「タケノコ王」風岡直宏さんの直売所25年で閉店…伝えたい農業の厳しい現状

テレビ番組などで「タケノコ王」として親しまれる風岡直宏さん(50)が営む直売所「風岡たけのこ園」(富士宮市長貫)が、2025年春のシーズンを最後に閉店する。01年から22年間、タケノコに命を懸けてきた男が「引退するのをきっかけに、政府や国民に農家の実情を知ってもらいたい」と“魂の声”を口にした。
「我々の本当の現状を知ってもらいたい」。テレビでは「タケノコで1億円を稼ぐ男」などと紹介され華やかなイメージだが「農業や林業など第一次産業に従事する人は、ほぼスポットライトが当たらない」と本音を語った。
学生時代にトライアスロンの選手として培った体力を生かし、28歳の時に始めた実家の竹林でタケノコ農家を22年間営んでいる。5000坪の土地を年間300日以上は山に入り1人で管理する。仕事内容は竹の伐採から肥料やりなど土日もほぼ休みはないのが現状。日々の努力から生まれたのが、高値がつく「白子」と呼ばれる白いタケノコだ。
一方、過酷労働が重くのしかかり古傷の右足の状態は悪化。4年前に手術を行い、近い将来に再手術が必要と医師に告げられた。「(学校で言えば)農業は1時間目から6時間目まで体育の授業という感覚」。農林水産省のデータによれば、農業人口は毎年約50万人以上減少し、平均年齢も65歳以上と高齢化。15年後には農業人口が現在の4分の1に減少されると予想される。
「農家になるには相当な覚悟が必要。犠牲になってでも地域に貢献したいという責任感の強い人が農業にたずさわっている」と話す。タケノコ1本で勝負し、地元で日本一の味を生み出した。25年の閉店まで約2年。「周りからは政治家になってほしいと言われる」と笑いながら話し「厳しい農家の現状など、少しでも声を届けていきたい」。「農家の声」を代弁し、世の中に届けていくことが、富士宮の功労者の使命となる。
(森 智宏)
◆風岡 直宏(かざおか・なおひろ)1973年11月9日、静岡・富士宮市(旧芝川町)生まれ。50歳。短大時代にトライアスロンを始め、23歳までプロチームに所属し、国内レースで13勝。引退後は工場勤務などを経て、01年から「風岡たけのこ園」を営む。フィギュアスケート元世界女王の浅田真央さんとテレビ番組で共演し交流がある。184センチ、73キロ。

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