〈岸田派”解散”でバトル勃発!〉菅・石破の“派閥解消論”に大ブーイング「菅さんだって派閥のおかげで総理になった」「“無派閥派”という名の派閥じゃないか!」

安倍派や二階派のパーティー券問題を受け、自民党は1月16日、全議員が出席できる「政治刷新本部」の会合を開いた。無派閥議員だけでなく、派閥に所属する若手・中堅からも「派閥は解体すべきだ」との意見が出る異例の展開となった。これを受けて岸田首相は18日、「岸田派の解散を検討」と表明した。この流れは党内で加速するのか? 一方で派閥解消論の急先鋒に立つ菅義偉・前首相や石破茂・元幹事長の足元では、側近が派閥のような動きも始め、党内からは冷ややかな目も注がれる。
「安倍派は解散すべきだ」、「『隗より始めよ』で、まずは岸田派から解消してほしい」。16日に開かれた政治刷新本部の会合では、若手・中堅議員らが相次いで、岸田文雄首相ら党幹部に向かって派閥解消を訴えた。「会合に参加した議員は100人以上で、首相が3時間にも及ぶ党の会議に出席するのも異例。派閥解消を訴える議員とそうでない議員の割合は半々ほどだったそうで、まるで『派閥派』VS『脱派閥派』の様相でした」(全国紙政治部記者)
自民党の政治刷新本部の会合=16日午後、東京・永田町の党本部(写真/共同通信社)
「派閥解消論」の議論をリードしてきたのは、菅義偉前首相だ。菅氏は11日に初開催された政治刷新本部で、岸田文雄首相のほか、茂木敏充幹事長など派閥の領袖に加え、安倍派など各派閥の議員の前で「派閥解消をスタートラインとして進める必要がある」と発言。これに呼応するように、菅氏に近い三原じゅん子氏や小泉進次郎氏ら無派閥議員も派閥解消に踏み込んで発言。「予想以上に菅さんや無派閥議員が強気だ」(自民党関係者)と、党内に驚きを与えた。菅氏はもともと、自身の首相の座を奪った格好となった岸田氏に対して辛らつだ。「何も決められない」と見下していただけに、派閥に支えられている岸田首相を尻目に、自身が「脱派閥」で存在感を見せたいとの思惑もにじむ。
派閥解消を訴える菅氏(本人SNSより)
だが、そんな菅氏に対しても、あきれの声があがる。「菅さんだって、総裁選では二階派や細田派(当時)など、派閥の支持を受けられたから首相になれた。その後も無派閥で党内基盤が弱い自身の足元を固めるために、派閥均衡の人事をしていたのに」(同)
もう一人、パーティー券問題をめぐって派閥に批判的な発言を繰り広げているのが、「次の首相」ランキングでは常に上位に入る石破茂・元幹事長だ。1月12日の自身のブログでも「単なるポストと資金の配分機能に特化しているとすれば、国民のニーズとの乖離は明らか」と、派閥の現状に厳しい姿勢を見せた。だが、自民党関係者は冷ややかにこう語る。「石破さんだってもともと石破派を率いていたのに、総裁選で惨敗し、一人、また一人と所属議員がいなくなり、派閥を解散せざるをえなくなっただけ。自分だって安倍さんの対抗馬として総裁選に出馬したときには、参院竹下派(当時)の支援を得られたおかげで、なんとか最低限の国会議員票が獲れたのに」
魚にかぶりつく石破氏(本人SNSより)
石破氏は今もかろうじて「石破グループ」の会合を毎週水曜日の昼に国会議員会館で開いているが、集まっているのはほとんど石破氏の地元・鳥取県選出の議員で、「本当は派閥になりたいのになれない、ただの自民党鳥取県連の昼食会」(自民党議員)との冷ややかな目が注がれる。「各社、石破氏の番記者をつけていますが、党内での石破氏の求心力は高くなく、ふだん石破グループの会合の取材に来ている記者はそれほど多くありません。会合後には、近くのタバコ部屋で石破氏がタバコ2本を吸う間、石破氏のぼやきを記者が聞くのが恒例。記者が少ないと『今日はこれだけか……』とつぶやくこともあります。自身が派閥領袖として総裁候補だったころとは様変わりしました」(全国紙政治部記者)
ここにきて「脱派閥」を訴える菅氏、石破氏の側近による「派閥化」のような動きも波紋を広げている。「政治刷新本部」が初会合を開いた12日には、両氏の側近ら無派閥議員4人が集まって、無派閥議員の連絡会の立ち上げを発表した。「会見に臨んだのは、赤沢亮正・財務副大臣、坂井学・元官房副長官ら4人。赤沢氏は今も石破グループに所属していて、石破氏も当選6回で大臣適齢期の赤沢氏を何とか大臣にしてあげたいと、昨秋の内閣改造では、首相に赤沢氏を起用するよう掛け合ったとされています。しかし、派閥重視の首相は赤沢氏を起用せず、その後、税金滞納問題で辞任した神田憲次財務副大臣の後任に就けました。一方の坂井氏は、菅政権時代に官房副長官を務めた菅氏の側近。ただ、無派閥のため指導してくれる先輩議員がいなかったことが災いし、官邸と国会の調整で不手際も多かった。皮肉にも”派閥の必要性を改めて永田町に知らしめた存在”ともいえ、菅政権から岸田政権に代わってからは、冷や飯組です」(全国紙政治部記者)
石破氏の側近である赤沢氏(本人SNSより)
連絡会は政策や選挙準備に関する情報交換をしたり、無派閥議員の考えを発信したりするとして「倒閣運動では全くない」(赤沢氏)と、「岸田おろし」を否定する。ただ、自民党内からは「国民から派閥に厳しい目が向けられているタイミングで、ここぞとばかりに無派閥派の立ち上げか」と冷めた声が聞かれる。一方の安倍派。連日捜査の行方が注目されてきた「5人衆」も、立件見送り報道を受け、復活をめざす。「西村康稔・前経産相や高木毅・前国対委員長らも、役人によるレクを再開し、何事もなかったかのように『これからもまた、よろしくね!』と言っています。安倍派内の役職を辞任することも検討しているそうですが、一定のけじめをつけることで、今後の復権のチャンスをうかがいたいのでしょう」(中央省庁関係者)
早くも復権に向けて動きだした西村氏(本人SNSより)
そんな中、岸田首相は18日、「岸田派の解散を検討」と表明した。支持率回復に向けた乾坤一擲の一手ともみられるが、はたしてこの流れは党内で加速するのか?「仮に派閥が解消されても、『数は力』で、派閥のようなものはでき、グループごとの権力争いは絶対になくならない」(全国紙政治部記者)検察VS安倍派の攻防が終わっても、自民党内の攻防は続きそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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