「岸田おろし」だけじゃない。2024年は与野党党首の顔ぶれが一新 立憲・泉、公明・山口は任期満了、共産・志位委員長も交代か

能登半島地震が元日から発生し、波乱の幕開けとなった2024年。今年は年始から検察による自民党裏金問題の捜査が大詰めを迎え、岸田政権にとって多難の年となる。9月には自民党総裁選が予定されており、岸田文雄首相の去就が注目されているが、実は9月は他党でも代表が任期満了を迎える。党首の顔ぶれが一新する可能性もあるなかで、「岸田おろし」が加速するかどうかが焦点となりそうだ。
「解散総選挙のタイミングによっては、代表を交代させるかどうか、かなり難しい選択を迫られることになる」そう語るのは立憲民主党関係者だ。今年9月に予定されている自民党総裁選の陰に隠れて見落とされがちだが、立憲の泉健太代表も9月に任期満了を迎え、党の代表選が予定されている。泉氏は次期衆院選で150議席を獲得するという目標を掲げており、達成できなかった場合は「代表を辞任する」と述べているが、「あまりにも高すぎる目標で達成はかなり困難」(立憲関係者)という見方が一般的になっている。そのため、9月よりも先に衆議院が解散され、総選挙が実施された場合には、その後に泉氏が辞任をして、立憲では新代表を選ぶ代表選が行われる可能性が高い。
立憲・泉健太代表(事務所Facebookより)
関係者が「難しい選択」と語るのは、9月までに衆議院が解散されず、総選挙が代表選よりも後の日程になった場合だ。衆議院議員の任期満了である2025年10月までに総選挙が控えるなか、立憲は9月の代表選で、代表を変えるかどうか選択を迫られることになる。立憲内では「代表を変えても支持率が上がるわけではない、泉氏のもとで次期衆院選まで突き進むべきだ」という意見がある一方で、「泉体制のもとで立憲の支持率がなかなか上がらず、日本維新の会の台頭を許してしまった。衆院選を迎える前に代表を変えるべきだ」という主張も多い。また、選挙日程との関係から、立憲関係者は「衆院選までの日程が短いなかで新しく代表になるのは、その政治家にとってもリスクになる。泉氏が150議席という大きすぎる目標を掲げてしまっただけに、選挙結果について代表が必要以上の責任を取らされる可能性もある」と解説する。すでに次期代表選に向けて出馬の検討を始めている立憲議員は何人かいるが、最終的な決断は総選挙のタイミングしだいとなりそうだ。
9月に任期満了を迎えるのは、立憲の代表だけではない。公明党の山口那津男代表もそのうちの1人だ。山口氏は15年間に渡って代表を務めており、2025年には参議院議員としての改選期を迎える。公明党の代表任期は2年間であるため、もし山口氏が代表を続投した場合は、来年の参院選で再選し、さらに追加で6年間の国会議員人生を歩むこととなる。しかし、その山口氏もすでに71歳。参議院議員としてさらに任期を重ねるとなると、79歳ごろまで政治家をすることになるわけだが、公明党周辺からは「もう高齢で耳も聞こえにくくなっている。参議院議員としては今回の任期で終わりにすべきという声も多く、そのため今年9月の任期満了をもって代表を変える可能性が高い」という声が挙がっている。
山口那津男代表(本人Facebookより)
公明党の代表を変えるとなると、重要になるのは創価学会の意向だ。公明党では党首を決める際に代表選という形はとっているものの、実際には複数の候補者が立候補して選挙が行われたことはなく、創価学会との調整を経て代表となる人物が選ばれ、1人だけが立候補して無投票で党首に選ばれることが習わしとなっている。創価学会といえば、女性部(旧婦人部)が選挙期間中に積極的に電話掛けを行い、票田として機能している。そのため、女性部は学会内でも強い発言力を持っていることで知られているのだが、その女性部のお眼鏡にかなう、代表となる政治家がいるかも焦点だ。山口氏は「なっちゃん」という愛称で知られている通り、女性部からの人気があるが、順当に考えれば次期代表の筆頭候補とみられる石井啓一幹事長には硬いイメージが先行している。はたして「なっちゃん」に代わる政治家はいったい誰になるのか。池田大作名誉会長が亡き後の創価学会で調整が進められているとされている。
そして共産党でも1月15日から始まる党大会で、志位和夫委員長が24年間にわたって維持してきた体制から、田村智子政策委員長に代表が交代する説が浮上してきている。共産党では党首を党員による直接選挙で選ぶのではなく、中央委員会によって決定する民主集中制を取っている。これに対して昨年、党首を直接選挙で選ぶ「党首公選制」を求める主張が党内から相次いで出たが、その党員を共産党が除名処分としたことも話題となった。党内の波紋を抑えるため厳しい対応を取ったかたちだが、志位委員長の体制が長く続き過ぎていることへの批判が党内からも出てしまった事態は無視できるものではない。そうしたイメージを刷新するために、女性の田村氏の代表起用に白羽の矢が立ったわけだ。実際に共産党は昨年6月、参議院議員として活動してきた田村氏を次期衆院選に擁立して、衆議院議員に鞍替えさせることを決定。当時から「志位氏から田村氏に代表を交代する布石だ」(永田町関係者)と囁かれていた。共産党で初の女性代表が誕生するかどうかが注目されている。
共産・志位和夫委員長(本人Xより)
このように、与野党各党で党首交代が取り沙汰されるなか、最も注目されるのが自民党総裁選だ。支持率が10%台にまで低迷し、さらに裏金問題の捜査も待ち受けている「泣きっ面に蜂」状態の岸田首相だが、4月28日には細田博之前衆院議長が死去したことに伴う、衆院島根1区補選の実施が予定されている。しかもこの4月補選、裏金問題を受けて辞職する議員が今後、続出した場合は、選挙の数が増えて「裏金補選」となってしまう可能性もある。そうなると、岸田政権や自民党にとっては厳しい選挙戦を強いられることになり、岸田首相のままで補選に臨むのかも含めて自民党では選択が迫られることになる。そして、6月には通常国会の会期末、解散総選挙をするか否かを岸田首相が決断する、総裁選前の最後のタイミングがやってくる。この6月には所得税などの減税も行われるが、自民党総裁選で「岸田おろし」が本格化する前に、思い切って岸田首相が解散に打って出るのかが注目される。さまざまな思惑のもとで与野党トップの顔ぶれが一新することになるかもしれない2024年。ただ、いずれが党の顔になろうと、望まれるのは国民生活を豊かにするための議論であり、政治だ。くれぐれも国民を置いてけぼりにするような権力闘争に明け暮れることがないよう、政治家の方々には注意してもらいたい。取材・文/宮原健太集英社オンライン編集部ニュース班

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