所要時間は9時間! 北海道唯一の“夜行だけ”高速バスに乗ってみた 「満席も珍しくない」そのメリットとは?

北海道には、「往復とも夜行便のみ」という路線がただ一つ存在します。今回、北海道の広さを実感できるこの路線に乗車し、どのように利用されているのかをチェックしてみました。
札幌を起点として、放射状に高速バス網が張り巡らされている北海道に、「往復とも夜行便のみ」という路線がただ一つ存在します。それが、札幌市と根室市を結ぶ「オーロラ号」で、札幌市の北都交通と根室市の根室交通により共同運行されています。今回、北海道の広さを実感できるこの路線に乗車し、どのように利用されているのかをチェックしてみました。
所要時間は9時間! 北海道唯一の“夜行だけ”高速バスに乗って…の画像はこちら >>オーロラ号は駅前ターミナルの1番乗り場に入線。男の子は夜のバスターミナルに興奮気味だった。(水野二千翔撮影)
札幌発の便は、札幌駅から市営地下鉄で10分ほど離れた大通バスセンターを起点とし、所要時間は8時間55分。一方、根室発は根室駅併設の駅前ターミナルを出発し、札幌駅前とを結びます。所要時間は9時間10分です。時間はかかりますが、むしろ睡眠がしっかりとれるとも考えられます。運賃は片道8200円、往復割引が1万4800円となっています。
以前のオーロラ号には札幌~根室間を直行する便が設けられていましたが、現在は途中、中標津(なかしべつ)町と別海町を経由する便のみが運行されています。また、水曜日、金曜日、日曜日のみの運行になっている点も注意が必要です。
今回は2025年1月下旬、根室を水曜日に出発するオーロラ号に乗車しました。20時30分ごろに駅前ターミナルに向かうと、根室駅には当分列車の発着がなく、周囲の店舗もすでに営業を終えていたため、駅前ターミナルの明るさが一際目立ちます。構内の観光案内所や物産販売店も閉まっていますが、待合室には暖房がかけられ、冷え冷えする外から入ってくると温かさにホッとします。
待合室では若い女性が幼い男の子を含む家族とともにバスを待っていました。「こんな小さな子も乗るほど人気」というのは早計で、20時35分ごろにバスが駅前ターミナル1番線に入線し、女性が乗り込むと、男の子と家族は手を振って帰っていきました。駅前ターミナルからはこのほかにもう1名、女性が乗車しました。
定刻20時50分に出発したオーロラ号は、国道44号を西進して最初の停留所がある厚床(あっとこ)駅前へ。この日は乗車がなく、バスは進路を北に取り、国道243号を走ります。
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前扉上部にはLED式行先表示器を設置(水野二千翔撮影)
客室のカーテンは乗車時にすでに閉じられていましたが、少し開けて外を見てみると、周囲は闇に包まれています。時折うっすらと見える看板から、きっと周囲は牧場が広がっているのだろうと想像することができます。窓からの冷気が肌を刺すものの、カーテンを閉じればシャットアウトされるので、車内は快適な温度が保たれています。
また、車内は3列シートで、座席の間に通路がある1+1+1列配置となっています。シート同士の間にはカーテンが設置され、プライバイシーを保てるのもうれしいポイントです。
真っ暗な1本道を行くオーロラ号ですが、遠くに見えた光が徐々に近づき、その中に飛び込む機会が2回ほどあります。それは別海町、中標津町に入るとき。街の灯りにホッとするという心情は、道が煌々と照らされる高速道路を走る夜行バスでは味わえない感覚でした。
「別海町交流館ぷらと」から女性1名が乗車。次の停留所となった「中標津トーヨーグランドホテル」では7人乗車。なかには小学生ぐらいの少年も見られました。この日は筆者を含めて10人が乗車、乗車率は約40%となりましたが、「金曜日は満席になることも珍しくないですよ」と、根室交通の乗務員さんは話します。
定刻22時40分に中標津を出発すると、「おやすみ放送」が済んで10分ほどで車内は消灯。バスはこのあと国道272号を経由して、本別町で札幌発の便と落ち合い、列車交換ならぬ乗務員“交換”が行われます。
つまり、札幌行きのバスに乗車していた根室交通の乗務員さんが根室行きに乗り換える一方、根室行きの北都交通の乗務員さんは筆者が乗る札幌行きに乗り換えて、それぞれの町へ戻るという運用が行われているのです。
翌朝は5時頃に目が覚めました。途中何度か目が覚めたものの、背もたれを完全に倒せたので、しっかり睡眠を取ることができました。
地図アプリを開くと札幌市内に入っていると確認でき、カーテンを少し開けて窓の外を見れば、高速道路上の様子。昨晩までの暗闇ではなくオレンジ色の照明が光ります。そして猛吹雪と積雪を目撃することになりました。
北海道のなかで比較的雪が少ない地域である道東では見ることのなかった桁違いの雪の量に、一晩かけて長い距離を移動してきたのだと実感。やがて車内にガサガサという音が目立ちはじめ、ほかの乗客も起き出しました。
札幌市内の最初の停留所である大谷地バスターミナルの到着時刻は定刻5時25分ですが、雪のため15分ほど遅延して到着。大通バスセンターで4人が下車し、終点札幌駅前には5分遅れの6時5分に着きました。
道路では低速の除雪車が作業していたり、雪で見通しが効きづらかったりと複雑な状況でしたが、ハンドルを握らない乗務員さんが周囲の状況確認を行ってドライバーに共有するなど、乗務員2人体制の強みを活かして安全に配慮していました。大雪の中を安全運転でこの遅れにとどめている乗務員さんの技術に頭が下がる思いです。札幌まで、快適な乗車を楽しむことができました。
2025年2月現在、札幌駅から根室駅に向かうにはオーロラ号のほかに、(1) JR特急「おおぞら」~釧路で根室本線(花咲線)に乗り換える鉄道ルート、(2)鉄道やバス~新千歳空港または丘珠空港~根室中標津空港~連絡バスという旅客機ルートが考えられます。
(1)は最短で6時間30分ほど、長いと8時間に迫る所要時間がかかり、きっぷ代は1万1970円(乗車券、指定席特急券)です。(2)は飛行時間こそ55分と短いですが、札幌、根室の各駅~空港間の移動に合計3時間ほどかかるため、トータルの所要時間は約4時間。運賃は航空券の予約時期で振れ幅がありますが、最安で約1万3000円、最高で約3万4000円といったところ。これと別に各空港までのバスや鉄道の運賃がかかります。
オーロラ号の運賃は比較的リーズナブルで、「乗り換えなし」で移動できることから、札幌~根室間では有力な選択肢の一つとなっているのです。

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