陸上自衛隊では、攻撃ヘリコプターを無人機に置き換え、有人ヘリの体制を「最低限必要な機能」まで縮小するとしています。この有人ヘリの後継は、どのような策が考えられるのでしょうか。
2022年12月に発表された「防衛力整備計画」で、陸上自衛隊が持つ攻撃ヘリコプターは観測ヘリとともに廃止され、無人機に置き換えられる方針が示されました。同時に既存ヘリの武装化などにより、最低限必要な機能を保持するとも。無人機の導入とともに、武装化される既存ヘリはどの機種になるか、新機種の導入もあり得るのかもポイントのひとつといえるでしょう。
陸自「少しだけ残る有人攻撃ヘリ」今後どうなる? “無人機を主…の画像はこちら >>ドバイ航空ショーで展示されたUH-60「ブラックホーク」(清水次郎撮影)。
陸自が現在保有する攻撃ヘリはAH-64「アパッチ」とAH-1「コブラ」ですが、1982年度から本格的に配備が進められたAH-1は2024年1月現在、調達された計90機のうち現役なのは50機未満。一方、AH-64は調達計画の失敗により13機しか配備されませんでした。
こうした中、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻で攻撃ヘリがMANPADS(携帯式対空システム)により力を発揮できず、無人機の台頭が注目されました。陸自はウクライナでの戦闘を参考に、攻撃ヘリの廃止を決めたと見られます。
その一方、無人機よりも前線を隊員が直接確認できる、有人の攻撃ヘリに信頼を置く向きもあります。海外の航空トレードショーでは、ボーイングがAH-64を、エアバス・ヘリコプターが「タイガー」のセールスをそれぞれ続けています。
同時にエアバス・ヘリコプターは、攻撃ヘリほどでないにしても、機関砲やロケット弾を有人ヘリに後付けし、一定の攻撃力を持たせた武装キット「H Force」も展示していました。
陸自の防衛力整備計画は、「最低限必要な機能を既存ヘリの武装化等で保持」としているため、陸自は今後、「H Force」のようなキットの導入、もしくはベトナム戦争時のアメリカ陸軍のM3やM5といった、同じく機関砲やロケット弾ポッドなどを用いると思われます。
しかし日本は、軽攻撃ヘリなどと呼ばれる機種や、本格的な武装キットを開発したり保有したりしたことはありません。
このため、武装キットを購入するのか、もしくは自主開発するかが注目されますが、同時にキットを付けるのはどのヘリか、にも関心が集まります。
筆者は、もし武装キットを後付けするなら、現在、陸自が装備する機種では海外で先例のあるUH-60「ブラックホーク」か、ベル・エアクラフト社UH-1をベースに、スバルとの開発をしたUH-2「ハヤブサ」が候補になると見ています。
これから生産されていくことを重視し、機種数を増やさないならUH-2が本命になると思われ、その場合は、UH-1からAH-1が生まれた逆の過程をたどることになります。
しかし、エアバス・ヘリコプターにも、先述した武装キット「H Force」を装着した機体としてH145Mがあります。このヘリの当初海外でも使われていたモデル名は「BK117」であり、共同開発の一翼を、日本の川崎重工が担っています。
中国の覇権が予断を許さない中、早期の配備に重点を置くなら、ほぼ国内メーカーが開発したと言えるH145Mという選択肢もあり得ます。
既存ヘリの武装化は、防衛力の整備のみならず、昨今、強化が問われている国内防衛産業の均衡ある振興と保護に関わる可能性もあります。それだけに、行方に関心を持ち続けることが大切でしょう。