コメ作りどうなる 田んぼも担い手も減り続ける現実 “減反”の見直しは? 【チャント!大石が聞く】

(大石邦彦アンカーマン:以下大石)「愛知県安城市にやってきました。この辺りもずっと向こうまで田んぼが広がっています」
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安城市の農家、畔栁さんはおよそ30人の地主から土地を借りて、コメや麦などを育てています。
(大石)「お米は去年(2024年)どれぐらいの量ができましたか?」(農家 畔栁真さん)「延べ面積25ヘクタールで、約125トンです」(大石)「ものすごい量だと思うんですけど、いま米はありますか?」
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2025年3月12日の時点で倉庫には…
(大石)「お米が紙袋に積み上げられています。これは全部でどれぐらいありますか?」(農家 畔栁真さん)「大体ここに40俵(2400キロ)分ですね」(大石)「これはお米が余っているわけではない?」(農家 畔栁真さん)「これはあくまで予約したお客様の1年分のお米です」
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(大石)「農水大臣が『お米はどこかにあるんじゃないか』と言っていましたが、ないですか?」(農家 畔栁真さん)「ないですね」
余っているコメは、やはりありません。
そして、もっと大きな規模でコメづくりをしている弥富市の農家では、「別の問題」も見えてきます。
(大石)「この写真は何ですか?」(鍋八農産 八木輝治 代表)「これは古い物になりますが、うちが米や小麦など何かを作付けしている田んぼの目印です」
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この法人が管理する農地は約200ヘクタール。バンテリンドーム40個分、モリコロパークより少し広い面積で、その4分の3でコメ作りを行っています。
(鍋八農産 八木輝治 代表)「僕たちは農家がリタイアされた土地を借りて、代わりに田んぼの管理をしている」(大石)「地主さんは全部で何人ぐらいいるのですか?」(鍋八農産 八木輝治 代表)「全部入れると300人近いです」
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ここの農地の広さは農業を続けられない人がそれだけ増えていることの現れでもあります。
コメ倉庫には…(大石)「すごい、大きな袋が山積み。これだけの量のお米をこの時期見たことがないです」(鍋八農産 八木輝治 代表)「うちの契約している所では、これでも多分足らないですね。毎年まだここが満タンになっているぐらいですね」
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(大石)「急に米がなくなり高くなっている状況をどう見ていますか?」(鍋八農産 八木輝治 代表)「めちゃめちゃ不安ですね。過去ずっと『余っている余っている』だったのが、ここ1~2年で『ない』というのはなぜだろうと・・・」
これは全国の田んぼの面積。この50年近く減り続けています。特に愛知県では半分以下になりました。
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この背景にあるのが国が長年続けてきた「減反政策」です。昭和40年代のコメあまりをきっかけに農地の削減や、生産量の抑制を国主導で行ったのが減反です。2018年、減反は制度上廃止されましたが、国は今も毎年生産目標の参考情報を農家に出し、コメ作りはそれをもとに行われています。
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さらに国は小麦や家畜用飼料への転作に交付金も出していて、そこに毎年3000億円余りがつぎ込まれています。コメ作りを減らす減反は、実質的にいまも続いているのです。
3月11日、江藤農水大臣は。(江藤拓 農林水産大臣)「基本的に申し上げておきたいのが、米の生産は今でも自由です。各地の再生協議会や農家の方々が、自主的な判断で生産している」減反はしていないと強調しますが…
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(鍋八農産 八木輝治 代表)「いやいや現場はしていますよ。(僕たちは)選んでいるので、好き勝手やっている感覚はしますけど、でもお金が一番もらえるところを考えると、国がやりたい方向に向かっているのではないか」(大石)「国が決めたレールにいつの間にか乗ってしまっているということ?」(鍋八農産 八木輝治 代表)「国が決めた金額じゃないですか、交付金は。ある意味(国に)コントロールされているような気がしますね」
3月14日。国は放出する備蓄米の落札価格を発表しました。(江藤拓 農林水産大臣)「落札数量は14万1796トン。落札価格の平均は(玄米)60キロあたり税抜きで2万1217円でございます」
卸価格より少しは安くなりましたが、去年に比べればまだかなり高い水準。何より14万トンという量は、流通量全体のわずか2パーセントに過ぎず、コメが安くなる影響はあまり期待できません。
そしてもう一つ、こんな発言も。
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(江藤拓 農林水産大臣)「食糧安全保障を確保するためには農地をしっかり保全することが大事。今までの水活(水田活用の交付金)は(田んぼを)畑地化することによって支援するという内容だったが、今回の教訓を受けて国民への(米の)供給力は“水田”としてさらに多く持っておいた方が安全であろうと。その方が国民も安心されると私は思います」
今回のコメ騒動の反省から、これまでの転作重視からコメ作り重視への方針転換を大臣が自ら示したのです。
ではコメ作りは増やせるのか。安城市の農家、畔柳さんはこう話します。(大石)「このあたりを工事していますが、元々はどんな場所だったのですか?」(農家 畔栁真さん)「元々は田んぼです。ここはほとんど僕が預かっていました」(大石)「ここはどうなるのですか?」(農家 畔栁真さん)「造成工事が始まって物流倉庫になります。田んぼとしての(土地の)相対価格よりもはるかに開発するときの土地の価値は跳ね上がりますので、その時にやっぱり地主の判断で『売った方が得』ということではないか」
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(大石)「もう作れなくなっている現状もあるのでしょうか?」(農家 畔栁真さん)「そうですね、だって僕は作りたいですもんね」
そして、弥富市の八木輝治(鍋八農産)さんも…(鍋八農産 八木輝治 代表)「地権者も、田んぼがあってもお荷物だからと言っている人が多いので、『(買い手が)あったら紹介してください』と言われます。そんなに(土地を)買うわけにはいかないのでなかなか難しいです」
JAも強い危機感を抱いています。
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(JAあいち中央 営農企画部 岡田昌之さん)「一番困るのは農家です。耕作する土地がなくなるということは、経営的にリスクが発生するので、いまある農地は全て現状のまま続けていただきたいというのがJAの考えです」
国を上げてコメ作りを抑制してきた中、担い手も水田も減り続けている現実。日本のコメ作りを見直すときに来ているのかもしれません。

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