オンラインカジノを巡る騒動が続いている。
今年1月、2021年東京五輪銅メダリストの卓球・丹羽孝希選手が単純賭博容疑で書類送検されたと報じられると(2月20日付で罰金10万円の略式命令、千葉簡裁)、2月には吉本興業に所属するM-1チャンピオン「令和ロマン」の高比良くるまさんら芸人約10人がオンラインカジノで賭博をした疑いによって警視庁から任意聴取を受けていたことが発覚。
さらに日本野球機構(NPB)が調査を実施した結果、2月27日までに7球団14人の選手ら球団関係者によるオンラインカジノの利用が判明したという。
さまざまな業界に波紋が広がる中、総務省は今後、海外オンラインカジノサイトとの接続を遮断する「ブロッキング」を含め、有識者を交えて対策を検討していくとしているが、現時点では依然として日本から海外オンラインカジノサイトへのアクセスが可能となっている。
ラジオ局やテレビ局で「無料版」のCM放送 国内では、競馬・競輪・競艇などの公営ギャンブル以外の賭博は刑法で禁じられており、海外事業者が運営しているカジノサイトでも国内から接続して賭博をすれば違法となる。
ただ、前出の高比良さんは、海外オンラインカジノサイトを利用した経緯について、自身のYouTubeチャンネルで「広告があがっていて、違法ではないという認識だった」と釈明。
事実、海外オンラインカジノを巡っては、ネット番組やラジオなどさまざまなメディアで広告が流れていた。
このうちニッポン放送は、オンラインカジノの広告を放送してきた“基準”について、次のように説明(2月18日)。
「弊社は、国内外問わず『有料オンラインカジノ』の広告は放送の実績がありませんが、『カジノ無料版』などのタイトルで運営されている無料オンラインゲームの広告については、弊社考査基準内で放送の実績があります。
そして、弊社の考査基準では、オンラインカジノを運営している法人の広告は排除し、あくまでも無料オンラインゲームとしての広告のみとし、さらに無料オンラインゲームのWEBページから有料カジノサイトに誘導しないものであること、『スロット』などギャンブルを想起させるゲームを例に出さないこと等を条件として定めていました」
そのうえで、「このたび、弊社のCMから『海外の有料オンラインカジノにたどり着いた人もいるかもしれない』等のご指摘をいただいたことから、より万全を期すために、WEBやSNSの過去投稿等を削除しております。今後は、考査基準をより厳格化して運用してまいります」と述べた。
また、デイリー新潮が2月28日に配信した記事によると、民放5社のうち、日本テレビを除く4社が同紙の質問に回答。テレビ東京、テレビ朝日、TBSの3社は地上波やBS放送で「無料版」の広告を過去に流していたことを認めたという。
なお、オンラインカジノの広告はメディア媒体でのCM放送だけでなく、スポーツチームやイベントのスポンサーとしても出稿されてきた。
たとえば、サッカーのJ2・コンサドーレ札幌では2022年シーズンから海外オンラインカジノサイト「カジノレオ」の無料版にあたる「レオファン」とスポンサー契約を締結。ユニフォームの背中部分にはレオファンのロゴが描かれていた。
コンサドーレ札幌は弁護士JPニュース編集部の取材に対し、この契約について、「Jリーグとも確認しながら進めたもので、無料オンラインゲームと捉えている」とコメント。「現在は見直しを含めて検討しており、先方と協議中」とした。
広告・スポンサー契約に違法性はない? 海外オンラインカジノの「無料版」の広告を流したり、スポンサー契約を結ぶことに、法的な問題はないのだろうか。
元大阪府警の行政職員で、刑事事件に詳しい堀田和希弁護士は以下のように解説する。
「『無料版』であれば、お金を賭けずにカジノゲームをしているだけに過ぎませんので、『偶然の勝敗によって、財物や財産上の利益の得喪を2人以上の者が争う行為』、すなわち賭博行為には当たらず、広告を流しても直ちに違法とはならないでしょう。
しかし、『無料版』では広告主である海外オンラインカジノの運営会社が儲からないので、『無料版』を入り口に、違法な『有料版』へと誘導している可能性が高いです。
そのため、海外オンラインカジノの運営会社と契約を結んでいる会社が、スポンサーが『無料版』から『有料版』へ積極的に誘導していることを認識していた場合などは、賭博場開張等図利(とり)罪の幇助犯に当たる可能性があります」(堀田弁護士)
オンラインカジノ利用の過去「すぐにバレる」 複数の新聞社によると、警察庁の統計では、昨年279人(暫定値)がオンラインカジノの利用で摘発されたといい、統計を取り始めてから過去最多になったという。
繰り返しになるが、オンラインカジノで金銭を賭ける行為は刑法上の犯罪である。広告が世に出ているからといって、正当化されるものではない。
これまでにオンラインカジノで賭博をしたことがあるという人は、どうすればよいのか。
堀田弁護士に聞いたところ、「可能な限り速やかに自首すべき」とのアドバイスが返ってきた。
「オンラインカジノの場合、クレジットカードなどを利用して賭けることが多いので、取引記録が残り、警察が捜査すれば、すぐにオンラインカジノを利用していたことがバレてしまいます。
刑を軽くするためにも、自身のオンラインカジノ利用の事実が捜査機関に発覚する前に、弁護士に相談して適切な対応をしていくことが大事です」(堀田弁護士)