6代目山口組の司忍組長、高山清司若頭の出身母体で中核組織、弘道会(名古屋市)傘下の組幹部が、スーパーで購入した肉を「鹿児島県産黒豚」や「黒毛和牛」と偽って、経営するしゃぶしゃぶ店で客に提供していた。
不正競争防止法違反の疑いで1月29日、愛知県警捜査4課に逮捕されたのは、山口組系組幹部の鈴木浩且(46)、同組員の高山和也(42)、店の従業員の有明輝幸(36)ら3容疑者。
3人は昨年9月、愛知県豊田市にオープンさせた「美食家しゃぶしゃぶとん吉」で、実際には取り扱っていないのに店のHPや店舗紹介サイト、店内のメニュー表に「こだわりの鹿児島県産黒豚」「黒毛和牛」「鹿児島から直接仕入れをしているので、新鮮で上質な豚肉を召し上がっていただけます」と虚偽表示した疑い。
翌10月、県警に「メニューと違うものを提供している」という情報が寄せられたため、入手した肉を民間機関に依頼して調べたところ、「交雑種」と判明。店内からスーパーで購入した肉をパックする白のトレーが見つかった。店では組幹部の鈴木容疑者と店の従業員有明容疑者が仕入れと厨房を受け持ち、組員の高山容疑者が接客を担当。幹部や組員も頻繁に出入りし、売り上げは上納金の一部になっていたとみられる。
おすすめメニュー「鹿児島県産黒豚しゃぶしゃぶロースバラ1人前」は4500円。店内は全席禁煙で換気や手洗い、テーブルごとの仕切りなど、感染症対策も行っていた。
店のHPには「弘道会直営店」らしからぬ、こんなメッセージが添えられていた。
<デートやプライベートシーンにもご利用いただける個室がございます。周りの目を気にせず、美味しいお食事・お酒をご堪能下さい。美食家しゃぶしゃぶとん吉で過ごしたお時間が、お客様の思い出の1ページになりますように>
■あまりにもセコすぎる手口
鈴木容疑者はどんな人物なのか。
「所属している組はもともと博徒組織で、自身も豊田市内のカジノクラブでバカラ賭博を開き、2億円近く荒稼ぎして、逮捕されたことがある。その後はヤミ金融業を営んだり、ルイ・ヴィトンやエルメスのニセの携帯電話ケースを販売目的で所持し、逮捕されたこともあった。最近は無許可で職業あっせんをしたり、2年前には、国から持続化給付金100万円をだまし取っていた」(捜査事情通)
弘道会傘下の組幹部が「カタギ」のふりをして店の厨房で働いていたとは驚きだが、昨年4月には、神戸市長田区でラーメン店の店主が拳銃で射殺される事件が発生。殺害されたのが弘道会直参「湊興業」の余嶋学組長(当時57)と分かり、世間に衝撃を与えた。
やくざも「シノギ」に困る時代になったのだろうが、「産地偽装」までしてカタギから小銭をだまし取るとは、あまりにもセコイ。