キリスト教プロテスタント系私立大学・北星学園大学(札幌市厚別区)の非常勤講師ら24人が、講義の時間が増えたにも拘わらず賃上げがなされないとして労働組合を結成。さらなる団体交渉を行う構えも見せている。
労組結成の背景は「講義の時間増加」が遠因?北星学園大学は1887年、北海道尋常師範学校の外国人教師として採用されたアメリカの宣教師、サラ・C・スミスが女学校と幼稚園を開設したのが起源。1951年に学校法人北星学園として認可が下り、同年には女子短期大学も開学した。62年には大学も開学し、2年後に現在の大学所在地に移転している。
2022年には開学60周年を迎えたが、このような歴史を紡いできた大学でいったい何が起きているのか。労働組合が結成された背景には、大学の講義時間内容が変わったことが関係しているという。
24年11月、大学側は「2025年度からの100分授業の導入について」と題された文書を公開した。大学によると、これまで1講義の時間は90分で15週間を半期としていたが、講義の時間を10分増やして1講義100分とし、それを半期14週に変更するという。これにより単位を取得するために必要なすべての授業時間数などを確保でき、ゆとりある教務日程を設定できるとしている。
大学側は重ねて、以下のような教育上の効果などがあると強調する。
(1)大学は前期・後期制。それぞれの期間が15週から14週になり、祝日の授業実施を従来よりも減らすことができる
(2)授業期間が短縮された分、インターンシップやボランティア活動などに参加しやすくなることを見込んでいる
(3)授業時間が10分長くなることで、実技系科目の実施や授業内でのディスカッションの積み重ね、アクティブ・ラーニングの実施が容易になる
「弱い立場を利用された」 労組側はさらなる団体交渉を予定もしかし、この方針に反対する一部の非常勤講師ら24人が労働組合「大学非常勤講師ユニオン」を結成、札幌市内で3月4日に結成大会を開いた。大会に出席した講師らは「(非常勤講師という)弱い立場を利用された気になった」などと大学側の非情さを訴えていた。
本稿記者の取材にユニオン側の担当者は、次のようにコメントした。
「ユニオンとしては大学側に1講義あたりの賃金増額を求めている。(今回、問題だと感じているのは、講義の回数が1回減ることになるため)これまで支払われていた講義1回分の賃金約1万数円前後が実質的に値下げになることだ。講義の回数は減るが、総授業時間は半期で50分増えることになるにも拘わらず、賃金は何も変わらない。
(ユニオンの)24人の中にはフルタイムの職員もおり、労組の活動に賛同していると聞いている。労組を構成しているのは現在24人だが、連絡をもらっている職員らもいる」
今後については、「3月の後半に団体交渉をもう1回予定している。新年度が始まる前にはできれば交渉の決着をつけたいとは考えている。ただ今後がどうなるのかは大学次第だ」(同前)と強調した。
一方で、大学側は「ユニオン側の動きは把握しており、現在も交渉中だ。100分・14週の授業は2年ほど前から検討してきた。特に近年、夏季の気温上昇が問題となっており、大学の一部にはエアコンが設置されていない教室もある。体調を崩す学生や講師もおり、熱中症対策の一環として導入した」と本稿記者の取材に回答した。
賃金に関する労働争議は増加、過去にもあった大学でのストライキ事例本件に限らず、全国の大学では過去にも労働条件の対立が尾を引いた事例がある。昨年11月には、東海大学(東京都渋谷区)の教職員組合が非常勤教員らのベースアップを求めてストライキを通告。
桜美林大学(東京都町田市)でも昨年12月、「賃金のベースアップが実現しない」として大学等教職員組合桜美林分会が15分間のストライキを実施する考えを示した。同大学では、2006年以降の賃金ベースアップが実現しておらず、19年度からは北星学園大学と同じく授業時間を10分追加して90分から100分に増やした背景があった。
ただし、10分増えた分の賃金が支払われたのは19年度のみで、大学等教職員組合桜美林分会は「ベースアップどころか、賃下げ状態が続いている」と大学側を批判。「授業をしないことは(講義を)履修している学生の皆さんに対して心苦しい気持ち。(一部略)しかし大学から誠意のある回答が得られない中、ほかに方法がありませんでした」(同)などと理解を求めていた。なお、両大学のストライキはどちらも昨年12月に行われた 。
厚生労働省によると、23年度の賃金に関する労働争議件数は157件と主要要求事項別では最多となり、対前年度比で18件増加。そのうち『賃金額の改定』が61件と最多で、『賃金制度』が20件などとなっている状況もある。
教育機関の従事者として複雑な思いを抱く関係者もいるようで、 取材の中で、ユニオン側の担当者が「本当はこのような活動をしたくはない」とこぼしていたことが印象的だった。北星学園大学は筆者の卒業校でもあり、双方が納得する形で事態が沈静化することを祈りたい。