最初のデザイン案は大失敗! レクサス「LBX」が型破りな姿になった理由

レクサスの新型車「LBX」はボディパネルの大胆な抑揚や低重心で落ち着いたたたずまい、目新しいフロントフェイス「ユニファイドスピンドル」などデザイン面の見どころが豊富だが、この姿に仕上がるまでには紆余曲折があったらしい。目指したのは「鏡餅」ってどういうこと? 開発陣に聞いた。

低重心なカタチは鏡餅がモチーフ?

LBXのコンセプトは「プレミアムカジュアル」。レクサスのミニバン「LM」が「仕立てのいいビジネススーツ」だとすれば、LBXは「週末、買い物に行くときのカジュアルな装いにふさわしいレクサス」とはどういうクルマなのかを考えながら作ったとチーフエンジニアの遠藤邦彦さんは話す。

ただ、最初のデザイン提案は「大失敗」だったと遠藤さんは振り返る。サイズのヒエラルキーを超えた存在感のあるプロポーションを目指すはずのLBXだったのだが、「コンセプトを忘れ、従来のやり方やさまざまな制約にとらわれた」結果、1分の1モデルを作るところまで進んでいた当初のデザイン案はボツになってしまったという。

アシスタントチーフエンジニアの高橋潤さんによれば、最初のデザイン案がボツになった際、レクサスのブランドホルダーでありトヨタ自動車の会長でもある「モリゾウ」こと豊田章男さんからは、開発陣に対し「ホントに、やりたいことがやれてるの?」とのコメントがあったそうだ。

では、どうするのか。遠藤さんは「タイヤが大きいとカッコいい」というシンプルかつ根源的な考えから、まずはタイヤを強調し、それに合わせてパッケージングを行うという手法で「プロポーションの大改良」を行った。大きなタイヤを装着し、前後フェンダーが張り出した低重心な姿は「鏡餅」をイメージしたとのこと。確かに、前後からだと完全な凸型に見えるLBXは鏡餅のようでもある。

制約にとらわれずにプロポーションを大改良!

LBXが使う小型車用プラットフォーム「GA-B」はトヨタの「ヤリス」「ヤリスクロス」と共通だ。プラットフォームによって、装着できるタイヤのサイズなどはおのずと決まっているそうだが、「今まで技術者は、制約にとらわれすぎていたかも。変えられない部分はありますが、クルマの特性に合わせて必要なところは変える」べきという考え方でLBXの開発にあたったと高橋さんは話す。結果として、LBXは「センチュリー」(セダン)と同じ「225/55R18」サイズのタイヤを採用した(ビスポークビルドというグレードでは17インチも選べる)。

ボディサイドの抑揚のつけ方も半端ではない。前後のフェンダーは外に張り出し、ドアの部分は思い切ってへこませてある。こうしたデザインにしたことで結果的にフロントドアが分厚くなり、構造的に通常のドアヒンジが使えなくなったことから、LBXには大型車や高級車が使う「形鋼ヒンジ」を採用しているそうだ。

デザインをやり直したLBXを見て豊田会長からは、「これなら買いたいなと思うよ」とのコメントをもらったと高橋さん。LBXは小さいけれど存在感のあるレクサスらしい1台に仕上がっている。

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