自民党安倍派のパーティー券収入をめぐる裏金疑惑は、ついに池田佳隆衆院議員(比例東海)とその政策秘書が逮捕される事態に発展した。だが、捜査はこれからがクライマックス。国会が開くまでの2週間ほどで国会議員の立件はどこまで広がるか、永田町全体が固唾をのんで見守るなか、なんとか逃げ切ろうと必死の議員も現れ始め……。
政治資金収支報告書に収入の一部を記載していなかった政治資金規正法違反容疑で、池田容疑者らが逮捕されたのは、通常、特捜部による逮捕が行われることはない日曜日、1月7日だった。「池田氏が記載していなかったとされる4800万円規模の額では逮捕まではされず、身柄を拘束されない略式起訴などにとどまると当初はみられていました。しかし家宅捜索の結果、池田氏側が政治資金に関するデータを破壊していた形跡が明らかになりました。東京地検特捜部は、証拠隠滅を防ぐため、早めに身柄を確保しなければいけないという判断に傾き、日曜日の逮捕という異例の展開になりました」(全国紙社会部記者)
逮捕された池田佳隆衆院議員(本人Facebookより)
池田氏の逮捕は、それぞれ5000万円、4000万円ほどのキックバックを受けたとされる“高額三兄弟”の大野泰正参院議員(岐阜選挙区)・谷川弥一衆院議員(長崎3区)にも驚きを与えた。2人も報道各社で立件の方針が報じられており、対応を迫られている。「2人は逮捕だけは何としても免れようと、素直にキックバックの不記載を認める方針に転じました。それでも谷川氏は立件の方針に『納得いかない』と不満を漏らしているとか。実際に、『派閥から収支報告書に記載しないでいいと言われた』と話し、自身の責任はないと言わんばかりに、使わずに保管していたキックバック分の現金を写真に撮って特捜部に提出したそうです」(同)一方の大野氏は年末年始も雲隠れを続けた。「特捜部は、大野氏の場合はキックバックされたお金を、地元県議との飲食のために使っていた可能性があるとみて調べているようです。大野氏の秘書は昨年末、地元でお詫び行脚に回っていましたが、年明けのあいさつ回りは大野氏本人も秘書もせず、式典には祝電を送っただけ。大野氏のいない会合で地元の県議が集まると、大野氏の辞職を前提に『4月は補選だ』という会話が当たり前のようにされています」(大野氏の地元関係者)
「特捜部は17日にも、関係者への任意聴取を行うなどしていた東京都内のホテルから撤収し、19日には全国から集めている数十人規模の応援検事の派遣期限を迎えるとみられます。その後、国会召集は26日の見込み。国会が開くと、不逮捕特権のある国会議員の逮捕は難しくなります。特捜部は応援検事を各地に返してから、『Xデー』のデッドラインまでに1週間もないという、超タイトなスケジュールで大詰めの捜査や、上級庁との協議をすることになります」(永田町関係者)事実上のデッドラインを決める国会召集日をめぐっては、自民党と特捜部の神経戦も繰り広げられた。
国会議事堂
「昨年末には、報道各社が『国会召集日は1月26日が軸』と一斉に報じましたが、その後、永田町では22日の召集も有力視されるようになりました。能登地震の対応のために国会を早く開いた方がいいという意見ももちろんですが、『捜査できる日数を特捜部に与えなくていいじゃないか』という強硬論が自民党内にあったことも事実です。ただ結局、召集を早めるのは能登地震の対応に追われる政府側にとっても日程が厳しいですし、26日召集に落ち着きました」(自民党関係者)
国会召集日が約2週間後に迫るなか、最大の焦点は立件が安倍派幹部まで及ぶかだ。「特捜部は西村康稔・前経産相や、下村博文・元政調会長といった事務総長経験者にも改めて事情聴取を実施しており、本気度がうかがえます。安倍派幹部は、過去の慣習をそのまま引き継いでいたわけではなく、2022年にはキックバックの取りやめを一度決めたにもかかわらず、一転してキックバックを継続することに決めたことが明らかになっています。その意味で“確信犯”的とも言え、特捜部は西村氏らの認識を調べ、立件できるかどうか、詰めの検討をしています」(全国紙社会部記者)戦々恐々とする安倍派幹部の中で、誰が「裏切り者」になるかも注目されている。
西村康稔前経産相(本人Xより)
「西村氏ら『安倍派5人衆』や下村氏はこれまでの任意聴取で、派閥の収支報告書にキックバックを記載しなかったことについて、そろって関与を否定してきました。しかし、池田氏が逮捕され、改めて特捜部の本気度が明らかになりました。キックバックの事情をよく知っている池田氏とその秘書に、逮捕前とは比べものにならない厳しい取り調べがされると、2人が裏金づくりの実態を全部話す可能性もあります。安倍派幹部の中からも『自分は逮捕されたくない』と、不記載の経緯について正直に話し出す人が出てくるかもしれません」(同)自民党最大派閥の「政治とカネ」の疑惑に決着がつく日は、すぐそこまで迫ってきている。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班