万城目学さん直木賞…スポーツ報知でW杯コラム「7試合も書かされまして。その後に今作を書いたのですがその分集中できた」

第170回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が17日、都内で開かれ、直木賞に万城目学さん(47)の「八月の御所グラウンド」(文芸春秋刊)と、河崎秋子さん(44)の「ともぐい」が選ばれた。万城目さんはスポーツ報知で、14年のサッカーW杯ブラジル大会から22年カタール大会まで3大会連続でコラムを執筆中。気鋭の人気作家が、6度目のノミネートで悲願の受賞となった。NEWSの加藤シゲアキ(36)の長編小説「なれのはて」(講談社刊)は受賞を逃した。芥川賞は九段理江さん(33)の「東京都同情塔」が選ばれた。
「万城目ワールド」と呼ばれる奇想天外なユーモアが特徴の人気作家が、初ノミネートから16年、実に“6度目の挑戦”で直木賞を手にした。万城目さんは「普段からたまにしか会えず、隣に来ても別れていくのが直木賞やったんで…」と苦笑い。「今回も緊張せずに人ごとのように暮らしてましたら、受賞です、って電話があってビックリ。こんなことあるんかと感じました」と喜びを語った。
直木賞受賞まで作家の中で最も多くノミネートされたのは古川薫さんの10回目。6回目での受賞は、池波正太郎さん、宮部みゆきさん、東野圭吾さんらと並ぶ。万城目さんはかつて本紙に、直木賞について「そこまでこだわりはないんですけど…」と言いながら「候補で落ちて、選評で選考委員の方にぼろくそ言われるのがイヤでイヤで」と、ちゃめっ気たっぷりに話していた。
今回も「私、書いたら勝手にスライダーになるんで。これまでの選評見ると『ストレート投げたら直木賞取れる』とかあるんですが、どうしても曲がってしまう」と首をかしげ、「今までの感じだと、賞は取れないはずなのに…」と不思議顔。「評価の方法が変わったのかって聞きたい。いや、怖いから、実際には聞かないですけど」とジョークを飛ばした。作風同様、万城目さん自身もひょうひょうとした人柄。いつもギリギリで届かなかった直木賞だが、悲願の受賞となった。
趣味はサッカー観戦。「日本代表の試合は全部見ている」というほどのサッカーフリークだ。22年カタール大会でも本紙にW杯コラムを執筆した。「あの時は3試合のはずが(日本が快進撃して)7試合も書かされまして。その後に今作を書いたのですが、その分、集中できた」。ビミョーなお答えだったが「あれでスポーツの肝みたいなものが見ることができたと思ってます…って感じでよろしいでしょうか?」と笑った。(樋口 智城)
◆万城目 学(まきめ・まなぶ)1976年2月27日、大阪市生まれ。47歳。京大法学部卒。2年間の化学繊維会社勤務を経て、2006年、ボイルドエッグズ新人賞を受賞した「鴨川ホルモー」でデビュー。07年「鹿男あをによし」、09年「プリンセス・トヨトミ」、10年「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」、13年「とっぴんぱらりの風太郎」、14年「悟浄出立」がいずれも直木賞候補。作品の多くがドラマ化、映画化された。スポーツ報知に14年、18年、22年、サッカーW杯のコラム「万オブ・ザ・マッチ」を執筆した。

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