東海汽船が格安で伊豆諸島へ行ける「ミステリーきっぷ」を発売しています。行き先が出発当日に窓口で宣告されるというユニークさから、SNSでも話題になっています。
東京の竹芝桟橋から伊豆諸島を結ぶ航路を運行する東海汽船は、行き先の島を当日告知する「ミステリーきっぷ」を発売しています。行き先が出発当日に窓口で宣告されるというユニークさから、SNSでも話題になっています。どのような体験ができるのでしょうか。
「あなたの行き先はこの島です」 前代未聞“行き先は当日告知”…の画像はこちら >>大型客船「さるびあ丸」(乗りものニュース編集部撮影)。
この「ミステリーきっぷ」は“夜行日帰り”限定で、料金は大人4000円(こども2000円)。東京からの夜行便となる往路、その戻りの昼行便を復路として、宿泊なしで利用する形です。出発日の2か月前から前日までに電話で予約する必要があります。
利用対象は大型客船「さるびあ丸」で運航される東京~大島~利島~新島~式根島~神津島航路です。つまり、行き先は“5島のいずれか”です。
東京から離れた島になるほど滞在時間が短くなっていくことが特徴で、滞在時間が最も長いのは大島の8時間30分、最短は神津島の30分です。行き先が神津島になった場合、往路の船ですぐ折り返すため、「ほぼ船の上」で過ごすことになります。 東海汽船によると、このきっぷを企画した背景には、オフシーズンとなる伊豆諸島への送客を強化したいねらいがあるそう。また、「船が出航しても接岸できない可能性がある『条件付き運航』となる島は、行き先から外します。そのため、就航率が高い大島が行き先になる可能性は高くなります」(広報・企画グループ)と話します。 対して、滞在時間が30分しかない神津島になった場合、「その点を懸念していたのですが、反応は意外と良く、乗り物好きの方が多く利用しているようです」とのこと。 きっぷが周知されてきたことで利用者も増え、2023年12月16日(土)出発分は既に満員となっています。2000円の追加で1等室を利用可能な「ミステリーきっぷ・快」も急遽設定されました。 利用できる客室は、いわゆる雑魚寝タイプの「2等和室」限定です。横になって眠ることはできますが、枕の部分のみがパーテーションで仕切られており、コンセントも全席にあるわけではありません。「滞在時間30分」の可能性と、雑魚寝タイプの部屋になることは留意する必要があります。
実際に「ミステリーきっぷ」を使うべく、出発の数日前に電話で予約。今回は1人で利用しましたが、複数人の利用でも、同一の予約であれば同じ行き先にしてもらえるようです。予約が異なってしまった場合でも、窓口で申し出れば配慮はしてもらえるといいます。 当日に竹芝桟橋の窓口で予約番号を伝えて発券してもらうと、すぐに「行き先は大島になります」と告げられました。滞在時間の長さでは「当たり」の島を引きましたが、大島のどこに行くかは決めていませんでした。
ひとまず、ターミナルに置いてあった大島の観光案内パンフレットをもらい、船内で考えることにしましたが、行き先がどの島になってもいいように、各島のスポットは事前にチェックしたほうがよいかもしれません。東海汽船では、「ミステリーきっぷ」のモデルコースをサイトで公開しており、それを参考にするのもよいでしょう。
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竹芝桟橋を出港すると、レインボーブリッジの下をくぐる(乗りものニュース編集部撮影)。
22時「さるびあ丸」は竹芝桟橋を出港。船のデッキからはレインボーブリッジや羽田空港、川崎の工業地帯の夜景を見ることができ、目的地に到着する前から既に「非日常感」を感じることができました。 土休日ダイヤだったため、「さるびあ丸」は横浜(大さん橋)にも寄港。横浜出港後は消灯となり、翌朝の6時に大島の岡田港へ入港しました。 大島ではかなりの下船があり、まだ暗い中、多くの人がバス乗り場へ向かっていきます。ここから島の中心部の元町、三原山山頂口、波浮港などに向かうバスが停まっており、まずは早朝から営業している温泉がある元町に向かうことに決定。バスの1日乗車券を購入しました。
元町港の近くにある御神火温泉は、6時30分から営業しており、早朝に大型客船で到着した利用者にとっては有難い施設です。温泉に浸かった後は、朝食も兼ねてしばし座敷で休憩しました。
その後は、バスに乗って伊豆半島や富士山が見える三原山山頂口の展望台へ。その後は元町まで戻り、今度は風情がある漁港として知られる島の南部の波浮港へ向かいました。途中、バスは「地層大断面」を通過します。火山灰主体の降下堆積物が積み重なって縞模様を形成した、バウムクーヘンのような地層を車内からも見ることができました。
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島の中心部の元町と三原山山頂口を結ぶ路線バス。車両は観光バスタイプ(乗りものニュース編集部撮影)。
波浮港周辺を1時間ほど散策し、元町まで戻ります。帰りの船は元町港からの出港となり、まだ時間があったので、島の名物「べっこう寿司」や「大島牛乳アイス」を食べることができ、大満足です。 大島を14時30分に出港する客船に乗り、東京の竹芝桟橋には19時45分に到着。やや駆け足ながら、バスで主要な観光名所を巡り、グルメも楽しむことができました。
4000円で冒険気分を味わえる「ミステリーきっぷ」。今回は2023年12月28日(木)出発分までの販売となっています。