「ケン坊は志保の太客だった」「ガラスのコップを妻に投げつけられていた」親族が語ったボンボン息子とネグレクト妻への不信感「父親から結婚を大反対されていた」〈浅草・資産家夫婦が4歳児毒殺で逮捕〉

東京都台東区の「浅草ホテル旅籠」を経営する細谷健一(43)と妻の志保(37)の両容疑者が昨年3月、次女の美輝ちゃん(当時4歳)を中毒死させたとして警視庁に殺人容疑で逮捕された事件で、都と区の児童支援当局が共同で美輝ちゃんの出生前から、夫婦に対して相談と援助にあたっていたことが2月14日、わかった。美輝ちゃんには3歳上の姉、5歳上の兄がおり、2016年に一家が他県から転入する際に「夫婦喧嘩による心理的虐待歴が3人の子どもたちにある」との情報提供を受け、頻繁に面接を行なうなどしていた。これに呼応するように、親戚も「ネグレクトが常態化していた」との証言するなど、事件の背景が浮き彫りになってきた。
連携して相談援助にあたっていたのは東京都児童相談センターと台東区子ども家庭支援センター。両者は転出元自治体からの報告を受け、2016年11月末に家庭訪問を始め、翌月には「養育困難」という相談を受理。その後も電話や家庭訪問を頻繁に繰り返してケアを重ねたが、2019年3月に浅草署からの通告で3人の子ども全員を一時保護した。その半年後までに3人の一時保護は解除され、保育所や託児施設を利用するなどしていたが、2022年9月に保育所から美輝ちゃんに引っかき傷があるなどの連絡があり、見守りと指導を強化。しかし、以降は保育園を転園し、転園先からも睡眠不足の兆候などが伝えられ、2023年3月13日、救急搬送先の病院で死亡が確認され、都が兄と姉の一時保護を再開したという。
逮捕された細谷健一容疑者(撮影/集英社オンライン)
健一容疑者の父、Iさんは千葉県東金市の出身で、若い時分に上京して東京・浅草の地場産業である皮革加工に携わって独立し、「ホソヤ産業」を創業した。そして2012年には隅田川にかかる駒形橋近くに「浅草ホテル旅籠」をオープンして旅館業にも乗り出した。だが2018年に亡くなり、同社は健一容疑者が継承した。Iさんの兄(87)は取材にこう語った。「Iにしてみれば、ケン坊(健一)は大切な跡取り息子だったのよ。それこそIは、田舎の東金から一人出ていって、浅草のなめし革の会社に入って独立、起業までしたわけだから、かなりの負けず嫌いだった。自分が作った会社を後世に残したいという思いも人一倍強かったんだろう。実際にIは『女の子はいらない』というほど男の子を欲していたし、そうして生まれたケン坊には、相当お金をかけて手塩にかけて育てていたからね。自分が敷いたレールに乗せようと、学校もすべて私立に進ませていたくらいだから、ケン坊が大学卒業後、すぐに会社を手伝わなかったときは腹を立てていたよ。その後、ケン坊はいろんな職を転々としたあとに、一応は家業を継ぐみたいな形にはなったみたいだけど、Iからすれば納得できない部分も大きかったんじゃないかな」
細谷一家が住んでいたビル(撮影/集英社オンライン)
やり手の父と「ケン坊」の確執が決定的になったのが、志保容疑者との結婚だったという。2人は“夜の店”で「客」と「従業員」として出会い、親しくなった。「たしか体を密着するような接客業の店かなんかで出会ったらしくてさ、Iも猛反対したんだけど、そのまま結婚しちゃってさ。それまでケン坊の教育には相当力を入れてきたから、もうちょっと別の女性と結婚してほしかったんだろうね。だから結婚してからも『あいつは期待はずれだったわ』と愚痴をこぼしていたね。ケン坊にはそれだけ期待していたからショックが大きかったんだろう」
逮捕された志保容疑者(撮影/集英社オンライン)
