「勝手にブルーシートを置いて15万円を請求」。復興が進む七尾市で横行する詐欺まがいの行為。河野デジタル相のSuica配布には「ピントがズレている」と被災者〈能登地震から1ヶ月〉

2024年の元日に石川県能登地方を襲った激震からまもなく1ヶ月。甚大な被害を受けた七尾市でも、ようやく学校に通学できるようになるなど着々と復興は進んでいる。しかし、空き巣などの犯罪行為も横行しているとの声も。
震災の影響で羽咋(はくい)駅から七尾駅間の運転を取りやめていたJR七尾線も、1月22日の始発から全線で運転を再開し、活気を取り戻しつつある。取材班が26日午後7時ごろに七尾駅を訪れると、改札から制服姿の男女がポツポツと出てきた。
JR七尾線も再開し、駅舎に明かりが灯る七尾駅
「ようやく今週から学校に通えるようになってうれしいです」と声を弾ませたのは、津幡町の国立石川工業高等専門学校(高専)に通う3年生の男子学生(18)だ。学校の最寄りの津幡駅へは七尾駅から電車で1時間20分ほどかかるという。高専とは実践的・創造的技術者養成を目的に設立された5年制の高等教育機関で、全国に57校(国立51、公立3、私立3)があり、約6万人が学んでいる。入学資格は「中学卒業者」で高校と同様だが、文科省の所管は大学と同じ「高等教育局」のため、1~5年生までの呼称は「学生」である。この学生によれば、冬休みが7日で終わり、8日から通常授業再開のはずだったが、七尾線の不通などの影響もあり、冬休みは一週間延び、以降はオンライン授業で対応していたという。
七尾駅から出てくる学生たち
「これまでは自宅でオンライン授業を受けていたので、友達とも会えずに孤独でした。今週からクラスメイトにも会えるようになったので、以前のような暮らしには近づいてきましたね。とはいえ、七尾市では今でも断水が続いているので、風呂に入るにも家族で車に乗って金沢や富山県氷見市まで行ってます。水不足も深刻で、1日に1回は近所のうどん屋さんに地下水を汲みに行ってます。一日も早くふだん通りに戻ってほしいですね」
日常を取り戻しつつある七尾市では逆に空き巣被害や、被災家屋を法外な料金で補修する営業などが増えているようだ。避難所に暮らしているという50代の男性が表情を曇らせた。「不審者をよく見かけますよ。服装もスーツとかではなく普通の格好で、『困ったことはないですか』と聞き回っているようですが、どうにもうさんくさくて。それと最近増えているのは、家屋の屋根の補修にブルーシートを貼るという“営業”ですね。お願いをすると請求額が15万円にもなったり、ひどいケースだと家に勝手にブルーシートを置いていって後で15万円請求してきた業者もいたみたいで、警察も注意を促しています。
七尾市田鶴浜体育館にも防犯カメラが設置された
相変わらず空き巣の被害も多いようで、防犯カメラ約1000台を避難所や街頭に設置するという報道は見ました。そんなことはしないで、復興のために他のことに金を使えみたいなことを言う人もいるようですが、私は避難所に防犯カメラがあって犯罪の抑止につながるならいいと思います。本当に不審な男の2人組とか入ってきたりするんですよ。今のところ何か盗まれたり、何かされたというのはまだ聞きませんが、やはり怖いですからね」また、河野太郎デジタル大臣がSuicaを使って被災者の所在や行動把握を行うと表明したが、これについては七尾市の避難所でも呆れる声が多かった。
七尾市の避難所。一部が居酒屋スペースとなっており、被災者の憩いの場として利用されていた
「正直、それどころではないですね。ちょっと前にようやく洗濯機が届いてようやく洗濯ができるようになった状態ですよ。被災者の中には財布だって持っていない人もいるのに、いったい何を言っているんですかね」(40代男性)「なんかマイナンバーカードを読み取る機械を設置しようとしてたんですよね。率直にいえば今そんなこと必要かしらねってのが感想でしたね。Suicaの配布もそうですけど、みんなこうして家でお風呂にさえ入れない状況なのに、あまりにピントがズレているとしか思えませんね。そんなことより仮設住宅を一棟でも建てるべきだと思います。今家がない人は住むところを一番心配しているわけですから」(40代女性)
極寒の被災地では、温かい風呂に入りたいという切実な願いが誰しもある。七尾市中心部から北に約30キロ離れた公立穴水総合病院には13日、自衛隊が簡易入浴施設を設置した。取材班が訪れたこの日は、インドネシアとベトナムから技能実習生として穴水市に来ている介護職の女性が入浴サービスを利用していた。アユさん(25)、フォンさん(25)、エルナさん(28)の3人は、異国の地での被災経験をどう受け止めているのだろう。
穴水病院でボランティアから物資を受け取る被災者
「私たちは技能実習生で日本に来ていて来年の3月までいます。地震があったときはそれぞれ仕事をしていたりしていました。地震のあと、2人は避難所にいましたが、今はフォンのアパートが無事だったので、そこで3人で暮らしています。地震はとても怖かった。日本はとてもいいところで、技能実習が終わってもまた来たいと思っていますが、石川県は怖いので次は他のところに行くかもしれません」
入浴ができ、笑顔の外国人技能実習生
何も石川県ばかりが地震に見舞われるわけではないのだが、トラウマになりそうなほどの恐怖体験だったのだろう。被災者全員の心細い日々がいち早く解消されるよう、願うばかりだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班撮影/Soichiro Koriyama

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