[社説]ナワリヌイ氏死去 真相解明へ国際圧力を

何度拘束されてもひるまず声を上げることを決してやめなかった。
ロシアのプーチン政権を批判し、服役していた反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が、収監先の刑務所で死亡した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが不当に拘束された人を意味する「良心の囚人」に認定していた。3年もの間、劣悪な環境で投獄し続けたロシア当局の責任は重い。
直近は北極圏にある最も過酷な刑務所へ移送されていた。当局は移送を公表せず、生存が確認されたのは昨年12月23日夜のことだ。
それからわずか2カ月後の訃報である。死因について母親らは、当局から「突然死症候群」と知らされたと明らかにした。
しかしナワリヌイ氏は2020年、毒殺未遂に遭った。治療したドイツの病院では旧ソ連の化学兵器が使われたことが判明し、政権の関与が強く疑われた。
今回の死因にも疑念が残る。第三者機関による透明性の高い調査が必要だ。遺族が求める遺体の引き渡しにも速やかに応じるべきである。
ロシアの民主化に人生を捧げた人物だ。長期政権で言論統制が強まる中、インターネットを通じて政権の腐敗を追及してきた。
獄中からもメッセージを発し、現状に不満を抱く都市部の中間層や若者の支持を集めた。ロシア社会にとって、反政権運動の指導的役割を失った痛手は大きい。
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死亡が伝えられた直後から、モスクワなど各地で市民による追悼の動きが自然発生的に起きている。だが、そこでも政権に抗議を示すプラカードを掲げる人々などが相次いで拘束されている。
大統領選を3月に控え、反プーチンの急先鋒だったナワリヌイ氏の影響を抑えたい政権の意図は明らかだ。
異論を封じ込める政権のやり口は露骨だ。当局はナワリヌイ氏側の組織を「過激派」と認定する訴訟を提起。過激派組織を創設した罪でさらに同氏を訴追し、長期間の懲役刑を科そうとしていた。
それでもナワリヌイ氏は声を上げ続けた。ウクライナ侵攻に対しても繰り返し非難し、獄中から市民に反対の声を上げるよう呼びかけた。
呼応するようにプーチン氏の動員令に対して大規模な市民の抗議デモが行われた。
政権が秘密警察を駆使して反対派の弾圧を強める中、昨年6月にはナワリヌイ氏の解放を求める抗議集会も開かれていた。
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死亡に関して欧米諸国からはプーチン氏を非難する声が上がっている。先進7カ国(G7)外相会合は死亡した状況について「ロシア当局に対し、完全に解明するよう求める」との声明を発表した。
ロシアでは06年にも女性記者が射殺されるなど、政権に批判的な人物の不審死が相次いでいる。
言論の自由を抹殺し、国民の正当な批判を封じ込めようとする独裁者に対し、国際社会は毅然(きぜん)とした姿勢を示すべきだ。

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