Iさんの兄の妻(86)も「ちょうど今さっきニュースを見たばかりで…」と驚きを隠せない様子で、次のように語った。「ええ、ケンちゃん(健一容疑者)ね…。私は亡くなったケンちゃんのお母さん、Yさんと仲良しで、月に2~3回ほど遊びに行ってたんですけど、小さいころのケンちゃんは礼儀正しい子という印象しかなくて…。それこそ家にお邪魔したときには、まだ3歳とか4歳なのに、『よくいらっしゃいました』とか『お気をつけてお帰りください』なんて大人顔負けの対応をしたものですよ。まるで大人が子どものフリをしてるみたいで少し怖くなったくらいでした。でも実際にIさんも『家業の跡取り息子』としてケンちゃんを相当かわいがってたみたいで、上のお姉ちゃん2人は公立の学校だったのに、ケンちゃんだけ私立の付属校の幼稚園、小中高に通ってました。ふだん着ている服も襟つきのシャツにベストみたいな感じでお姉ちゃんより明らかに仕立てがよくて、いかにも“お坊ちゃん”といった感じの子でしたね」
健一容疑者が経営していたホテル(撮影/集英社オンライン)
ところがボンボン息子は大学卒業後、少し反抗したようだ。「てっきりすぐに家業を継ぐのかと思ってたんだけど、ケンちゃんは大学を卒業してからお父さんとは仕事をせずに、電気屋さんの販売員を始めたのよ。そのあとも婦人靴のお店で働いたりと職を転々としたあと、やっとお父さんが営んでいた革製品(なめし革)の会社を手伝い始めたの。それからはしっかりと家業を継いだみたいで、ケンちゃんと最後に会ったときは、Iさんのお葬式だったんだけど、喪主も務めていましたね。参列者に頭を下げて気丈に振る舞っていましたし、そのとなりで奥さんの志保さんも生まれたばかりの赤ちゃんを抱いていて、すぐそばには幼稚園児くらいのお子さんもいましたね。私に対しても『どうも~』と笑顔で挨拶してくれましたし、まさかこの夫婦が、娘さんを手にかけるとは夢にも思いませんでした」
しかし、外面のよさとは裏腹に、志保容疑者は子育てには関心を示していなかったようだ。「これはYさんから聞いた話なんだけど、どうやらケンちゃんの奥さんってネグレクトしてたそうなの。ふだんは家でゴロゴロしてるだけで、洗濯も炊事も掃除もまったくやらない。だからケンちゃんが子どもを幼稚園に連れていくしかなくて、ご飯も食べさせないといけないしで大変だって聞いてました。それこそYさんが手伝いに行くことも多かったそうで、奥さんとの関係もよくなかったみたい。お店でいわゆる『太客』と『従業員』として意気投合した2人が結婚したいと報告したとき、Iさんは『ふざけんな!』って大激怒したけど、Yさんは『自分たちが一緒になりたいって思ったなら仕方ない』って感じで理解があったんですけどね。でも、あまりのネグレクトぶりに嫌気が差しちゃったんじゃないかしらね」
逮捕された健一容疑者(撮影/集英社オンライン)
志保容疑者は結婚当初は初々しく、親族からも好印象だったという。「今から12~13年くらい前かな。『隅田川花火大会』を見るために、ケンちゃんの実家のマンションの屋上に行ったときに奥さんと初めて会ったんですけど、いわゆる『水商売っぽさ』はあまり感じませんでした。なにを話したかは思い出せないけど、言葉づかいも丁寧だし、素朴で可愛い子でしたよ。でも、奥さんはかなり精神的に不安定なところがあるみたいで、いきなりわめきだしたり、ガラスのコップを投げつけたりするってYさんも愚痴をこぼしていた。だからふだんは、健ちゃんが全部の家事とかお子さんの面倒を見ていたそうで、奥さんが精神的に調子が悪い日は、まったく起き上がらないから、コンビニでお弁当を買って食べさせてるとも言ってたね」資産家のボンボン夫と育児放棄の妻… 毒殺された4歳の末娘は両親をどう思っていたのだろうか…。
細谷一家が住んでいた自宅マンションの部屋の前(住民提供)
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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