なぜ公安は桐島聡を49年間、見つけられなかったのか? 盗聴、監視、尾行…ダークヒーロー公安警察の”実態“

「自分は桐島聡だ」――。1月25日、入院中だった鎌倉市内の病院で自ら正体を告白し、“警視庁公安部”から事情聴取を受けていた“内田洋”と名乗る男が胃がんのため病院で死亡した。桐島は1970年代に旧財閥系企業や大手ゼネコンなどを狙った連続企業爆破事件を起こした「東アジア反日武装戦線」のメンバーであり、1975年に起きた韓国産業研究所爆破事件にも関与していたとされている。では、この桐島と名乗る男から任意で聴取を行っていた“公安警察”とはいったいどのような組織なのだろうか。警察庁関係者や公安関係者の話をもとに、その知られざる実態に迫る。
公安は大きく分けて、国外の公安情報を集める外事警察と国内の公安情報を集める公安警察に分けられ、外事警察は朝鮮半島、中国、ロシア、国際テロの4部門に分かれ、中国には他のアジア諸国、ロシアには他のヨーロッパ諸国も含まれている。公安警察は、共産党、右翼、極左等に分類されている。警察庁関係者が公安警察について説明する。「公安は警察庁警備局をトップに各都道府県警に警備部公安課を配置しています。警備部は警衛警護、いわゆる機動隊に代表される“実施系”と“情報系”に分かれています。一般的にイメージされる公安は後者で、日常的に各都道府県の公安同士が連絡を取り合い連携して捜査を行います。昨今ではそのような公安の捜査手法を踏襲して、刑事警察も『匿名・流動型犯罪グループ』(トクリュウ)などの捜査を都道府県警の垣根を越えて行うようになってきています」
指名手配をされていた桐島聡
テレビドラマや映画などで描かれる公安は他人に素性を隠し、国際テロ組織などと対峙するダークヒーロー的な印象だが、そのイメージ通り、希望したからといって誰しもが「公安に入れるわけではない」(公安関係者)と言う。「一般採用の場合、まずは配属先の地域課で実績を上げなければなりません。そして(配属先の)警備部門で評価されて推薦を受け、試験に合格できないと公安警察には任命されません。一度公安警察になると内部の職員のデーターベースにも名前が記載されないほど情報管理が徹底されます。任務の秘匿性も高く、もし身元がバレたら自身や家族に危害が及ぶ可能性もあるため、ほとんどの公安警察が配偶者やこどもにも自分の仕事について話すことはありません」
さらに各都道府県警と違い、公安警察は国の予算で動いているといった予算面からくる相違点もある。そうした警察内部での予算や保秘の観点からか、各都道府県警の所轄に配置された公安課は「最上階や外部からの出入りが少ない場所に配置されることが多い」(同前)という。
自称”桐島聡”の近影。近所のバーでは「うっちゃん」や「うーやん」と呼ばれ、何軒もハシゴしていたという
今回、連続企業爆破事件に携わったとされる桐島と見られる男をはじめ、時には国際テロ組織などとも対峙する公安警察――。監視対象団体や監視対象者の尾行などを日常的に行い、ときには監視対象団体の内部に協力者を作ることもあるという。「2010年に国際テロの捜査対象者や捜査協力者600人以上の住所、電話番号などの個人情報がインターネット上に流出した『国際テロ捜査情報流出事件』で露呈したように、公安は徹底して捜査対象者の身分を調べた上で協力者を作り、有益な情報には協力費も支払います」(同前)そして監視対象者を追い詰めるために、ときにはこんな手法を使うこともあるという。「例えばある監視対象者が“いついつどこの店に現れる”といった確実な情報を入手したとします。その場合、対象者よりも先に捜査員が入店して他の席を埋め、撮影したり録音機を仕掛けることもあります」(同前)ときにはドラマさながらの捜査手法で対象者に迫る公安警察だが、なぜ“内田洋”を見つけられなかったのか?
“ウチダヒロシ”が住んでいた木造アパート(撮影/集英社オンライン)
「あくまでも推測ですが、桐島と見られる男が49年間にも渡って逃亡生活を続けてこれたのは、指紋やDNAのデータが警察にも残っておらず、時を経て容貌も変化していたことが大きい。さらに、男は事件以前に交流があった周囲との連絡を完全に絶ち、痕跡を残さなかった。例えば渋谷暴動事件の『中核派メンバー』として46年間指名手配をされ、2017年逮捕された大坂正明被告は、全国にあった『アジト』『非公然アジト』を転々としていたため、痕跡を追うことができた。大坂被告も組織と連絡を絶っていたのであれば偶発的な事故でも起こさない限り本人に辿り着くのは困難だったと思います」(社会部記者)桐島と見られる男の49年ぶりの自白でクローズアップされた公安。その詳細は今後も明らかになることはないのかもしれない……。取材・文/大島佑介 集英社オンラインニュース班

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