【ベッド】【タンス】【本棚】は川の字に地震で圧死しない間取り「家具の配置図解」

「地震だ! と思ったとき10秒で家の外に出られること。それが可能な動線を確保することが、倒壊の恐れのある木造家屋では、安心して暮らすために不可欠です」
こう話すのは、危機管理アドバイザーの国崎信江さんだ。
元日の夕方4時過ぎに発生した令和6年能登半島地震は、1月23日時点での石川県内の死者が233人、安否不明者は22人と、甚大な被害をもたらした。
木造家屋が倒壊して、押しつぶされ、愛する家族を失った遺族の慟哭などが、被災地からの取材で断続的に報じられてもいる。
1月17日で発生から29年を迎えた阪神淡路大震災(1995年)でも
「タンスや家具の下敷きになった死亡例が多く報告されました」と国崎さんは話す。
今回の地震でも、家屋の倒壊による圧死で亡くなった人が、数多くいると考えられる。
震災時の危機回避に詳しい国崎さんに、圧死のリスクを最小限に抑える方法と対策について聞いた。
「まずは、2階建ての住宅なら、寝室は2階にすることを根本的な対策として実践してください」
そして、もし就寝時に地震が起きたときは、「布団をかぶって頭を下げて四つん這いになるといい」と国崎さんは続ける。
「これを『ダンゴムシのポーズ』と呼んでいます。もしも上からなにか落ちてきたり、押さえつけられても、背中で防ぎながら少しずつ体をずらして脱出可能です。
ただし、体重の4倍以上の重さになると対処は難しくなります」
さらに「ベッドルーム」「キッチン」「リビング」の家具などの配置について、図解を使って「地震で圧死しない間取り」づくりを解説してもらう。
■グラッときたら「1秒」で出ること
「キッチンは、家の中でいちばん危険な場所と認識してください。グラッときたら、『1秒』でキッチンから外に出ること」
もし、火をつけている状態でも、
「火を消すのは、揺れが収まってからにしましょう」(国崎さん・以下同)
「ガスコンロは、大きな揺れの場合は揺れを感知して自動で止まるタイプが多くなっています。ですので、それよりも危険なものがあるキッチンから一刻も早く出ることです」
火よりも危険なものとは、炊事中なら「包丁」であり「食器・調理器具」「固定されてない冷蔵庫・電子レンジ」「煮炊き中の鍋」など。
「阪神淡路大震災クラスの大地震では、家具さえ飛び交うほどです。たとえ食器棚や冷蔵庫の転倒防止対策をしていても、食器や飲み物や油物、調味料、容器に入っている食材など……ぜんぶが飛び出す可能性がある。だから『1秒でキッチンから出る』なんです」
しかし、多くの場合はキッチンの出入り口は1カ所のみだ。
ここで冷蔵庫などの配置が重要になってくるのだという。
「冷蔵庫が倒れる場合の方向を考えてください。出入り口を塞ぐように倒れてしまったら、それだけで出るのに時間がかかってしまう。最悪の場合、出られなくなります」
■退避動線上に物を置かないことが鉄則
戸建てのリビングは、出入り口のドアと外や庭などに面する窓の2カ所が、逃げる際の経路となる。
「リビングの場合の鉄則は、避難動線上に物を置かないということです」
冒頭で国崎さんが話したように、地震が来たら「10秒で外に出る」意識が、耐震性の低い木造2階建て住宅の場合は鉄則なのだという。
「テレビ、テレビ台や各種の棚は、出入り口には置かないのはもちろん、倒れた際にも出入り口を塞がない場所に置きます」
テーブルに関しては「部屋の真ん中に置いてもいい」そうだが、脚を床に固定し、割れてケガしないように、ガラスのテーブルは避ける。また、窓にもガラス飛散防止シートを貼っておこう。
■ベッド、タンス、本棚などは“川の字”に配置
「寝室はまず、出入り口となるドアの前や、倒れたときに出入り口を塞いでしまう位置に家具を置かないことです」
そして、寝室は就寝中の被災も想定しなければいけないから、ベッド、特に頭、枕の上や周囲には「倒れかかってくるものを置かない」こと。窓側にも頭は置かないほうが望ましい。リビング同様、ガラス飛散防止シートを。
間取りに合わせて、耐震性の高い家づくりも必要となる。
「いきなり全部屋を耐震仕様にと思うと大変ですから『1カ月1アイテム』を目指しましょう。たとえば転倒防止の『スーパータックフィット(転倒防止用固定具)』は1コ1千~2千円程度で購入できます。そのほかの耐震グッズとあわせても、月3千円程度で耐震化できる。
いまからですと、12月までに12カ所の耐震化が、年間3万~4万円程度で可能なんです。
今年は『コツコツ防災』をぜひ実践しましょう」
たとえば、1月は冷蔵庫、2月は食器棚……というふうに、コツコツと、確実にやっていこう。
また、最近では多くの市区町村などで、耐震化のための「住宅耐震補助」事業が行われている。
高知県黒潮町の場合は、「南海トラフ地震」対策として旧耐震基準の1981年以前に建てられた木造住宅を対象に①耐震診断の費用は無料、②耐震設計に最大30万円の補助額、③耐震工事に最大125万円の補助額と、かなり手厚い事業となっている。
「各自治体で条件や補助額が異なってきますので、積極的に問い合わせてみてください」
国崎さんが教える「ベッドと倒れたタンス、本棚が“川の字”に」などの各部屋の間取り&耐震化の「コツコツ防災」を実践して、自分と家族の命を守ろう。
■いざというときにわが身を助ける家具の配置はコレ!
【ベッドルーム】
2階が基本。家具などはベッドや布団と“川の字”になるよう平行に!
本棚、タンスなどは、寝たときに頭側となる壁に接して、倒れたときベッドと平行に“川の字”になるように設置して固定。
窓も頭側にならないように。エアコンの位置にも注意。
大地震の場合、エアコンが落下することも。頭に当たったら致命傷になりうるので、エアコンの位置が頭上にならないよう寝具の配置を考えよう。
【キッチン】
家の中で最も危険な場所。出入り口近くに冷蔵庫や食器棚を置かない!
冷蔵庫は、キッチンのいちばん奥のほう、流しの横の角にセッティング。
特にシンクやコンロに立つ時間が長いため「その背後となる位置」には、倒れてくる恐れのある食器棚などは置かないこと。
もしカップボードを設置する場合には、キャスター4コ付きのものならストッパーを、「対角2点止め」(=対角線上の2つのみをロック)にすること。
【リビング】
逃げ場は出入り口と掃き出し窓の2カ所。これらの動線を塞がない!
テレビ台、棚などは壁側に設置し、出入り口を極力塞ぐことのない配置を。
時計や絵画も、出入り口から遠いほうの壁に設置。テレビの耐震対策は、脚の裏に耐震用ジェルマットを4カ所貼り付ける。
「それに加えて、ディスプレーの裏面と壁面を、ベルトの付いた転倒防止用固定具『スーパータックフィット』などで固定するのがいいでしょう」(国崎さん)

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