入院患者十数人が死亡…改善命令が出た神戸徳洲会病院のデタラメ管理体制

ズサンな管理体制が次々明らかになった──。
神戸徳洲会病院(神戸市垂水区)で入院患者が適切な治療や投薬を受けられず、相次いで死亡した問題を受け、神戸市は20日、安全管理体制に不備があったとして、医療法に基づく改善命令を運営元の医療法人「徳洲会」に出した。
昨年9月、別の大学病院で新型コロナの治療を受けていた70代の男性患者が、症状が落ち着いたため、徳洲会病院に再入院した。患者は糖尿病を患っていたが、医師からインスリンを投与されず、入院から10日後、血糖値のコントロールができなくなり死亡した。男性の主治医である新保雅也病院長が、カルテに記載された糖尿病の既往歴を見落としていた。院長は、亡くなる直前、持病が電子カルテに記載されていることに気づいたが、遺族には「死因は肺炎」と説明。それが一転、市の立ち入り調査後には「血糖値をコントロールできなかったことが死亡の原因の可能性がある」と修正している。
翌10月には80代の男性入院患者に吐血の症状がみられたが当直医が出血元を特定できずに死亡。
今年1月には90代の男性が心肺停止状態で緊急搬送され、治療により心拍が回復し、血圧が下がらないように薬剤の投与を続けていたが、夜になって薬剤が切れ、その直後に男性は死亡した。病室内では薬剤の残量が少なくなったことを知らせる警告音が鳴り、家族が職員に伝えたが、院内に補充分が用意されておらず、看護師がすぐに手配したものの、間に合わなかった。
神戸徳洲会病院のズサンな体制は、昨年6月、市保健所に匿名で「2023年1月以降、循環器内科の男性医師が関わったカテーテル手術など150件で少なくとも11人が死亡した」という旨の告発状が届き、次々に発覚した。
■カルテは書かず、糖尿病を見落とし、薬剤切らす
市健康局医務薬務課の担当者がこう言う。
「院内で医療事故が疑われる事案が発生した場合、常設の医療安全委員会で検証しなければならないため、昨年8月に院内調査するよう指導しました。直後の9月に糖尿病の既往歴見落としの死亡事故が起き、委員会で検証するよう繰り返し指導しました。病院側は委員会を開きましたが、1カ月以上たっても結論を出さず、十分な検証を行っていませんでした」
一連の医療事故をめぐっては、職員から医師の「医療ミス」を指摘する声や、医師と看護師の情報共有体制が不十分という意見が上がり、数日間、カルテを記入していなかった事実も判明。デタラメな管理体制が浮き彫りになった。
今回、医療法に基づいて、兵庫県下で改善命令が出るのは初めてというのだから、よっぽどのことだ。
「市の指導に従わず、病院側の検査体制に改善がみられなかったことから、改善命令に踏み切りました。医療安全体制に重大な不備があったと考えています。これまでは病院長に行政指導をしていましたが、改善命令は法律上、病院設置者である徳洲会本部に出します。改善がみられなければ業務停止処分になります」(前出の担当者)
病院側のあまりにもいい加減な対応には呆れるばかりだ。

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