玉城デニー知事は、沖縄振興の検証をスタートさせる。来年度の県政重点施策に盛り込む。 現在は2022~31年度までの「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」(6次振計)が進行中だ。 しかし、政府・与党の中からは社会情勢や財政事情から沖縄振興の厳しい見方が出ており、今回の振計には初めて「5年以内の見直し」が盛り込まれた。 折り返し地点の26年度に向けて県は、発展的見直しを目的とした作業を進める。 政府による振興計画は1972年、復帰を機に始まった。沖縄戦で受けた甚大な被害からの回復や他の都道府県との格差是正、経済自立を目指している。 現行の6次振計は企業の「稼ぐ力」の向上で、民間主導型の強い経済の実現を目指すとしている。 振計の特徴は国庫負担割合をかさ上げする「高率補助制度」と、内閣府が窓口となる「一括計上方式」だ。 22年度までの半世紀に約14兆4千億円が投じられ、インフラ整備は急速に進展した。一方、県民1人当たりの所得は全国最下位のままで経済格差は依然横たわる。 安倍晋三政権以降は、基地とのリンクが顕著になった。 仲井真弘多知事が名護市辺野古沖の埋め立てを承認した翌年の14年度には3501億円を計上したものの、反対する玉城県政では2600億円台で推移している。 19年度には国が市町村に直接交付する沖縄振興特定事業推進費も突如導入された。推進費は拡大しており、振計に国の関与が強まっている。■ ■ 一方、県が自主的に選択する事業に充てられる沖縄振興一括交付金は減額傾向だ。来年度予算案では10年ぶりに増額されたものの、要望にはほど遠い状況が続いている。 一括交付金には老朽化した施設の更新・耐震化や、離島住民の交通コスト負担軽減など県民生活に直結する事業も多く、減額の影響は大きい。 加えて来年度予算案には、政府の総合的な防衛体制強化を目的とした公共インフラ整備の関連予算が組み込まれる可能性も出ている。 政府は軍民両用化を進める「特定重要拠点空港・港湾」の候補に県内7空港と5港湾を挙げ、県に整備事業の予算化を促す。 しかし、平時から自衛隊の使用を前提とした事業は、沖縄振興の目的から逸脱していると言わざるを得ない。■ ■ 沖縄に米軍基地が集中する社会的事情は振興策を講じる理由の一つに挙げられる。その予算が基地の固定化と連動するのでは本末転倒だ。 にもかかわらずこの間、基地と振興のリンクは露骨になり「バーター」とまで言われるようになった。「基地維持装置」からさらに進み、今や「沖縄要塞(ようさい)化促進装置」に変わりつつある。 振計の出発点は「自立的発展の条件整備」だ。原点をもう一度、確認する必要がある。6次振計の後半はどうあるべきか。この機会に県民を巻き込んで問題を掘り起こし課題を整理した方がいい。