「この日のために生きる!」男は約8年前、Facebook上に、数日後に迫ったレゲエイベントの告知画像を添えて、こんな投稿をしていた。インスタグラムでも「レゲエ好き」をアピールしていた陽気な男はどこで道を誤ったのか-。
沖縄県警は2月13日、沖縄本島中部の宜野湾市内を走る国道上に知人女性(58)を置き去りにし、走行中のタクシーにひかせて殺害した疑いで、古謝勝也容疑者(30)を逮捕した。事件は沖縄本島を南北に縦断する国道58号線で、1月27日未明に起こった。「事件があったのは、移設問題が取り沙汰されている米軍普天間飛行場にほど近い宜野湾市大山の国道58号線付近です。国道58号線は、地元で『ゴッパチ』と呼ばれ、沖縄の日本復帰前の米軍統治下では『1号線』だった幹線道路です。道路は左右計6車線あり、時間帯によっては渋滞も起きるほど通行量が多い道路ですが、事件があった午前2時の車通りはまばらでした。古謝は歩道から女性を引きずってきて、その道路の真ん中の車線に女性を置き去りにしたのです。事故を装おうとしたのでしょうが、殺害の意思は明白だったとして県警は逮捕に踏み切りました」(地元メディア記者)
国道58号線
古謝容疑者は2月1日、すでに脅迫容疑で県警に逮捕されている。県警は身柄を取った上で、「本丸」である殺人容疑での再逮捕に踏み切ったものとみられる。「古謝と女性が一緒にいたことを知った女性の知人から『なぜ助けなかったのか』などと問い詰められ、古謝が逆ギレしたことが最初の逮捕につながったようです。この知人に対する脅迫的な言動があったとの疑いですが、県警は、現場の状況などから事件性を疑っており、当初から殺人容疑での立件も視野に入れていたはずです」(同)
古謝容疑者(本人SNSより)
地元紙の琉球新報は、15日付朝刊で「被害者葬儀で騒ぎ」との見出しで、古謝容疑者が逮捕前に亡くなった女性の葬儀会場で起こしたトラブルを報じている。同紙によると、古謝容疑者は「(女性の)事故処理に立ち会わなかったにもかかわらず葬儀に訪れた」といい、その会場で騒ぎを起こしていたのだという。古謝容疑者と女性の間にいったい何があったのか。
フジテレビは2人の関係性について、「『友達』という感じ」とし、「女性のほうも気さくで、仲良しな感じでした。特にケンカだったりとか、暴言とかそういうのはなかった」とする、2人が通っていた居酒屋の店員の証言を報じている。さらに同局の取材に古謝容疑者の親族は、「本当に真面目」「虫も殺さないくらいいい子」とも証言している。古謝容疑者が公開していたSNSでも、趣味であるレゲエやヒップホップについて触れたり、建設作業員だった自身の日常を綴る何気ない投稿ばかりが目立ち、凶悪な犯行に結びつくような片鱗すらのぞかせていない。また、家族や職場の仲間と笑いあったり、空き巣に入られた友人を気遣う投稿もあった。
レゲエやヒップホップが好きだった古謝容疑者(撮影/集英社オンライン)
ただ、ある捜査関係者は事件の内幕をこう明かす。「被害に遭った女性は、普天間飛行場付近にある飲み屋で働いており、古謝もこの店に出入りしていた。2人の間には金銭の貸し借りもあったが、共依存関係というか、特別な結びつきがあったようだ。これまでにも複数回、『叩いた叩かれた』だのといったDV(ドメスティックバイオレンス)騒ぎを起こすこともあった。関係のこじれが事件につながった可能性はある」報道によると、事件発生直前、2人は宜野湾市内の飲食店で飲酒し、タクシーに同乗して帰路をともにしていたという。その際、女性は酩酊するほどに酒に酔っていたとされるが、古謝容疑者にも酒を巡る悪癖があったようだ。「古謝は一時期、アルコール依存症を患っており、酒絡みのトラブルを起こすこともしばしばあった。彼はSNSなどで『宜野湾出身』とアピールしているが、実際は海を隔てた離島の出身だ。親類を頼って学校を出てから宜野湾にやってきて住み着いた。その後は建設会社で現場の作業員として生計を立てていた古謝だったが、コロナの影響で仕事を失い、ほとんど無職のような状態だった。事件当時もかなりの量の飲酒があったようだから、人生に行き詰まって自暴自棄になり、酒の勢いにまかせて衝動的に犯行に及んでしまったのかもしれない」(前出の捜査関係者)
沖縄県警本部
深夜の路上で最期を迎えた女性は、なぜ道路に放置されたのか…。酒とレゲエを愛した青年だけが、その真相を語ることができる。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班