フランチャイズで成功するための「立地の選び方」- 業種別の選定ポイントも紹介【徹底解説】

フランチャイズビジネスでの成功を目指すなら、店舗の立地選びは非常に重要です。同じサービスや商材を提供している同じフランチャイズチェーンの店舗でも、立地によって売上が何倍も変わることがあるからです。今回は、フランチャイズ成功のカギを握る立地選びについて、詳しく解説します。

■フランチャイズの立地選定で重要な5つの視点

フランチャイズで店舗を出店しようとする時、どのような点を念頭において立地選定を行えばいいのでしょうか。立地選定で特に重要な5つの視点をご紹介します。
1.自社のターゲットはどのような顧客層か

まず、出店しようとしている事業のターゲットを明確にしましょう。ターゲットとは、自社商品やサービスの「想定顧客層」のことです。出店前には、ターゲットの年齢や性別、職業、家族構成、所得・教育水準、ライフスタイルや志向性などをしっかり把握しておく必要があります。

ターゲットを明確にしたら、その顧客層がたくさん集まる場所や行き来する場所はどこなのか調査し、店舗出店の候補地を絞っていきましょう。
2.事業が成り立つだけの充分な商圏規模があるか

新たな店舗を出店した時、事業として成り立つだけの「商圏規模」があるかどうかも重要な点です。商圏とは、ビジネスを展開する際、来店が見込める地理的な範囲のことです。また、商圏規模とは商圏の大きさ、商圏の広がりのことを指しますが、商圏人口(その商圏内に住む人の数)そのものも商圏規模として扱います。

商圏規模を調べるには、フランチャイズ本部や商工会議所が提供する情報や、役所のホームページにある人口分布、世帯数のデータなどが役立ちます。後述する「商圏」そのものの調査の中で商圏規模を判断し、充分なマーケットが存在するか確認しましょう。

また、実際に商圏内を歩く実地調査も欠かせません。実地調査では、実際の営業時間に合わせて商圏内を歩き、顧客の来店が見込めそうか確認します。車での来店が予想される場合は、車で走ってみて、店舗の見えやすさや目印になる建物があるかどうかなども調べましょう。
3.商圏内における候補物件の位置はどのあたりか

候補物件が「商圏内のどの位置にあるのか」、という確認も必要です。特に、駅などから店舗にたどり着くまでの道筋(動線)は必ず把握しましょう。動線がわかりやすいかどうかは店の認知や売上にも影響するため、来店までに動線を遮る要素がないか実地調査の段階で知っておく必要があります。

なお、店舗出店は必ずしも、一等地や人通りの良い場所がベストというわけではありません。業種によっては、駅から少し離れた場所が最も良い立地というケースも存在します。フランチャイズ本部は、自社ブランドが成功するための「立地基準」を持っています。本部による立地選定サポートがある場合、本部のアドバイスや提案を活用すると良いでしょう。
4.近隣の競合店はどのような状況か

店舗出店には、立地そのものだけでなく、候補地の近くの競合店を把握することも欠かせません。競合店の商品やサービス内容、時間帯ごとの混雑状況や客層、客単価、自分の出店候補地と立地はどちらが優位かなど、細かな点までよく調査しておくことが大切です。

競合店を調べる際は、自分が実際に顧客となり、商品やサービスを購入してみましょう。商品・サービスそのものだけでなく、リピーター獲得方法や販促物などについても確認できます。
5.本部が納得する立地・物件なのか

フランチャイズで出店する場合、本部が納得する立地や物件なのかという点も重要です。一見良さそうな候補地を選んでも、すでに他の加盟者や、実力ではるかに上回る同業他社が進出予定、という場合は本部からストップをかけられる場合もあります。

フランチャイズで出店する以上、出店候補地の情報は本部と共有し、コミュニケーションを取りながら立地・物件を選ぶ必要があるでしょう。一方、本部の決めた条件の物件を選べないと、そもそもフランチャイズに加盟できないところもありますので、注意が必要です。
■立地選定で必ず押さえたい「面・線・点」

次に、フランチャイズの立地選定で欠かせない要素とされる「面・線・点」について解説します。立地選定では、この3要素を必ず押さえ、よく調べておきましょう。
1.商圏(面)

1つめの要素である「面」とは、商圏のことです。商圏は一般的に、人口・世帯数やその伸び率、経済規模などについて調べます。これらの基本情報は、各自治体のホームページにある統計資料や政府統計の総合窓口(e-Stat)などから確認できるため、参考にしてみましょう。

また、商圏の範囲はどのくらいか(半径〇km、店舗まで徒歩・車で〇分以内)、ターゲット層はどのくらい住んでいるか、来店する顧客が居住・勤務している地域の特性などについても調べましょう。想定顧客数については、性別や年齢からある程度割り出せますし、駅近くの物件を予定しているなら、鉄道の乗降者数のデータからどの程度の訪問があるか予測できます。

さらに、商圏内の住居タイプ(賃貸・持ち家)、車の保有率なども調べられます。詳細データは、市役所や商工会議所で確認できますので、こちらもぜひ参考にしましょう。

また、先ほどもあったように、データ分析だけでなく、実地調査も重要です。朝・昼・夜の時間帯や平日と週末でも街の雰囲気は変わりますし、利用する年齢層も異なります。できるだけさまざまなパターンで実際にその場所を訪れ、商圏の詳細を把握しましょう。
2.動線(線)

