NYタイムズも注目した奇跡の氷塊ジュエリーアイス…豊頃町・あの街行く北海道

寒さが一段と増す豊頃町に光り輝くシーズンが訪れる。町を縦断する十勝川の河口に近い大津海岸に打ち上げられる氷塊「ジュエリーアイス」がきらびやかな光景を生み出す。
ジュエリーアイスは、厳寒期に凍った十勝川の氷が太平洋に流れ出し、潮の満ち引きや荒波によって丸みを帯びた形状となる。海の流氷とは異なり、塩分を含まない川氷は透明度が高く、太陽の光に照らされると、宝石のような輝きを放つ。朝日や夕日と時間帯によって色合いも変化。大河と大海がぶつかり合う地形が奇跡の宝をもたらす。
太古の昔から続いてきた自然現象は、2012年に豊頃町出身で町の観光大使を務める浦島久さんが命名した。以前から写真家の間では知られた存在で、国内メディアで扱われてきたが、2017年にニューヨークタイムズ紙に不思議な自然現象として「世界で唯一の場所」と取り上げられ、海外の注目も集めた。
最近は冷え込みが弱かったため、例年よりジュエリーアイスは目立っていないというが、「厳しい寒さはこれから」(豊頃町観光協会)と“見頃”は間近。3月上旬ごろまで楽しめる。
〇…町のカントリーサインに使われている「はるにれの木」は十勝川の河川敷にそびえ立つ。2本の木が成長過程で合体した大木は高さ約18メートル、幅約23メートルで推定樹齢150年。2015年夏に相次いだ台風の影響で十勝川が増水し、半分の高さまで水に浸ったが、耐えしのいだ。幾度となく、冬の過酷な環境も乗り越えてきたシンボルは、まさに町の誇りだ。
〇…町内を通るJR根室線の「十弗(とおふつ)駅」は異名を持つ。「弗」が「$」の表記に似ていることから「10ドル駅」と呼ばれ、鉄道ファンから愛されている。ホームには2000年に立てられた「十弗は10$駅」の看板も。1911年開設の駅は町とともに長い歴史を歩んできた。
◆豊頃町 十勝地方の東南端に位置する海沿いの町で、人口は2937人(2023年12月末現在)。十勝地方発祥の地とされ、江戸時代後期から明治初期にかけて入植者が多く訪れ、1880年に開町。1897年には農政家の二宮尊徳の孫・尊親が移住し、町の発展に大きく寄与した。町名の由来は、アイヌ語の「トエコロ」で「大きなフキが生えていた所」という説がある。

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