資産運用・投資のお悩みを解決 第11回 新NISA活用前に知っておきたい、投資・投機・ギャンブルの違いとは?

2024年から新NISAがスタートしました。これを機に、投資に取り組んでみたいという方も多いのではないでしょうか。

一方で、投資に興味を持ったものの、一歩を踏み出すのに躊躇している人もたくさんいます。理由として、「投資は怖い」という声をよく聞きます。

しかし、本来、投資は意義を理解して取り組めば、怖いものではありません。怖いと感じる場合、「投資」を「投機」や「ギャンブル」と混同している可能性があります。この3つの違いについて、解説します。

○ギャンブルは、得られるリターンの期待値がマイナス

はじめに、ギャンブルについて説明します。ギャンブルは、参加者から集めた掛け金を奪い合う方法です。代表的なギャンブルとして、宝くじや競馬があります。

ギャンブルの主催者は、参加者からお金を集めて、集めたお金から運営費などを差し引きます。そして、残ったお金を一部の当選者に配ります。参加者の一部の当選者は得をして、大半の落選者は損をするという仕組みで成り立っています。

集めたお金から、運営費などが差し引かれているので、元手からお金が増えることはありません。参加者が支払ったお金の総額と、一部の当選者に配られるお金を比べると、配られるお金のほうが減っています。全体として、得られるリターンはマイナスということになります。実際に、当選者に配られているのは、宝くじだと参加者から集めたお金の半分以下、競馬では70~80%です。

ギャンブルの場合、当選確率への期待が大きくなりすぎてしまうという問題があります。テレビのCMなどでよく見かける、当選金額が数億円の宝くじの場合、一等に当選する確率は、0.00001%、1000万分の1程度だと言われています。数字を見るととても当たりそうにない確率だと思うのではないでしょうか。しかし、宝くじを買う人の多くは「買わなければ当選確率はゼロだが、買えば当たるかもしれない」と期待を持ってしまいがちです。
○投機は、得られるリターンの期待値がゼロ

次に、投機について説明します。投資とよく似た言葉ですが、投機では、短期的な値動きを予測し、安く買ってすぐに高い値段で売ることを狙います。

たとえば、短期的な値動きを予測して売り買いが行われる商品として、FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産などがよく挙げられます。それだけではなく、短期間で利益を狙う場合は、企業の株式の売買であっても、投機になります。対象の商品にかかわらず、短期間で相場の動きを予測して売り買いするのが、投機の特徴です。

投機の場合、誰もが利益を得られるわけではありません。何が値上がりするか、予測が当たれば利益を得られますが、予測が外れて大きく損をする可能性もあります。

売り買いのタイミングを当てることは、経験豊富で日頃から情報収集を怠らないプロであっても難しいことであり、普通の個人が安定して利益を得られると期待しない方が良いでしょう。

投機は、参加者がお互いの富を奪い合う仕組みとも言えます。勝った人の利益と、負けた人の損失の合計がゼロになる、「ゼロサムゲーム」とも呼ばれます。参加することで得られるリターンの期待値は、ゼロということになります(取引にかかる手数料なども含めると、少しマイナスと考えられます)。

投資と投機は混同されやすく、日本ではこのような短期売買こそが投資だというイメージを持たれている方も多いようですが、本来の投資とは異なります。誰かから「投資で損をした」という話を聞いた場合も、実際には投資ではなく投機で損をしていたケースも多いかもしれません。
○投資は、みんなでリターンがプラスになることを目指すもの

投資は、長期的に価値を生み出すと見込んだ資産にお金を投じる方法です。投機のようにすぐにリターンを狙うのではなく、10年、20年と長い時間をかけて、資産をじっくりと育てます。

ある企業のサービスが多くの人に使われ、企業が成長を続けて、株価が上がっていくとします。その企業の株主は、みんなが見返りを得られます。参加者は、全員が自分の投じたお金が増えていくことを期待していますし、企業が成長すれば、全員が得をすることが可能な仕組みです。

また、企業が投資されたお金を使って新しい製品やサービスを開発し世の中に提供することによって、私たちの生活がより便利で豊かになることも期待できます。投資は、自分のためだけでなく、社会全体のために行う行為でもあるのです。

投資を行う上でぜひ覚えておきたいのが「長期・積立・分散」です。投資先を世界中のさまざまな資産に分散し、コツコツと積み立てながら資産を長期的に持ち続けることで、経済全体が成長すれば、資産も増えていくことが期待できます。ギャンブルや投機と異なり、投資に長期で腰を据えて取り組むことで、参加する全員が利益を得られる可能性があります。
○新NISAは、投資にじっくり取り組むための制度

投資・投機・ギャンブルの違いを正しく理解すれば、投資は決して怖いものではないことがわかると思います。これらの違いを正しく理解し、将来に向けてお金を増やすためには長い目で投資を行いましょう。

そのうえで、2024年から始まった新NISAは、投資に活用できます。NISAは、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。新NISAでは、利用できる期間が無期限となり、いつでも自分のペースで使える制度になりました。長い時間をかけてリターンを得ることを目指す投資に、じっくり取り組むには適した制度と言えるでしょう。

新NISAを活用し、投資、特に「長期・積立・分散」の方法で、時間をかけて資産を増やすことを目指してはいかがでしょうか。

牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら

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