〈勢力図が激変?〉安倍派・岸田派・二階派・森山派解散で混迷する“ポスト岸田”レース。茂木、石破、河野が決定打に欠けるなか、岸田首相も再選のためになりふりかまわず…

最大派閥の安倍派や、岸田文雄首相が率いていた岸田派、非主流派の筆頭・二階派、森山裕総務会長率いる森山派の4派が解散することになった自民党。秋の総裁選に向けたポスト岸田レースの行方も混とんとしてきた。岸田派以外の3派の解散で、茂木敏充幹事長、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相ら「ポスト岸田」候補は誰が笑い、誰が泣いたのか。そして、「一か八か」の賭けに出た岸田首相の再選は……?
「私自身の政治姿勢を示すという思いから、所属してきた平成研究会(茂木派)を退会することにした」1月25日、小渕優子選対本部長が茂木派からの退会を表明したことに、永田町では驚きが広がった。「派閥に対する国民の目は厳しくなっている。かつての平成研究会(現・茂木派)を率いていた小渕恵三元首相の娘までもが、派閥を離脱するなんて、どこまで『脱派閥』が進むのか」(茂木派関係者)
岸田派解散の知らせにお怒りの麻生氏(自民党ホームページより)
「脱派閥」の動きは1月18日、岸田首相による岸田派の解散検討表明から始まり、安倍派、二階派、森山派も派閥解散を決めるに至った。一方、現在のところ、麻生派、茂木派は存続の方針だ。これにより大きな影響を与えるのが、今年秋に控える自民党総裁選に向けた「ポスト岸田」レースの勢力図だ。「これまでは、派閥の力関係や足し算で、ポスト岸田レースの行方を占っていましたが、自民党の国会議員約370人のうち、最大派閥の安倍派に加え、第4派閥の岸田派、第5派閥の二階派、第6派閥の森山派にいた計約190人が一気に無派閥になります。勢力図の激変により、『ポスト岸田』候補たちも戦略の練り直しを迫られることになります」(全国紙政治部記者)
今回の4派解散で、“割を食った”形となったのが、かねて首相への意欲を隠していなかった茂木幹事長だ。「茂木氏は昔からのパワハラ気質が変わらず、派閥外だけでなく、派閥内からの人望も薄い。実際に一連の問題を機に、小渕優子選対委員長だけでなく、亡くなった青木幹雄・元官房長官の長男、一彦氏らも茂木派を退会する意向で、『脱・茂木派』の流れが進んでいます。茂木氏としては、同じく派閥を存続させたい麻生副総裁とタッグを組む可能性もありますが、現状、茂木派と麻生派を足しても議員数は110人ほど。そのうえ麻生派からも、岩屋毅・元防衛相が退会を表明するなど、2派閥から議員が抜け出す動きは止まりません。茂木氏は派閥外にシンパがほとんどいないうえ、国民の派閥政治に対する目が厳しくなっているなか、9月の総裁選を派閥単位の支持の足し算で勝ち抜くことは難しいのでは」(茂木派関係者)
派閥内外から人望の薄い茂木幹事長(本人Facebookより)
一方、無派閥のポスト岸田候補として存在感を示すのに躍起なのが、「次の首相」ランキング1位常連の石破元幹事長だ。石破氏は1月22日、東京MXテレビで総裁選のルールについて「もう少し党員票の比重が上がってもいいのではないかという話はあってしかるべきだ」と発言。党内基盤が弱いが、党員からの人気は高い自身に有利なルールを提案したことに、自民党議員からは「石破氏が自分から言うべき話ではない。相変わらず空気を読めない。だから人望がない」との失笑が漏れる。そんな石破氏が、総裁選で味方につけられる可能性があるのが菅義偉前首相ら「非主流派」だ。菅氏は23日にも記者団に「党として方向性は一体であったほうが、国民から理解される」と語り、全派閥の解散に前向きだ。
「非主流派」を味方につけられれば石破氏に首相の可能性も…?(本人Facebookより)
「自らは求心力を保てず、2021年に石破派を『グループ』に変えざるをえなかった石破氏ですが、ここに来てそのことが幸いし、『脱派閥』で菅氏らとまとまり、首相の座を狙える可能性も出てきた。ただ、政治刷新本部の中間とりまとめの通り、派閥が『カネ・人事』を切り離した政策集団になるなら、石破グループとほとんど同じ存在になります。そのうえ、無派閥が大半となった自民党内で『脱派閥』がアピールポイントになるかというと、微妙でしょう」(全国紙政治部記者)
「麻生派に所属する河野氏は前回2021年の総裁選に出馬しましたが、麻生氏の積極的な支持を得られたわけでもなく、麻生派は河野氏支持で一本化できたわけではありませんでした。そのため、河野氏も麻生派幹部に気をつかいながらの出馬となりましたが、今後、派閥に厳しい目が向けられるなかでは、堂々と派閥横断での体制で総裁選を戦える可能性が出てきます。ただ、前回は地方票の比重が低い第2回投票で、岸田氏に大差をつけられ敗北。石破氏らの応援を受けたことで離れた議員票もありました。幅広い議員の支持を広げられるかは、相変わらずの課題です」(自民党関係者)どのポスト岸田候補も、勝利の道筋への決め手を欠くなか、岸田首相本人は「ポスト岸田は岸田」を実現するため、あらゆる策をとる。
首相続投のためになりふりかまっていられない岸田首相(本人Facebookより)
「首相は自分の続投のためなら、長い歴史を持ち、本人も愛着がある岸田派すらも解散させる。半笑いで岸田派の解散を宣言する姿からは、権力を持ち続けるためなら何でもする不気味さを感じました。今回の岸田派解散表明に麻生氏と茂木氏は反発しましたが、派閥の『カネ・人事』を骨抜きにされたなかで岸田おろしを始めるのは、そう簡単なことではありません」(同)党内には他にも、岸田派に所属しながら麻生氏や菅氏からの信頼も厚い上川陽子外相、菅氏や萩生田氏とも気脈を通じる加藤勝信・元厚生労働相、国民人気の高い小泉進次郎・元環境相ら、ポスト岸田候補が控える。4派閥解散という前代未聞の事態のなか、総裁レースを制するのは……?取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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