「救世主」を名乗っていた男は、自身の本性をひた隠しにした-。中学3年の少女に性的暴行を加えたとして不同意性交などの容疑で神奈川県警に逮捕された「一般社団法人浄霊ヒーリング協会」代表理事の関伸太郎容疑者(49)が、逮捕直前に団体の会員らに向けてメッセージを送っていたことがわかった。また、関容疑者は緊急オンライン会議を開き、団体の解散を宣言。動画配信サイト「YouTube」にも解散の経緯を説明する動画を投稿していた。
捜査の手が間近に迫る中で発したシャバでの最後の言葉。そこから浮かび上がるのは、「自己保身」とカネに汲々とする男の姿だった。「今後のことについてみなさんにお伝えしたいことがあります」関容疑者が代表理事を務める「一般社団法人浄霊ヒーリング協会」の会員に向け、こんな連絡が届いたのは12月10日のことだった。団体の関係者がこう明かす。「日曜日の夜のことです。ズーム会議を開くと連絡を受け、一体何があったのか、と慌ててオンライン会議に参加しました。そこでいきなり、団体の解散が告げられたのです」
ZOOMで解散を宣言した関容疑者
関容疑者が神奈川県警に逮捕されたのは、この会議から3日後の12月13日。その日には、インスタグラムやX(旧ツイッター)といったSNSのアカウント削除や団体のホームページを閉鎖するなど、インターネット上から自身の痕跡を消すような動きもみせた。会員向けの緊急オンライン会議は、まさに会員に向けた最後の弁明の場だったわけだが、そこでは何が語られていたのか。以下にその全容を公開する。「じゃ、最初からね、お伝えしますね。まず、あの~、浄霊ヒーリング協会がですね、今、霊感商法で訴えかけられているので…、一旦、明主様の身を護るためにも、みんなのためにも、今すぐ解散、廃業をしないと、皆さんがね、一生懸命、浄霊やペンダントをお伝えした人たちまでもが加害者という立場になってしまう可能性があるんですね」会議の冒頭でいきなり「解散」「廃業」を宣言した関容疑者。その理由として挙げたのが、「霊感商法で訴えかけられている」という主張である。関容疑者は、団体内での信仰の対象となっている「明主様」、さらには会員らを「護るため」の措置としているが、自身が女子中学生に性的暴行を加えたことについては一切触れなかったという。
関容疑者はさらにこう続ける。「このまま活動を続けていくと、皆さんや、皆さんのご家族にもご迷惑をおかけしてしまう恐れがあるため、今月に解散して、浄霊協会を廃業届を出すということですね。ま、ここにいらっしゃる方々は、一生懸命、神様研修、ダンスや歌やさまざまな練習をして、発表会を楽しみにしていた人たちもたくさんいると思うんですけども、神様研修も一旦、今回は、ちょっとね、なしになる。皆さんが一生懸命がんばって、ここにいる全員の方々がね、ものすごく、心を込めて練習をしていたんですけれども、ちょっと、そういう結果になってしまった」
ステージで熱弁する関容疑者(本人SNSより)
関容疑者が代表理事を務める団体は各地で、「神様研修」と称するセミナーを開催していた。そこでは、集まった会員に対して「メシア代行」と称する自身の霊的な力を誇示した「浄霊」などの行為を行い、霊的な効果があるとしてペンダントなどのグッズを販売していたという。今回、被害に遭ったとされる少女もそうした関容疑者の〝霊的能力〟に引かれた母とともに会員になったひとりだった。また、関容疑者は、「浄霊」をうたう団体のほかに「みろくてらす」なる会社の代表も務めていた。この健康食品や美容商材、健康器具などを手掛ける会社では実業家然と振る舞っていたが、こちらも逃げるように“店じまい”をはじめた格好だ。件のオンライン会議では、こんな弁明もしていた。「みろくてらすの代表は、私は降りるということですね。株式会社みろくてらすは、私はもうやらない、ということですね。そして、みろくファーマーズの代表も変えて。農業をできる方へね、していく(任せていく)ということですね。そして、グループLINEも必要がないので閉じていく。なので、みろくスクールも中止、神様講座もしない、っていうことなんですよ。そして、これは皆さんの、安全とかそういったものを考慮しての決断…ですので、ご了承いただけたらと思っています。3年間、私はね、この協会を作ろうと思って作ったのではなくて、浄霊の奇跡が広がって、どんどん人が増えていったわけですね。なので、こうなったのも、やっぱり、ま、仕方がないかな。ただし浄霊はね、これは各個人で出来るので、それぞれ自分でもやってもいいですし、人とね(会員同士)、交換浄霊したり、ご神体がある方は、おうちでお祈りされたり、各出張所もありますので、でも浄霊協会自体は、もうなくなる。浄霊協会は存在しなくても、光は出ますんでね、浄霊のね。ま、それは各個人で、それぞれが活動していく… ということですね」
事実上の支部となっていた「スクエア」で関容疑者から講話を受ける団体の会員。スクエアは東京や大阪、名古屋、沖縄など各地にあり、多くがタワーマンションの一室だった
そして、関容疑者の本性があらわになったのは、自身が会員らから集めたカネに言及した部分である。「さまざまな処理にね、結構お金がかかるので、ま、今ある資金はね、もうマイナスになって、お金がもう続かないので、廃業するため、返金対応はできかねるんですね」
関容疑者(本人SNS)より)
関容疑者はその後、逮捕のXデーに備えて、YouTubeでも会員への呼びかけを行っていた。オンライン会議で明かした団体の解散の経緯などについて触れた一方、こんな言葉も残している。「今までですね、うまくいきすぎたんですね、この3年間。浄霊の奇跡で、どんどん人がよくなっていって、救われていって、いろんな人たちが感謝の想いが結集して、スクエア(支部)がどんどん発展していき、人が増えていき、子どもも含めると2000名以上の方々が携わっていただいて。ま、うまくいきすぎて、私がね、過信していたのかなって。慢心して、過信して、自分自身が心を失っていってたんじゃないかというように思うんですね」最後まで欲望のままに少女を手に掛けたという事件の真相を明かすことはなかった関容疑者。自らを信じ、ついてきた人々に見せた素顔は、「救世主」とはほど遠い姿だった。さらに関容疑者は団体メンバーとのオンライン会議の終わり際、ある言葉をつぶやいていた。「一厘(いちりん)の御霊(みたま)…」関容疑者が以前に身を置いていた宗教団体の教義で、安定的な心理状態などを示す言葉なのだという。暗転する身の上を嘆き、救世主を名乗ってきた男は最後は神に救いを求めたのだろうか。