「ロシア軍が旧式戦車を引っ張り出した!」戦車の“消耗率”驚愕の実態明らかに でもウクライナは喜べない?

これまでロシア軍はウクライナで多くの戦車を失っているそうで、旧式車両も投入しています。しかし、この状態でもロシアが弱体化しているとは言いきれません。
2023年12月12日、ロイター通信が機密解除されたアメリカ情報機関の文書について報じました。これはウクライナ侵攻におけるロシア側の損害に関しての報告書で、ロシア軍の戦車は特殊軍事作戦開始時の3100両からすでに約2200両が失われているそうです。しかも、T-90、T-80または、T-72の近代改修型といった比較的新しい車両が失われています。
「ロシア軍が旧式戦車を引っ張り出した!」戦車の“消耗率”驚愕…の画像はこちら >>撃破されたロシア戦車(画像:ウクライナ軍参謀本部)。
そのため、新しい車両の生産が間に合わず、損失を埋めるべくロシア軍は、1970年代初頭に製造されたT-62戦車まで出したと報告されています。旧式を出さざるをえないほど、ロシア軍がひっ迫しているともいえます。
しかしこのT-62戦車、古いことは確かですが、戦果は挙げているようです。特に2023年6月にウクライナ側の攻勢が始まってからは、有効に働いた可能性があります。
T-62は、2023年からウクライナへ供与され始めたドイツ製の「レオパルト2」やイギリス製の「チャレンジャー2」といった新しい西側戦車を相手にするには力不足ではあります。さらに、歩兵が携行する対戦車ミサイル「ジャベリン」など対戦車兵器にも対策せねばならず、追加の装甲やスラットアーマー(金網のような装備)を装備しなければならず、鈍重な状態で走り回れならければなりません。
しかし“守る側”であれば、戦力としては十分に活用ができます。斜面や丘、堤防を利用して砲塔以外を隠すことで車体を防御する「ハルダウン」などの戦法で“動く砲台”としているのです。攻める側が生身の人間ならば、重装甲で砲塔を持った車両がいるだけで脅威となります。
また、現地の情報によると仰角を大きくし、りゅう弾を使用することで簡易的な自走式りゅう弾砲としての運用例もあることから、防戦には十分に機能する車両であると思われます。
ウクライナの攻勢を持ちこたえ、2023年12月現在の戦線はこう着状態にありますが、ロシアの戦車生産拠点は攻撃を受けたわけではなく、生産能力は衰えていません。T-90増産に加え、T-80の再生産もスタートしています。さらに、ロシアの2024年度の国防費は7割増となるとみられており、西側兵器供与が一時期よりも滞り始めたウクライナにとっては依然として厳しい戦いが続く可能性が高いと予想されています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする