「学生バイトより稼げない」国産アサリが消滅の危機 産地偽装問題から3年 新たな偽装も

3年前、CBCの取材で明らかになった熊本県産アサリの産地偽装問題。その後、国産アサリは減少の一途をたどり、深刻な状況に陥っています。そして偽装は今も続いていました。
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愛知県田原市。全国一のアサリの産地に異変が起きています。漁師歴35年の細田光則さんは“過去最悪の不漁”だと話します。
細田光則さん「(アサリは)一粒もない。これツメタガイに食べられて。これも空。これも空。全部空だね。大不漁でアサリ漁師が存続の危機ぐらいの感じ」
アサリが旬を迎える今からの時期は、地元漁師にとって一番の書き入れ時。しかし今年はアサリがとれず、漁に出られない状況が続いています。
CBC
細田光則さん「たぶん学生のバイトより稼げないという状況にまで追い込まれていますので。年収からすると(いいときの)5分の1とか6分の1とか」
愛知のアサリは年々減っていますが、県の水産試験場によると、おととしの豪雨で三河湾にヘドロが堆積したことが追い打ちをかけたといいます。
先行きが見えない中、細田さんは若手漁師らとともに新たな取り組みを始めました。カキの養殖です。
川口拓馬さん「カキは(三河湾に)たくさんあったんですけど、逆にありすぎて誰もとらなかった。それももったいないなと。アサリとか貝類全般がとれなくなっている状況なので、何か新しく始めないとまずいなと」
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広い砂地がないと育たないアサリに比べ、同じ貝でも養殖しやすいカキに活路を見いだし、地元での販売に向け試作を重ねています。
細田光則さん「(アサリの)漁獲量が減っている中で、とるものを変えたり養殖業に移行していったりしないと、とてもじゃないけど漁師がもちませんよね」
CBC
アサリの減少は愛知だけに限ったことではありません。国内の漁獲量は1980年代以降、急激に減り続けています。詳しい原因は分かっていませんが、温暖化などで海の環境が大きく変わったためと考えられています。
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激減する国産アサリが全国的に注目を集めたのは3年前。CBCの調査報道で発覚した熊本県産アサリの大規模な産地偽装問題です。国産のほとんどを占めていた熊本県産アサリは、実は中国や韓国からの輸入品を国産と偽って販売していたものだったのです。
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この報道を受けて、国は産地表示のルールを厳格化。熊本県産のニセ国産アサリが消えたことで本物の国産の希少価値が上がり高級食材になった一方、減少には歯止めがかからず、このままでは絶滅危惧種になりかねないとの指摘もあります。
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産地偽装問題があった熊本で、長年国産にこだわって漁を続けてきた宮田直樹さん。
宮田直樹さん「保護した網の中をとっているから、とれているように見えるんですけど、実際は去年の25~30%ぐらい」
熊本の国産アサリ復活を目指し漁場の再生に取り組んでいますが、猛暑や食害でアサリが大量に死んでいるといいます。
宮田直樹さん「自分たちの漁場は7トンぐらいデータ的には死滅してるんですけど、隣の地区は80~90トン死滅している」
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一方、せめて食害からは守ろうという研究も進んでいます。
熊本県立大学 小森田智大准教授「クロダイが作った穴の面積や数を測っています」
食害を与えるアサリの天敵、クロダイ。アサリを食べると海底の砂地に、こぶし大ほどのくぼみができます。
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熊本県立大学の小森田准教授らのグループは穴の場所や大きさを測定し、広い干潟のどこでどのくらい食害が起きているかを調べています。
また、調査の結果、最近はクロダイのほかにエイやフグなど、さまざまな種類の魚がアサリを食べていることも分かりました。
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宮田さんはこうした情報を参考に、アサリを保護するために海底に敷く網を増やすなど対策に取り組んでいます。
宮田直樹さん「稚貝の時点では、すごい数がいるのは確認はできているので。あとはどこまで被覆網で保護して育てていくか」
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しかし去年10月、こうした努力が無駄になりかねない事態が起きました。佐賀県の水産会社が去年3月から7月にかけて、中国産や韓国産のアサリを熊本産に偽装していたことが発覚。産地偽装は、今も続いていたのです。
水産会社の代表者「意識が低かった。それだけのことです」
水産会社の代表者は取材に対し「中国産アサリが売れず、やってはいけないと分かっていたが偽装に手を染めた」と話しました。
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宮田直樹さん「結局は“熊本のアサリ”と一括りにされて、最終的には漁業者だったり関係者に害がくるので非常に迷惑な話なんですよね。漁師たちは一生懸命やっているので、そこはしっかり見てもらいたい」
昔から日本人にとって、ごく身近な食材だったアサリ。しかしそのありようは、大きく変わりつつあります。
CBCテレビ「チャント!」3月6日放送より

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