「鮮魚トラック」なのに「精密機械輸送中」って!? 銀ピカトラックが半導体業界で活躍する「2つの理由」とは

鮮魚の輸送に使われる「冷蔵冷凍トラック」が、最近「半導体メーカー」にも重宝しているといいます。一見畑違いな業界でなぜ必要とされているのでしょうか。
大きなボックス型の荷台をもった「箱型トラック」は、トラックの中でも特に身近です。その中でも、荷台の箱がシルバーに輝く「冷蔵冷凍トラック」の活躍ぶりは、世界でも日本が群を抜いているでしょう。
「鮮魚トラック」なのに「精密機械輸送中」って!? 銀ピカトラ…の画像はこちら >>保冷トラックのイメージ(画像:写真AC)。
国内に大挙押し寄せるインバウンド(訪日外国人)のお目当ての1つに、「回転寿司」があります。「こんなに新鮮でおいしい魚介類を、しかもお手頃価格で食べられるニッポンは、クールだ!」と、多くの外国人が狂喜乱舞してくれています。
もちろん、四方を海に囲まれ新鮮な魚介類を入手しやすい、という特長もあるでしょう。でも、それ以上にスゴいのが、低温、しかも単にコチコチに凍らすのではなく「多種多様な温度帯ごとに維持・管理してクオリティを保つ」冷凍・冷蔵物流網です。
世界に誇る「コールド・チェーン」で、漁港から回転寿司屋まで、決められた低温を保ちながら迅速かつ丁寧に、しかも「ジャスト・イン・タイム」(時間通り)に運ぶ「冷蔵冷凍トラック」のノウハウは、日本が世界に誇るサービス・技術と言ってもいいでしょう。
しかしこの特徴的な箱型トラックは、何も鮮魚の専売特許ではありません。近年は非常に高価な「半導体製造機械」の運搬にも活躍の場が広がっています。
「鮮魚を運んでるのかな?」と思いきや、「精密機械運搬中」なる注意書きを車体後部に貼り付けた銀色の箱型トラックに出くわすこともあります。これには、大きな事情が秘められているのです。
その理由は主に2つあります。
第1に「防塵」です。半導体最大の敵は「チリ・ホコリ」で、最近の半導体工場は、まるで致死性の強いウイルスを扱う研究所並みのクリーン・ルームを備えています。熊本への進出を決めた世界最大の半導体メーカー・TSMCの防塵対策は、業界でも群を抜いています。
もちろん、ホコリ対策は工場だけに留まらず、搬入される部品・部材や、出荷される製品といった物流分野にも及びます。要するにサプライ・チェーン丸ごと「防塵化」です。
ところが、新たな課題がまた1つ出て来ました。「半導体を作り出す製造装置を工場に運び入れる時」のホコリ対策はどうするか、ということです。
そこで白羽の矢が立ったのが、「銀色の箱型トラック」です。多くの場合「箱内の内張」がステンレス製になっており、「錆びつかない」というのが利点。清潔さが保て、掃除も簡単なので、半導体製造装置の輸送には持ってこいなのです。
そして床面は特に念を入れ、表面の研磨度合いが「#400番」や、さらにその上の「#800」という、まぶしいほどの鏡面仕上げのステンレス板を採用。装置を積み込む前には、モップ掛けを徹底して行ってチリ・ホコリの類を完全除去して臨むようです。
もしこれが木製の床面だと、ささくれだった際や、荷物を搬入する時の「擦れ」などで、どうしても木くずや木粉が発生するので論外です。
鏡のようにピカピカとまではいかない鋼製(スチール)のトラックも、コストが安く有利なのですが、防錆のための塗装が剥がれれば、これ自体がホコリになるほか、年数がたてばどうしても錆が出てしまい、これも立派なホコリとなるためNGなのです。
こうした事情から、物流業者に対しクライアントから「鏡面仕上げのステンレス車で運んでほしい」と切望される例が多くなってきた、ということです。
もう1つの理由は「温度を一定に保つ」という点で、こちらのノウハウの蓄積も十分あります。
半導体工場内の気温は、一般的に20~25℃に保たれています。その一番の理由は温度変化で「結露」が発生するのを防ぐことです。
いくら工場できちんと管理していても、輸送中に温度管理ができず「半導体製造機械」が結露してしまうと、最悪の場合、その損害額は数十億円に達し、そればかりか工場での半導体生産計画にも大きな支障が出てしまいます。もちろん保険はかけてはあるはずで大半はカバーできそうですが、輸送業者の信頼失墜は計り知れません。
そこで鮮魚輸送の時と同じ発想で、箱内を20~25度で一定に保ちながら輸送できる銀色の箱型トラックの出番となったのです。
ちなみに、この分野でリードするのはトラックボディー大手の山田車体工業(ヤマダボデー)で、最近は半導体製造装置の大型化にも対応し、車体後部から載せる「後ろ載せ」だけでなく、車体側面から一気に積み降ろしが可能な、ウィング型トラックも開発しています。

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