っていて、日本に住んでいる親戚の家に来るという形でした。当時Cはまったく日本語が喋れず、僕らもよく日本語を教えていました。学校には他にもフィリピンの子がいたのでCを白い目で見たり、馬鹿にしたりする人はいませんでしたよ。C(の素行)が悪くなっていったのは中学を卒業してからですね。Cは高校には行きましたが、確か定時制か通信制だったので日中はけっこう暇していて、浜松駅近くのこの辺でよく遊んでいました。そこに同じような境遇のフィリピン人がいて、その仲間、またその仲間と繋がっていきました」
バイク乗りでもあったC(知人提供)
友人がこう続ける。「小学生時代から知ってる自分にとっては穏やかで優しいやつという印象しかないし、最近もコンビニの裏手で顔を合わせれば『おおっー』って感じで話をしました。今は見た目も不良っぽくなってますし、ケンカもやるときはやるという感じですが、中学の頃はほんと普通でした。Cはバスケもうまくて運動神経が悪いわけではないのですが、ぽっちゃりしていたので『豚』とイジる同級生がいたんです。Cは嫌な顔はしてましたが、怒ったりはしませんでした。でもこの前、そいつが当時と同じノリで接してきたから『殴ってやった』と言っていました。少し前まで彼女がいたけど、その子とは別れたとも言ってました」
現場アパートに頻繁に駐車されていたCの愛車のレクサスとブラジル人Bのバイク(近隣住民提供)
中学時代、サッカー部に所属していたCは、決してモテるタイプではなかったという。ある同級生の女性はCの変貌ぶりに驚いていた「昔は、丸っこいかんじで好きな女の子にずっと手を振っているようなちょっとイタイ子でした。SNSを見るとバイクに乗ったり、中指をたてて写真撮ったり…完全にグレちゃいましたね。よく駅前で爆音で音楽かけながら大声ではしゃいでましたしね」
C容疑者のSNSを見ると、堀内容疑者と車を2台並べて洗車した思い出などをあげたり、「兄弟」と呼んでいる投稿もあった。その堀内容疑者は掛川市の出身で、実家の近くに住む男性はこう振り返った。「彼のことは小さい頃に2、3度見たことがあるだけですね。小学生くらいの年代だったかな。ご両親と祖父母で一軒家に住んでいました。お父さんは日本人で会社勤めをしていて、お母さんはフィリピンの方だと思いますが、夜の飲み屋のようなところで働いていると聞いていました。おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってから少しして、今から4年ほど前に浜松市のほうに引っ越しするというのは聞きましたが…」
堀内容疑者(本人SNSより)
母親は堀内容疑者の自宅と程近いマンションに暮らしている。22日、一部メディアに「逮捕を聞いてびっくりした。息子は絶対に(宇川さんを)殴ってない、撮影しただけ」と息子の無実を信じているという。23日、記者がマンションを訪ねると偶然帰宅する母親に遭遇した。名刺を渡したが「ワタシ、ニホンゴワカラナーイ」と言葉を繰り返すのみで、早足で部屋に入ってしまった。いずれにしてもフィリピンにルーツを持つ2人は浜松で出会い、浜松駅周辺で独自のコミュニティを形成していったようだ。「浜松駅の中心部のストリートには、スケーターやトー横キッズのような小僧たち、外国人などいろんな若者コミュニティがあるけど、限度を知らない子が多いですね。モメごとがあると集団で車の荷台に相手を拉致して、山の展望台やカメラのついてない駐車場なんかでビニールシートをかぶせてボコボコにしたり、防犯カメラのついてない駐車場とかでリンチするなど、ヤンキー漫画にでてきそうな話を今でも聞きます。先日も10代のガキが美人局みたいなことをオッサンにして、3万円を巻き上げた上でボコボコにする“オヤジ狩り”もあった。堀内の仲間は捕まった5人以外にも何人かいますが『しばらくおとなしくします』ってSNSに鍵をかけて街中にも現れなくなった。ふだんからヤンチャなことしてますし、余罪や別件でパクられるのが怖いんでしょうね」(20代男性)
遺体が発見された浜名湖の湖畔(撮影/集英社オンライン)
浜松市は古から遠江国の要衝として栄え、明治時代に産業振興都市として飛躍。戦後は数々の技術力の高いメーカーが本拠を置き、近年はその日系ブラジル人ら多数の外国人が工場労働者として支え、独自のコミュニティを形成する国際都市だ。もはや国籍だけではアイデンティティの裏付けにもならないほど多様化した都市で、17歳の少年が「ファミリー」を自称するグループ内で殺されたのは時代のせいなのか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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