囲碁の中学生棋士・仲邑菫女流棋聖、韓国移籍前最後のタイトル戦防衛ならず涙「もっと強くなりたい」

昨年9月に韓国移籍を発表した囲碁の中学生棋士・仲邑菫女流棋聖(14)の日本で最後となるタイトル防衛戦、第27期女流棋聖戦三番勝負第3局が5日、東京・千代田区「日本棋院」で打たれ、挑戦者の高校2年生・上野梨紗二段(17)が233手までで黒番中押し勝ちし、初タイトルを手にした。仲邑は日本最後のタイトル戦で防衛を果たせず、19日の対局を最後に韓国へ渡る。
涙が止まらなかった。終盤、鼻をすすり、頭を何度も振りながら、打ち続けた。「実力不足だった」。幼い頃は負けるとよく涙を見せていた仲邑。最近は涙を見せる姿も減っていたが、日本最後のタイトル戦での敗戦の悔しさは、大きかった。
上野が優勢を築くと、中盤以降、一方的な戦いになった。仲邑は「序盤から難しくて、途中は少し良くなったかなと思ったところもあったのですが、中盤まずい手を打ってしまって…全体的に難しかった」と振り返った。それでも、会見では「この対局で自分の弱点も見つかったので、もちろん結果はあるのですが、強くなれるチャンスかなと思います」と未来を見据えた。
仲邑は23年9月に韓国移籍の意向を発表。同10月26日の韓国棋院理事会で、客員棋士としての受け入れが承認され、移籍が決定した。日本棋院所属の日本人棋士の移籍は初めてのこと。仲邑がこの日の対局で勝利し、タイトル防衛を果たせば、今月22日の就位式後、3月1日に異例のタイトル返上を行い、韓国へ渡る予定だったが、防衛はかなわず。無冠で韓国へ渡ることになった。
プロ入り同期の梨紗にはこの番勝負第1局までで負けなしの7連勝だったが、ここで2連敗を喫し、タイトルを奪われた。次に2人が戦うとしたら、舞台は世界戦になる。梨紗は日本代表を、仲邑は韓国代表を目指す。「まずは世界戦で代表になれるような棋士になりたい。お互いもっと強くなって、次は絶対勝てるようにしたいです」とリベンジを誓った。
仲邑の日本での対局は残り3局。19日の第35期女流名人戦リーグ、牛栄子扇興杯戦まで戦いを続ける。「今回の経験を生かして、韓国ではもっともっと努力して、強くなりたいです。応援してくださってる方に恩返しできるように頑張りたい」。14歳の未来は明るい。(瀬戸 花音)
◆仲邑 菫(なかむら・すみれ)2009年3月2日、東京生まれ。大阪育ち。14歳。父は囲碁の仲邑信也九段、母は元囲碁インストラクター。19年4月、日本棋院が設けた「英才特別採用」の第1号棋士として史上最年少でプロ入り。21年3月、史上最年少の12歳0か月で二段昇段。22年10月、三段昇段。23年2月、9年ぶりに記録を塗り替える史上最年少の13歳11か月で女流タイトル「女流棋聖」を初獲得。

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