(初公判・名古屋クローゼット死体遺棄)店の金を盗んで2700万円を貢いだホス狂元キャバ嬢は起訴内容を認めるも、共犯の“彼氏”は「一切、関わってない」と無罪を主張

名古屋市中区のブランド品買取店「おたからや名古屋栄店」の店長、阿部光一さん(当時42歳)が昨年11月に同区の自宅で変死体で見つかった事件で、死体遺棄罪に問われた同店元従業員、内田明日香被告(30)の初公判が2月8日、名古屋地裁であり、内田被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。この事件では内田被告と、彼女が常連として通い詰めていたホストクラブ従業員、小山直己被告(23)が共犯として同罪に問われ、6日の初公判で「一切関わっていません」と無罪を主張していた。
起訴状によると内田被告は昨年10月、元ホストの小山被告と共謀し名古屋市中区にある阿部光一さんのマンションの自室で、阿部さんの遺体を寝室のクローゼットに遺棄した罪に問われている。元キャバクラ嬢だった内田被告がホストクラブに入り浸り、お気に入りの小山被告をナンバーワンホストにしようと多額の現金を消費したことが明らかになっており、事件の構図を読み解くにはその「原資」の存在が鍵になる。集英社オンラインでは事件発生から両被告の逮捕、起訴に至るまでを丹念な取材で追いかけ、「原資」が変死を遂げた阿部さんの資産であり、運転資金であったことを炙り出してきた。これまでの報道でその経緯を振り返ってみよう。
キャバクラ嬢だった内田被告(本人SNS)
阿部さんは昨年9月末に姉がその元気な姿を確認していたが、その後、阿部さんのLINEアカウントからメッセージが届くものの電話では声を確認できず、不審に思った姉が11月20日に行方不明届を提出し、翌21日に愛知県警中署員が阿部さんの遺体を発見した。遺体は全裸で毛布に包まれ、頭にはビニール袋、手首はロープで縛られていた。寝室の出入り口のドアは外側から粘着テープで目張りされ、玄関ドアは施錠してあった。県警は元従業員の内田被告が2000万円もの売上金を横領していた事実などを掴み、同24日に死体遺棄容疑で逮捕。司法解剖の結果、阿部さんは死後1ヵ月半から2ヵ月が経過して、遺体は腐敗が進行しており、死因は特定できなかった。県警は当初から遺体の発見を遅らせるために内田容疑者がLINEを使って阿部さんの生存を偽装した可能性もあるとみて追及していた。
亡くなった阿部光一さん(知人提供)
内田被告の刹那的な手口は、阿部さんと長年の友人で「おたからや名古屋栄店」の常連客でもあったA氏の証言で次々に明らかになっていった。A氏は阿部さんの生前、1500万円分のインゴット(金塊)や貴金属を持ち込み、代金は後日支払われる予定だったが、阿部さんと連絡がとれなくなったといい、当時、こう証言していた。「店に電話をしたところ、内田容疑者の携帯電話に転送されて、彼女が出たんです。私はあの店に他に従業員がいたのも知らなかったので『そもそも電話に出てるあなたは誰ですか』という流れで彼女と連絡を取ったり、結果的には逮捕される2日前まで連絡を取り合っていたことになりますね」
内田被告(本人SNSより)
A氏が阿部さんと最後に連絡を取り合ったのは「行方不明」になる直前のことだったという。「最後に話したのは9月29日のお昼ごろ、阿部さんから電話で『今日の夜に(インゴットの)代金を持っていきます』と連絡がありました。約束を破るような人ではないのですが、その日の夕方に携帯に電話しても繋がらず、次の日も同様で、店にかけても出ない。携帯からは機内モードの『ただいま電話をお繋ぎできません』という音声が流れました。その状態が10月4日ぐらいまで続き、その数日後に店の固定電話にかけてみたら転送になり、内田容疑者が電話に出たんです。彼女は『実は阿部さんはコロナとインフルエンザの合併症で国立病院に入院しています。私は知り合いで電話だけ対応させてもらっています』と説明しました。実をいうと9月29日の少し前に連絡を取ったとき、阿部さん本人が『ちょっと風邪っぽいわ』って言ってたんですよ。彼は真面目でこれまで不義理をしたことは一度もなかったので、このときは阿部さんの体調を心配していたんです」
