UAEのドバイには、「空の玄関口」として知られているドバイ国際空港に加えて、もう一つ空港があります。それが、アル・マクトゥーム国際空港です。ドバイ第二の空港は、サブ空港としての役割を超え“世界最大”を目指しています。
UAE(アラブ首長国連邦)のドバイには、一般的に「空の玄関口」として知られているドバイ国際空港に加えて、もう一つ空港があります。それが、アル・マクトゥーム国際空港です。この空港は、「世界最大を目指す」というミッションを掲げているほか、大分空港と同じように「宇宙港」になろうとする、ともに気宇壮大な構想を掲げています。実際に現地へ行き、その実情を見聞きしてきました。
「世界最大になる予定」の空港…勝算は? 行って分かった現状「…の画像はこちら >> アル・マクトゥーム国際空港(加賀幸雄撮影)。
アル・マクトゥーム国際空港は、ドバイ中心市街地から約40km南西にあります。この空港は、ドバイ国際空港の容量ひっ迫を受けて2010年に開港して貨物便が飛び、2013年から旅客の取り扱いも始めています。
空港は大規模な都市開発計画DWC(ドバイ・ワールド・セントラル)の中にあり、5本の滑走路で将来的には年間1億6000万人の旅客を取り扱うとしています。
また、日本では大分空港が近隣の化学・精密機械の産業集積地を活かして「宇宙港」づくりに取り組んでいますが、アル・マクトゥーム空港も大規模な施設を活用して世界最大と共に“宇宙港”をも目指しています。これは、ロケットを抱いた飛行機が空中でロケットを発射し、宇宙空間に人工衛星を投入する「水平型」の打ち上げ拠点にしようという構想です。 この計画には現実性はあるのでしょうか。2023年のドバイ航空ショーで、そのイメージが示されています。将来の姿に基づいた空港の大型模型が展示され、周囲を圧倒していました。
そこで筆者は担当者へ「世界最大の空港の1つ(one of largest airports in the world)になるのか」と尋ねたところ、即座に「世界最大(the largest airport in the world)です」と訂正されました。
そのようなアル・マクトゥーム空港ですが、現状は、ちょっとギャップがあるかもしれません。
アル・マクトゥーム空港は2023年現在、就航路線は少なく旅客ターミナルビルは閑古鳥が鳴いていました。
市内の中心部から車を使う以外さほど利便性は良くなく、ドバイメトロ都市鉄道の終着駅である「エキスポ2020」からバスで向かいましたが、行き先を分かりやすく示したバス停もなく、車内は閑散としていました。そして、到着したターミナルビルにいるのは航空会社の社員か空港の職員、あるいは警官だけ。
まるでコロナ過で緊急事態宣言が出され、嘘のように静かになった2020年の羽田空港のようだったと記憶しています。
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ドバイ航空ショーで展示されていたアル・マクトゥーム国際空港の“将来像”をイメージした模型(加賀幸雄撮影)。
ドバイ国際空港が早朝から混雑するのとは真逆で、駐機場も航空ショーの展示を終えた大型貨物機が駐機する以外は、離れた敷地内に保管されているエミレーツ航空のA380が並んでいたり、貨物施設が見えたりするだけでした。
目指すのは世界最大と宇宙港というアル・マクトゥーム空港ですが、開港後の整備は決して順風満帆ではなく、2010年代の終わりごろには建設が中断した時期もあるとされています。第1フェーズの完成は現在2030年ということですが、将来の経済情勢に左右されるかもしれず断言はできません。
とはいえ、大型模型の脇で発した社員の「世界最大の空港です」との言葉は自信に満ちていました。今後、「世界最大」が話題になるたびにアル・マクトゥーム空港の名前が挙げられるかもしれず、「宇宙港」に関心が集まれば、大分空港と共に名前が取り上げられ、日本でも知られるようになるかもしれません。