自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件は、派閥の解散に発展するなど大きな節目を迎えた。 だが、派閥を解散したからといって、「政治とカネ」を巡る国民の不信や不満が消えるわけではない。 東京地検特捜部は19日、各派閥の関係者を一斉に刑事処分した。政治資金規正法違反の罪で安倍派の会計責任者と二階派の元会計責任者を在宅起訴し、岸田派の元会計責任者を略式起訴した。 安倍派から多額の還流を受け裏金にしたとされる大野泰正参院議員は在宅起訴、谷川弥一衆院議員を略式起訴した。二階派会長の二階俊博元幹事長の秘書も略式起訴した。 これだけの人が立件されるという事態は異常だ。 派閥の政治資金を巡る事件を受け、岸田文雄首相は「政治の信頼回復のために」と岸田派の解散を明言した。 党内には派閥の温存論も根強いが、最大派閥の安倍派と二階派も同日開いた会合で、解散の方針を決めた。 悪事の温床になっていたのだから、派閥の解散は当然である。 しかし本質はカネの問題だ。 リクルート事件を踏まえ1989年に策定された「政治改革大綱」では、派閥を解消し、人事・財政・組織の近代化を図る方針をうたっている。それが守られず、今に至っている。 派閥解散は世論の厳しい逆風をかわす狙いもあるだろうが、それで信頼を取り戻せると考えているのなら勘違いも甚だしい。■ ■ 関係者が誰一人説明責任を果たしていないのは、有権者を見くびっている。 事件を総括しないままで、信頼回復のスタート地点に立てるはずもない。 裏金を還流させる仕組みがいつできたのか、誰が中心になったのか、その使途は、収支報告書の不記載が頻発する理由など、疑惑の核心部分は何ら解明されていない。 もう「捜査中」を言い訳にはできない。裏金問題に関わった政治家には、今こそ全てを説明してもらいたい。 岸田首相も自ら会長を務めていた岸田派の資金について、きちんと説明するのは当然のことだ。 首相として党総裁として、説明責任を自ら全うし、派閥の幹部にも説明を指示すべきだ。 首相の責任は極めて重大であり、それができないなら、総辞職するしかない。■ ■ 特捜部は安倍派で「5人組」と呼ばれる幹部や事務総長経験者ら議員7人について、会計責任者との共謀が問えないと判断し、立件を見送った。 「トカゲのしっぽ切り」を許してはならない。 必要な捜査は本当に尽くされたと言えるのか。有権者が納得するには程遠い結果だと言わざるを得ない。 しかし、立件を免れたとしても政治的、道義的責任は免れない。決して免責ではないことを肝に銘じるべきだ。 裏金づくりの実態と責任の所在について、明確にする必要がある。