「やんのかテメエ!」酔って妻を殴り殺したDVツーブロック男に懲役8年の判決…週末にはバーベキューを開いていた自慢のウッドデッキ付き自宅は競売に…〈愛川町・撲殺事件から10カ月〉

酒の勢いで妻を撲殺した“ツーブロック男“に下った判決は、わずか懲役8年だった。神奈川県愛川町中津の自宅で妻に暴行を加えて死亡させたとして傷害致死罪に問われた建築業、伊藤裕樹被告(35)の裁判員裁判の判決公判が10月3日、横浜地裁であり、足立勉裁判長は懲役8年(求刑・懲役10年)を言い渡した。
判決によると伊藤被告は2月19日、自宅で妻の初音さん(当時26歳)と口論になり、玄関前の駐車場に突き飛ばして転倒させ、室内に戻った後も顔を繰り返し殴るなどして、外傷性くも膜下出血と急性硬膜下血腫で死亡させた。足立裁判長も指摘したように、怒りにまかせたあまりの、激しく執拗な暴行だった。伊藤被告は自宅周辺では、シラフのときは気のいい大工の兄ちゃん風情だが、酒に酔うと一転、トラブルが絶えない要注意人物として有名だった。SNSなどによると2017年8月に初音さんと結婚、間もなく息子が生まれたが、酒に酔っては初音さんに暴力を振るう姿は友人らにも見られ、注意されていた。また、夫婦げんかから揉み合いになり、警察官が駆けつける騒ぎを何回も起こしていた。
伊藤被告(本人SNSより)
さらに大工の腕前を生かしてウッドデッキを作り、週末ごとに仲間を呼んでバーベキューを開いては泥酔してドンチャン騒ぎを繰り返す迷惑な「パリピ」として知られていた。事件当時、近所の男性も取材にこう語っていた。「酔っ払うと横を通りかかる近所の人を睨みつけたり、仲間同士で『てめえ、やんのかコラ!』とか口論になったりね。みんなガラが悪いから怖くて注意もできないし、駐車場でバーベキューをやるときは車でやってきていたから、飲酒運転もバリバリやってたよね」一方で妻の初音さんは可愛らしい印象だが、酒が入ると気の強い一面ものぞかせ、伊藤容疑者と口論になった際は突っかかることもあったという。また、ポメラニアンを飼って可愛がり、広場や公園に散歩に出かけると近所の子供たちに犬を触らせて遊ばせてくれる「優しいお姉さん」としても知られていた。事件から10ヵ月、判決から2ヵ月以上が経ち、年の瀬を迎えても、近所の人たちにとって事件の記憶はまだ生々しかった。近くに住む60代男性はこう語った。「事件が起きてからこの家には、伊藤被告の親族や同僚が定期的に来てるよ。つい3日前にも同僚っぽいのが家に来てたよ。荷物を運び出してるところをよく見かけるから、ちょっとずつ運び出してるんだろうな。庭にあった物置を運んでるとこ見たけど、子どもの自転車なんかはまだそのままなんだな。あいつの家は親父が建築業を営んでて、跡取り息子だから調子乗ってたんだろう。事件後の荷物運びは同僚がやらされてるんじゃないか」
二人が住んでいた自宅(撮影/集英社オンライン)
男性は、伊藤被告の父親も見かけたことがあるという。「事件数日後だったけど、伊藤の親父が仁王立ちしてこの家を見上げながら、舌打ちしたりして怪訝そうな顔してたよ。息子が事件起こしたってのにあの態度はねえよ。それに比べて、殺された奥さんの父親は声も掛けられないくらい落ち込んで、やつれた顔でポメラニアンを連れてってたね。伊藤と同じ職場のやつに聞いたことあるけど、この家も競売に出すかもしれないって話だったよ。今思い返してもふざけたやつだよな。いつもは大人しくて奥さんの尻に敷かれてるようなタイプなのに、酒が入ると本当に粗暴になって近所の人に『文句があるなら直接言えよ!』とか凄んだりしてたからな」
伊藤被告から、直接被害を被った住人もいる。60代のその男性は、苦々しい表情を見せた。「前にうちの塀に車ぶつけやがったんだよ。2022年の夏ごろかな、夜中に『ガッ!』って感じの大きい音がしてなんだろうと思っていて、朝、外に出てみたらうちの塀が削れ落ちてたんだ。伊藤が『知らないっす!』とかシラを切るもんだから、『車の傷と塀の高さが一緒だし、夜中に音も聞いてんだよ』って問い詰めたら、奥さんが伊藤に『私じゃないからお前だろ、正直に言えよ』って助けてくれたんだよ。伊藤はようやく観念して『弁償します…』とか言ってたんだけど、見積もりとかモタモタしてたら逮捕されちまって泣き寝入りだよ」
伊藤被告(本人SNSより)
初音さんに好印象を持っていた住民は、ほかにもいた。「事件の数日後、奥さんの兄弟かご親族の方にはお会いしました。ひどく落ち込んでる様子で、『お悔やみ申し上げます』と挨拶したらボロボロと涙をこぼし始めました。思い出させてしまったようでとても心が痛みました。奥さんは本当にいい人で、美人なだけでなく、近隣の年寄りの長話にも付き合ってくれたりもして、まわりからすごく好かれてたんですよ」(70代の女性)
伊藤被告と初音さん
60代女性も、悲しみをこらえるようにこう語った。「なんで判決が懲役8年なんだって、近所でも話題になったんですけど、やっぱり短く感じるってみんな言ってますね。というのも事件前から2~3回くらい夫婦げんかで警察がきてるんですよ。口喧嘩で済まずに手を出されたから奥さんが通報したって感じですね。報道の内容だと事件のときも同じような展開だから、伊藤は全然反省してないんですよ。ケンカがきっかけなのか、奥さんが子どもを連れて3ヵ月くらい家を出てたこともありました。事件が起きる数日前から奥さんの姿も見ないし、子どもの声も聞こえてこなかったから、また家を出ているのかなって思ってたんですけどね。近所の子どもたちもワンちゃんと遊ばせてもらってたから、『もう会えないの?』って悲しんでますよ」幼い息子を残し、犬も食わない夫婦げんかで若い命を散らした初音さんの無念が、伊藤被告の胸に響くことはあるのだろうか。一審判決後の期限までに検察側も含めて控訴はなく、伊藤被告は懲役8年の刑が確定した受刑囚となった。出所後に再び、酒を口にしないことを祈るばかりだ。取材・文 集英社オンラインニュース班

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