輪島朝市の復興は一通のLINEから 「おばちゃん食堂作る」に「やるけ?」 3月中にも「出張朝市」開催

能登半島地震発生から、1日で1か月を迎える。「日本三大朝市」の一つとして1200年の歴史を誇る石川県の輪島朝市は、大規模火災で300棟が全焼したが、すでに復活に向けて第一歩を踏み出している。朝市関係者の働きかけで、3月にも金沢市の金石(かないわ)漁港で「出張朝市」開催が実現する見通しだ。震災の復興の象徴ともなり得る朝市の復活劇。1か月で具体化できた裏には、朝市で働くパワフルな「おばちゃん」たちの思いがあった。(樋口 智城)
「おばちゃん食堂、作って…というようなことも考えています」
地震発生の3日後。輪島朝市で働く商店主の女性ら20人ほどが入っているグループLINEに、そんな呼びかけが投稿された。
送り主は、朝市で食堂「のと×能登」を経営する橋本三奈子さん(61)。自身の食堂兼自宅も全焼と大変な状況だったが、朝市の関係者みんなが前向きになれる何かが必要と思って文字を打った。当時のことを「これから復興の工事に来る人たちがたくさん来る。そんな人向けの食堂を仮小屋建てて作るのはどうかなって、いろいろな方と相談していたところだったんですよ」と振り返る。
この提案を目にした女性たちは奮い立った。「やるけ?」「イイがじゃないけ?」。一気にやる気がみなぎった。LINEグループに入っていた商店主の一人、小坂美恵子さん(65)は、「心が折れそうだった時期。あの呼びかけで、私の心に光が灯(とも)った」と話す。後に無事が判明するが、当時は夫の生死すら分からなかった。
「おばちゃん食堂」案は、復興支援の人がまだそれほど来ていなかったため、延期に。だが朝市の人たちの思いは消えず。何かやりたい、働きたいという意見が組合内でも続出した。橋本さんが組合の顧問弁護士に相談し、弁護士は行政に相談。すると、地震発生のわずか3週間後には金沢市中心地から車で10分ほどの金石漁港を間借りし、朝市のミニ版ともいえる「出張輪島朝市 金石プロジェクト」が実現できる運びとなった。
旗振り役を担った下沢佳充県議(63)は「30店舗ほどの規模で、5月の連休中の始動を目指したい。3月くらいにはプレオープンも考えています」と意気込む。間借りという性質上、市が立つのは週1回が限度。設備も十分ではなく、輪島にこだわる人の反対意見もある。
それでも小坂さんは「働く場所ができただけで幸せ。私たち、働かんと死んじゃうんよ」。一つのLINEから始まった、朝市の復活劇。絶望感をすぐさま希望へと変えた、朝市で働く女性たちの前向きマインドが実現に導いたものだった。

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