東京都足立区千住緑町の民家の床下から住人の夫婦の変死体が見つかる事件があり、警視庁捜査1課は1月19日、フィリピン国籍の職業不詳、モラレス・ヘイゼル・アン・バギシャ容疑者(30)=足立区千住龍田町=を死体遺棄容疑で逮捕した。今月16日ごろ、現場に住む自営業、高橋徳弘さん(55)と妻の希美江さん(52)の遺体を遺棄した疑い。調べに対し「私は知りません」と容疑を否認している。
事件は同日午後8時50分ごろに夫婦と同居する長男から「仕事から帰宅したところ両親の姿がなく、床に血痕がある」と110番通報があり、発覚。血痕は玄関付近に集中し、一部に拭き取った跡があった。警視庁が捜索を続けたところ、18日午後に床下からブルーシートに包まれた夫婦の遺体を発見、2人とも上半身を中心に複数の刺し傷があった。社会部デスクが解説する。「長男が16日朝に出勤する際は異変がなく、室内に物色した形跡もなかったため、交友関係の絞り込みを進めたところ容疑者特定につながった。というのも、容疑者がかつて長男と交際をしていたものの、金銭トラブルから両親と不仲になり、結婚を反対された経緯があったようです。警視庁はモラレス容疑者が自宅から出したゴミの中に血のついた衣服が含まれていることも確認しており、殺害についても関与しているとみて調べを進めています」
移送されるモラレス容疑者(写真/共同通信社)
高橋さん一家は足立区内の別の地域に住んでいたが、2年ほど前に現在の住宅を購入、転居してきた。近くに住む60代の女性はこう話す。「2年前に引っ越しされてきたときは、息子さんがご挨拶にお見えになりました。地味な感じで話し方も優しく、穏やかな人だなという印象でした。女性関係が派手そうとか、誰かの恨みを買うようなタイプには見えなかったですね。ただ、息子さんは若い女性と歩いていたり、車に乗って2人でどこかに向かうところを見かけたことがあるので、てっきりその女性と結婚されてるのかと思ってました。ご両親も顔を合わせれば挨拶はしますし、仲良さそうにご夫婦で話してるところをよく見ましたよ」
亡くなった希美江さん(本人SNSより)
一家が以前住んでいたマンションのすぐ近くにある飲食店店主はこう振り返る。「高橋さん夫妻、息子さん、妹さんの4人でたまに食べにきてくれました。いつもご家族仲よさそうにワイワイ食事していましたね。奥さんは明るく人当たりのいい方で、旦那さんは寡黙であまりしゃべらなかったけど、ヤンキーというか、昔はそっち系だったのかなって感じに見えました。刺繍が入ったジャージを着ていましたね。自宅の玄関には不良漫画の『クローズ』みたいなフィギュアやステッカーとかたくさん飾ってあったんで、旦那さんが好きだったのかもです」
亡くなった高橋さんは墨田区内で老舗“会員制バー”のオーナーだったという。「店は20人くらい入ればいっぱいになる小さな店でカウンターは5席、気立てのいいオーナーで全国からファンが集まっていて常連客が多かった」(近隣店舗関係者)
高橋さんが経営していた店のメンバーズカード
今回の事件には、このバーの常連客も肩を落とした。「被害者とは家族ぐるみの付き合いがあったから、ただただ殺されたことがショックです。モラレスは長男の元彼女らしいが、その彼女と住むために今の家を買ったと聞いていた。何かとお金は工面していたようだ。彼女(モラレス容疑者)を店で見たことは一度もありません」
高橋さん夫婦が息子のために購入した自宅(撮影/集英社オンライン)
また、モラレス容疑者と交際していたという長男はおとなしい印象だったという。「息子さんは黒髪を真ん中分けにしてメガネをかけた本当に真面目そうな子で、マンションの駐車場でしょっちゅう車をいじっていました。亡くなったご夫婦もとても仲のよさそうな一家でしたし、見た目はヤンキーっぽいところもありましたが、話すと人当たりもよかったし、普通の人たちだったので、誰かに恨まれる感じは全然受けませんでしたけどね……。私が知る限りはこのマンションにフィリピンの女性が尋ねてきたことはなかったし、高橋さんたちと一緒にいるのを見かけたことはありませんでした。交際期間も短かったのではないでしょうか」モラレス容疑者も都内で水商売をしていたようだ。社会部記者が補足する。「亡くなった奥さんは『モラレスはすぐに長男に金を要求していた』『長男はモラレスと結婚を考えていたが、あの子は信用できない』と愚痴をこぼしており、長男には借金もあった。モラレス容疑者の自宅近くの防犯カメラには、モラレス容疑者とは別の人物がゴミを捨てる様子が映されており、ゴミからは血のついた衣服が見つかった。二人の遺体を女性一人で床下に運ぶのは困難とみられ、共犯がいた可能性もあり、警察は行方を追っている」事件の早期解決を願う。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班