「夜行の折り返し便」快適性は? 東京‐大阪で2階建て高速バスの“昼行便”に乗ってみた!

東京~大阪間の移動には様々な乗りものが使えます。旅の面白さと快適性を併せ持っているのが、夜行バスの折り返し昼行便である「グラン昼特急」ではないでしょうか。2階建てバス最前列からの模様を紹介します。
ジェイアールバス関東と西日本ジェイアールバスが東京~大阪間で運行する「昼特急」は、運行の効率化を図りつつ新たな魅力を提供するとして、2001(平成13)年に「東海道昼特急」の名で登場しました。夜行便を折り返しで昼行便にも使用し、安価に両都市間を移動できるようにしたのです。
「夜行の折り返し便」快適性は? 東京‐大阪で2階建て高速バス…の画像はこちら >>ジェイアールバス関東と西日本ジェイアールバスが東京~大阪間で運行する「グラン昼特急」(2025年1月、安藤昌季撮影)
2025年現在は、3列シートの「グラン昼特急」と4列シートの「青春昼特急」を合わせて、東京駅八重洲口~大阪駅JR高速バスターミナル間で4往復、東京駅八重洲口~京都駅中央口間で1往復運行されています。なお4月1日より東京~大阪便が5往復に増便される予定です。
車両は大阪行きが2階建て。旅の面白さと快適性を併せ持つ「グラン昼特急」に2025年1月、乗ってみました。便は東京駅八重洲口を午前7時10分に出発する「グラン昼特急1号」です。
車両はスウェーデン・スカニア製の車両を日本仕様とした「TDX24」。欧州向け車体幅(2.55m)を規格に合うよう2.5mとした日本向けモデルで、「J-InterCityDD」という愛称もあります。車庫での取材時に運転士へ尋ねると、「日本の基準に合わせるために、足回りも調整しています」とのこと。運転席は広々として視界良好でした。
1階の客席は2+2列配置。座席間隔は広めです。枕部分もよいクッションで、2+2列としてはかなり上位でしょう。肘掛けは通路側と座席間にあり、どちらも跳ね上げられます。付帯設備は全席に座席背面の網ポケット、USBポート(車両によってはコンセント)とWi-Fiです。最後尾にはトイレも備わります。
2階は1+1+1列の「グランシート」。枕、レッグレスト、フットレスト、ドリンクホルダー、読書灯、プライベートカーテンが備わり、2階への入口部分にはスリッパも備わります。グランシートはやや硬めの座面。リクライニング角度が大きく、座席形状も無理がありません。1階席との違いは窓側に肘掛けがあるかどうか。しかし窓側の肘掛けはやや窮屈で、中央席の方が快適です。
東京駅八重洲口のデジタルサイネージには、「グラン昼特急1号」は満席との表示がありました。バスは発車20分前に到着し、運転士がスマートフォンのQRコードで改札しました。
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バスタ新宿(2025年1月、安藤昌季撮影)
東京駅での乗車率は30%ほど。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2階の最前列に座りました。「1A」は隣の「1B」と近く出入りが大変で、「1B」は左右が見にくいので、「1C」が1人旅で最善です。夜行と違い、カーテンが開けられた「昼特急」は解放感があります。
7時10分、定刻で出発。乗務員がシートベルトの着用を乗客一人ひとりに直接呼びかけていました。最前列なので、小刻みに揺れる独特の振動感があります。1Cは目の前に時計があり足元も広いので、利便性でもよい座席です。
バスはバスタ新宿へ向かいます。一般道を経由し7時39分に到着。ここでほぼ満席となり、車内放送で「満席なので空いている座席や通路に物を置くのはおやめください」と流れました。なお、1Bに咳こむ男性が座ったのですが、男性はプライベートカーテンを展開して周囲に配慮。こういう使い方もあるのかと思いました。高速道路へ入ったのは8時ちょうどでした。
東名向ヶ丘、東名江田とこまめに停車し、東名江田では1人が乗車しました。続く東名大和、東名綾瀬での乗車はなし。東名高速は軽く渋滞していました。
9時20分ごろから、車窓の右側(C席側)に富士山が見え始めました。およそ10分後の9時31分、足柄パーキングエリアで休憩。1階に出発時刻が掲示され、発車は9時50分です。
9時57分、いったん東名高速を降りて東名御殿場に停車しました。定刻だと9時43分なので、14分遅れです。バスは満席のはずですが、乗り遅れたのか2Cなどに空席が確認できました。
御殿場を出るとほどなく120km/h区間ですが、100km/h走行が続きます。バスは「295/80R22.5 153/150」というタイヤを付けており、調べると100km/h対応。120km/hは出せないようです。
先が長いので、夜行バス用座席の寝心地を体験することに。2Cに乗客がいないのでリクライニングすると、寝心地も良好でした。
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道の駅「もっくる新城」(2025年1月、安藤昌季撮影)
11時44分、2分遅れで休憩場所の「道の駅もっくる新城」に到着。車内放送で「休憩地で東京行きバスと並びますので、お間違えがないように」と案内がありました。ここでは名物「とん鶏汁」を購入。野菜たっぷりの汁物で、白髪ねぎがよいアクセントでした。
戻ると、2階建てバス2台が並んでおり迫力がありました。もう1台は東京行き「青春昼特急4号」です。こちらは2階も2+2列の定員重視車ですが、ほぼ満席に見えました。
「グラン昼特急1号」の車内2階に戻ると、大半の乗客がプライベートカーテンを引き休んでいました。乗務員が乗車を確かめ出発。ほどなく伊勢湾岸自動車道で名古屋港を横断すると、車窓にリニア・鉄道館やレゴランド、ナガシマスパーランドが見えました。
13時52分、甲南パーキングエリアで休憩。忍者が描かれた自販機が目を楽しませてくれます。
14時45分、定刻より2分早く京都深草に停車。徒歩圏内に近鉄京都線の竹田駅、京阪本線の藤森駅があり、京都市内へ便利だからか5人が下車しました。
15時10分。名神吹田を出ると、大阪モノレール、続いて大阪メトロ御堂筋線と並走し、新大阪駅の下をくぐりました。終点の大阪駅JR高速バスターミナルには、定刻より6分早い15時37分着でした。だいぶ回復運転をしたようです。
8時間37分の乗車でも、疲れはほとんどありませんでした。東京~大阪間には様々な移動手段がありますが、あえて昼行の高速バスに乗ることで、楽しいひと時を過ごせました。

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