2つめの要素である「線」とは、動線です。動線とは、人が動いたり移動したりする際の経路のことで、自社のターゲット層が店舗に着くまでにどのくらい動くのか、迷わずたどり着けるのかといった調査が必要です。

実際に店舗までにかかる距離や時間の長さだけでなく、交通量や中央分離帯・大型幹線道路の有無など動線に影響を与えるものについても、実際に歩いて体感しておく必要があります。商圏の中心地からの人の流れや、出店予定地がオフィス街であれば、会社と駅の間の人の流れも把握しておきたいところです。

また、動線の途中の有利な場所に競合店がある場合は、競合店に顧客が流れてしまう可能性があります。出店候補地と競合店との位置関係についても、把握しておきましょう。
3.地点(点)

3つめの要素である「点」とは、地点・物件のことです。店舗の立地が商圏や動線において優れていたとしても、物件そのものが事業に合ったものでなければ意味がありません。

店舗の大きさや形、レイアウト、見えやすさ、入りやすさ、間口の広さ、階数、設置されている設備などが適切かよく確認しましょう。特に、物件選びは以下のような点が重要になります。

・顧客が見つけやすいか(奥まっていないか、店舗の邪魔になる障害物はないか)
・道路に面しているか(入りやすいか、反対側からも見つけられるか)
・入口に段差などがなく、高齢者やベビーカーが入りやすいか

また、たとえば学習塾を開業する場合、同じ建物に遊技場などが入っていれば物件の候補として相応しくありません。このように、同じ建物や近隣店舗の業種にも配慮して物件を選ぶ必要があるでしょう。
■立地選定の考え方と業種ごとの立地選定ポイント

最後に、立地選定の考え方や、フランチャイズの代表的な業種ごとの立地選定ポイントをご紹介します。
<立地選定の考え方>

出店候補地の選定はこれまでご紹介してきたポイントに基づいて行いますが、立地選定の基準は一律ではありません。たとえば、商圏のどのあたりに店舗を開業するかは、低単価で回転率を重視するのか、それとも、客単価を重視するのかという価値観によっても変わります。

低単価で回転率を重視するなら、人通りの多い路面店などが候補になるでしょう。人通りの多い場所は若年層が多く、低価格が好まれる傾向にあるからです。人通りの多い場所は、通行人がそのまま見込み客となり、広告宣伝費を抑えられるメリットもあります。ただし、その分ガヤガヤとうるさくなりやすいです。

一方、客単価を重視するなら、駅から徒歩10分程度かかる場所や駅から離れた住宅地近郊、もしくは駅前物件の2階などが候補になります。この場合、単価が高くなっても、静かな環境や高級な雰囲気・内装、もしくはスペースをプライベート感覚で使えるといった点に価値観を置く顧客がターゲットになると推測できます。

ただし、立地選定の基準は本部ごとに異なるため、加盟する本部の基準をよく理解しておくことが重要です。
<業種ごとの立地選定ポイント>

最後に、フランチャイズの代表的な業種であるコンビニと飲食店(居酒屋)、学習塾の立地選定ポイントをご紹介します。

・コンビニ

コンビニは商品やサービスでライバル店と差別化しにくい業種であり、立地選びは重要です。ただし、コンビニは近くに競合店舗が建っている場合も多く見受けられるでしょう。コンビニの場合、競合店舗の存在そのものより、徒歩でも車でも来店しやすいか、繁華街や観光地に近いかといった条件のほうが優先度は高くなります。

ただし、住宅地や学校の近くに出店する場合は類似店舗がないことが重要です。

・飲食店(居酒屋)

飲食店の中でも居酒屋を出店する場合は、駅前や駅に近い場所、商店街、ビジネス街などが有力候補となります。居酒屋はお酒を飲むため車での移動ができませんので、帰宅動線上にあるなどターゲット層の動線は特に意識したいポイントです。

また、気軽に立ち寄ってもらえるよう、店舗の見つけやすさや入りやすさにも重点を置きましょう。

・学習塾

学習塾の立地は、対象エリアの子どもたちの通いやすさが重要です。具体的には、学校から徒歩圏内にある、近くに危険な場所がない、同じ建物内に不適切な店舗がないといったポイントを抑える必要があります。また、保護者が迎えに行きやすい立地であることも大切です。

学習塾開業の場合、周辺の交通量や同業他社の存在、対象エリアの子どもの数も把握しておきましょう。特に、対象エリアの子どもの数を知ることは欠かせません。子どもの少ない地域での学習塾の需要は低いですから、立地を決める前に必ずリサーチしましょう。
■立地選びは時間をかけて慎重に

今回は、フランチャイズにおける店舗の立地選定についてご紹介しました。店舗の出店には多大な費用と労力がかかり、「この立地では失敗だった」と後から気づいても変更は容易ではありません。そのため、立地選定は後悔することがないよう時間をかけて慎重に行うのが賢明です。自社にとって最適な立地を選び、フランチャイズビジネスを成功に導きましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら

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