去年1年間で新潟県内から県外に出た人の数は、転入した人の数を約5800人上回り“転出超過”となっています。人口の流出に歯止めがかからない状況の中、SNSを駆使して新潟をより魅力ある場所にしようと奔走している男性に密着。カギを握るのは若い世代の“リアルな声”です。
豊かな自然や食・産業など、全国に誇りたい文化が多くある新潟。【東京から免許合宿で来た人】「日本酒・お米がおいしいイメージがあって、新潟に来てみたいとずっと思っていた」【長野から来た夫婦】「お酒がおいしいところとか、米どころとか」“米どころ”のイメージは全国に浸透していますが…【長野から来た夫婦】「ほかは?ほか…」より多くの人に魅力を知ってもらうために必要なのが“発信力”です。【長野から来た夫婦】「ネットで見てもらう方法もあるだろうし、発信しないと分からないから」■新潟を発信する男性「悩みは1人が思っていたら1万人思っている」そこで立ち上がったのが、新潟市出身の後藤寛勝さん(30)。SNSや動画投稿サイトなどで配信している『新潟のリアル』というコンテンツで、新潟市の公共交通機関や中心市街地の再開発など新潟の現状を1分で伝えています。【後藤寛勝さん】「僕は議論のハードルを下げたい。誰かが思っている悩みやモヤモヤは一人が思っていたら100人、1000人、1万人思っている」大学卒業後、東京の広告代理店に就職した後藤さん。地方創生事業に携わり、様々な自治体と関わっていましたが、新型コロナの感染拡大でその機会が激減。新潟のために何かできることはないかと県出身者のオンラインコミュニティーを設立し、4年前にUターンしました。しかし…【後藤寛勝さん】「田舎だからこそ、すごくコミュニティーが狭くて、一部の人たちだけで決めていくことが多くて、参加のハードルがすごく高くなっている」
誰でも議論に参加できる空気をつくりたいと、去年11月に始めたのが『新潟のリアル』でした。2月までに123万回再生を記録するなど反響を呼んでいます。制作現場に伺うと…【後藤寛勝さん】「インターンで学生と接することが多いが、優秀な学生さんは大体、都内に就職が決まっている」「学生が卒業後も新潟に留まってくれるにはどうしたらいいのか」という悩みに対する解説動画を制作していました。行政のデータなどを参考にしているため…【後藤寛勝さん】「新潟市における転出・転入数で最も動きがあるのは20~29歳。20~24歳は主に大学卒業の転出が大きく、転出超過数が約1000。一方、15~19歳は主に大学入学時にむしろ転入者が多くなっている」難しい表現が多いため、実際に声に出しながら誰にでも伝わるよう原稿を作成し、1分に収まるよう撮影を行います。
2時間ほどの撮影を終え、息つく間もなく向かったのは、街頭インタビューです。【後藤寛勝さん】「新潟に関するモヤモヤや課題とかもっとこうなったらいいのに、ということある?」【高校生】「みんなで集まる場所がもっと欲しい」【後藤寛勝さん】「今は普段、どこで集まっている?」【高校生】「カラオケとか友達の家とかが多い」春から県内の大学に進学する男性から聞かれたのは「集まる場所が欲しい」という声。さらに…【静岡から来た人】「今、都市の再生のモデル地域を視察しに来た。個人的な趣味で」【後藤寛勝さん】「どうですか、新潟は?」【静岡から来た人】「よく言えば、都会的な設備やインフラが整っているなと感じたが、逆に言えば人口以上の過剰な設備」土木工学を専攻している大学生からは「人口に見合った街づくりをすべきでは」との意見が。【後藤寛勝さん】「(Q.世代が違うが、感じることは?)感じる。若者向けの施策は、市も県もあると思うが、本当に思っていることだからこっちが大事」
こうして課題を聞く背景にあるのは…【後藤寛勝さん】「本当は定住人口が増えたらいい。次は交流人口が増えたらいい。ただ、この関係人口から交流人口にいくまでが難しい」まずは新潟に関わる人口を増やすため、“魅力”よりも“課題”を発信すべきだと後藤さんは考えます。というのも…【後藤寛勝さん】「もしかしたら、東京にいる人で新潟のリアルを見てくれた人が『転職して地元に戻ったらやれるかも』『ここで店出したらいけるかも』ということがすごく大事。役割に気付いてもらえるといいなと思っている。大切な一人だよと」あえて“足りていない部分”を発信することで「自分も地域を盛り上げる役に立てるのでは」と考える人が増えるという発想の転換。一人が抱えているモヤモヤが、よりよい街づくりに一役買うかもしれません。