昨年末、名古屋駅近くのカラオケ店で女性Aさん(20)を包丁で刺して殺害したとして殺人容疑で逮捕・送検されていた曾我春暉容疑者(25)が、1月16日、同居女性Bさん(30)を浴槽に沈めて殺害した疑いで再逮捕された。昨年12月25日から26日の午前中までにかけて立て続けに2人の女性の命を奪うという凄惨な事件を起こした曾我容疑者の素顔について、これまで集英社オンラインでは報じてきた。曾我容疑者と被害者たちの間で一体何があったのか。改めて事件について詳報する。
クリスマスの翌日、名古屋駅前のカラオケ店の中から「人を殺してしまった」と曾我容疑者は自ら通報した。逮捕時には「別の女性も浴槽に沈めて殺した」などと女性Bさんの殺害についてもほのめかしていたが、今は一転して警察の調べに対して黙秘しているという。社会部記者が語る。「カラオケ店で知人女性(20)を包丁で刺殺した事件について、名古屋地検は処分保留としています。再逮捕容疑の同居女性(30)への殺人容疑とあわせて起訴するかどうか判断する見通しです。愛知県警は曾我容疑者(25)と2人の女性の間に交際をめぐるトラブルがあったと見て慎重に調べています」
Bさんの自宅(撮影/集英社オンライン)
曾我容疑者が名古屋を拠点に全国展開している出張ホスト店(女性向け風俗店・通称「女風」)「H」に入店したのは約1年半前。もともとは岐阜県内のラーメン店で店長を務めていたが、そのころは身長190センチ、体重130キロほどある巨漢だった。しかし、胃のバイパス手術などを行って50キロ減のダイエットをし、「ホスト風」にイメチェンした曾我容疑者。そのビジュアルを活かし「H」に入店すると、1か月後に全国1位のセラピスト(出張ホスト)になるという快挙を成し遂げた。勢いに乗った曾我容疑者は3ヵ月で「H」を退職し、2023年の6月9日に「X」という女風の経営に自ら乗り出した。カラオケ店で刺殺されたAさんはこれらの店を利用していた時期があるとみられ、事件当時Aさんの知人女性はこう証言していた。「いつごろかわかりませんが、Aは曾我の働いていた出張ホストを利用するようになり、その後付き合うようになったみたいです。Aはアルバイトで貯めた150万円以上を曾我に貢いでいました」だが、店で知り合った曾我容疑者との交際は長くは続かなかったと、Aさんは知人にその詳細を伝えていた。「曾我のほうから音信不通になる形で、今年の夏ごろには別れたと聞いていました。ところが最近になってまた曾我からしつこく連絡が来るようになったそうです。Aにはもう好きな人がいましたし、曾我のほうから連絡を絶った経緯があったので『自分からフッたくせに』と怒っていました。曾我は Aに『ヨリを戻したい』と言い寄ってきたそうです。Aからまたお金をひっぱろうとしたんでしょう。もともと働いていた出張ホストでは曾我は売れていたみたいですが、そこを辞めて自分で出張ホストの経営を始めてからは、相当お金に困っていたようです」
「女風」で人気No.1になった曾我容疑者(店舗HPより)
女風「X」の経営を始めたのちの曾我容疑者は高利貸しで借金するなど、金策に忙しかったようだ。「X」の元従業員も経営難を肌で感じていたという。「客がいないせいか、90分1万5千円のところを3000円に値下げするキャンペーンもやってたんです。最初はオープンしたてだから宣伝のためなのかなと思ってましたけど、事件が起きるまでずっとやっていて。もともと経営自体はボロボロだった」一方で岐阜県内で接客業をしていたBさんが曾我容疑者と知り合ったのは2022年の7月のことだった。Bさんの友人は2人の交際についてこう語っていた。「Bさんは曾我のことを真剣に愛していたんだと思います。Bさんは3年ほど前から岐阜県内にあるお店で接客業をしていて、とても人気のある女性でした。でも彼女は育った環境が複雑で、愛されることに飢えているように感じました。依存体質というか、性格自体は明るいんですけど、病みやすい性格でしたね」
曾我容疑者とBさん(知人提供)
曾我容疑者とBさんは付き合い始めて2ヵ月程度で、Bさんが殺害された現場のマンションで一緒に住み始めたという。曾我容疑者はライブ配信者をやっているとBさんには伝えており、当初Bさんは曾我容疑者が女風で働いていることは知らなかったようだが、後に知ることとなった。「最初のころは、彼が女風をやることに否定的だったんだけど、だんだんと『夢を実現するためだから』と言いくるめられるようになって。最終的に彼女は自分でも曾我のお店にお金を落とすようになりました。女風には出勤時間が深夜からになるお泊まりのコースがあるらしいんですけど、『お泊りとかにも行ってほしくないから』みたいなこと言っていました。それでも2022年の12月に曾我は、その仕事を辞めると約束をしたのに、辞めていなかったようですね」(前出・友人)
曾我容疑者(本人SNSより)
2022年12月以降、友人はBさんと疎遠になってしまったそうだが、このころのBさんは「今から〇〇ちゃんとご飯食べます」とか「カラオケ行きます」と自身の行動を動画に撮影し、それを曾我容疑者に送信するなど、はたからから見ていても依存しているのがわかったそうだ。
こうして女性を食い物にしてきた曾我容疑者だが、彼が以前店長を務めていた岐阜県内のラーメン店の元オーナーは今回の事件がいまだに信じられないという。「働いてもらっていた従業員なのでびっくりしていますし、辞めてからの期間に何があったのかって思います。自分も事業をやっている身なので、お金が回らないキツイ時の精神状態をわかっているので……。それでも以前の春暉は優しくて人を笑わせるようなキャラだったので、あのころを振り返ると何でこんなことをしたんだろうとは思いますね」
ラーメン店店長だった頃の曾我容疑者(知人提供)
また、前出の「X」の元従業員は再逮捕を受けてこう語った。「再逮捕されてしまったんですね。今月中には面会に行けたらと思っていたのですが、もうしばらく会えそうにないですね……。真実は曾我さんしか知らないので、一体何があったのかというのを会って聞きたかったんですけどね。僕が曾我さんにお会いした当初は店もオープンしたてで、以前の店からのお客さんもついていたようで焦りがあるようには見えなかったんです。それがいろんなことが積み重なったら、人間ってこんなにも壊れてしまうんだなと思いました」なぜ2人の女性の命が奪われなくてはならなかったのか。黙して語らずの 曾我容疑者が口を開かない限り、真相は闇の中だ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班