幌延町の「ほろのべトナカイ観光牧場」に、にぎわう季節がやって来た。国内で唯一トナカイが多頭飼育されている牧場で、現在34頭いる。年間を通して柵越しにエサやりなどを楽しめる。さらに一面銀世界となる冬場だけのとっておきのイベントもある。「日本ではここでしか体験できないと思います」(町産業建設課)。トナカイが引くソリに乗れるのだ(有料)。サンタの衣装もレンタルしており、大人から子供までクリスマス気分を満喫できる。
町とトナカイの関係性は長く、1989年に岐阜県出身の男性が家畜として北欧のフィンランドから町にトナカイを10頭輸入したことから始まる。年間の平均気温6度前後の町の気候が飼育に適しており、91年には約170頭を輸入。おとなしい性格や愛きょうの良さから観光資源として人気が高まり、95年にさらに50頭がやってきて、トナカイ牧場がオープンした。
牧場にある北欧風の建物では、町民が手作りしたトナカイのツノのアクセサリーや、ソーセージなどの加工食品も販売している。
自然豊かな町でもある幌延の地名は、アイヌ語で大平原を意味する「ポロヌプ」がルーツだが、フィンランド語でトナカイは「ポロ」。両者はずっと前から結ばれていたのか。多くの恵みをもたらしてくれるトナカイはやはり町のシンボルだ。
◇幌延町 宗谷管内に位置し、北緯45度線上にある。人口は2116人(10月末現在)。1899年(明治32年)に入植が始まり、昭和30年代以降、乳牛など酪農が盛んに。町西部の海岸線沿いに隣の豊富町にもまたがるサロベツ湿原が広がる。東京ドーム約1400個分の広さを誇り、1974年に利尻島・礼文島とともに日本最北の国立公園「利尻礼文サロベツ国立公園」に指定されている。
町内を走るJR宗谷線の糠南駅で毎年、盛大なクリスマスパーティーが行われている。糠南駅は一日の平均乗降客数(平日)が1人未満の無人駅で、板張りのホームと物置小屋を利用した待合室という簡素な造り。人里離れたロケーションから「秘境駅」とも呼ばれる。
駅の存続を危ぶまれる中、道外の男性が発起人となり、2015年に“クリパ”がスタート。極寒ながら全国から数十人規模の鉄道ファンが駅に集結する。町民も地元の料理を振る舞うなど地域活性化に一役買うイベントになっている。「年々、お客さんが増えていて、今後もまだ増えそうです」(町産業建設課)。今年はクリスマスイブの24日に予定されている。