阿部さんが住んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)
このころまでは内田被告の演技も“順調”だったが、阿部さんの“代理”としてインゴットの代金を持参するうちに、付け焼き刃はすぐにボロボロと剥がれ始めた。A氏はこう続けた。「僕が持ち込んだ1500万円分のインゴットなどの商品の代金が遅れるなら、商品を引き取りたいって内田に言ったんですよ。それで徐々に話を詰めていったら『お客さんのものだとは知らずに私が全部売っちゃいました』って認めたんです。そうなると”なんで阿部さんの単なる知人が勝手に売ったんだ”ってなるじゃないですか。その辺からは完全におかしいと確信しました。10月の中旬ぐらいです。その後の内田は『明日返します』、当日になったら『もう1日、時間をください』の繰り返し。そのうちに逮捕されて、結局お金は返ってきてないです」
1500万円分もの商品を売り飛ばしてしまった内田被告は、適当な言い訳で切り抜けようとして、どんどん追い込まれていったという。「すぐに返せないからと『2000万円くらいで返します』と言い出したり、その期限が来ると『3000万円にして返します』とかね。だから無理なら無理で時間が無駄だから、別の返済方法を考えてって話もしたんですよ。『嘘ついてるのもわかってるから。つまらない嘘はやめて』って話したら『すみません、今まで嘘ついてました。おじいちゃんに生前贈与されたお金でで返します』とまで言ってきたんです。でも、これも多分、嘘だと思いました」内田被告はA氏に、阿部さんのマンション自室に出入りしていたことも白状した。以前から阿部氏に「自宅に出入りしていた女に、保管していた買取品の貴金属や商品券を売りさばかれた」と愚痴を聞かされていたA氏は「こいつが盗みをしていた女だ」と直感。同時に「音信不通になっては困る」とあの手この手で内田被告と連絡を取り続けた。すると逮捕される数日前、内田被告がこんな相談を持ちかけてきたという。「男(ホスト)が浮気してたんですけど、どう思いますか?」
内田容疑者が通い詰めたホストクラブでナンバー1になった小山被告(店舗HPより)
後にこのホストは、県警が共犯で逮捕した小山被告のことだと判明するが、内田被告からの「相談」としてA氏は当時、こう証言していた。「浮気をされたのがいつとは言ってなかったけど、『彼氏がマリオットホテルを取ってくれて私は夕方からチェックインして待ってたんです、だけど全然来なくて連絡しても友達とまだ用事って返ってくるんです、結局来たのが夜の12時くらいなんですよ。それで何をしてたのか問いただしたらキャバ嬢を家に連れてきてゲームをしてて、そのうち野球拳が始まって体の関係になっちゃったって。でも全然エッチはしたくなかったって男は言ってるんですけど、どう思いますか?』みたいな内容でした。完璧に壊れてますよ。その相談に関しては『お前もそいつも終わっとる』と返しました」A氏が指摘したように、両被告ともすでに「終わっていた」のだろう。小山被告が2023年10月度にホストとして売り上げた2700万円超という常軌を逸した金額は、ほぼ全額、内田被告が突っ込んだものだった。名古屋地検は小山被告の初公判の冒頭陳述で、阿部さんが同9月29日に自宅でロープなどで拘束された状態で死亡していたこと、同日が、小山被告の勤務するホストクラブの締め日にあたり、かつ内田被告がこの日に来店予約を事前に入れていたことを明らかにした。さらに内田被告は同日夕方に名古屋市内でロープを購入した後に阿部さんと合流して阿部さん宅に入室、夜にひとりで外出してホストクラブで小山被告を指名、多額の現金を支払ったことも明らかにした。初公判直前、A氏にあらためて取材を申し込むと、死体遺棄容疑のみでの逮捕にこう肩を落とした「問われる罪に納得いかない。でも今は裁判を見届けようと思います」

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