セグロウリミバエのまん延を防ぐため、植物防疫法に基づく「緊急防除」が4月上旬に開始される。セグロウリミバエが付着した作物は、本島外への出荷が禁止されるという措置である。
徹底した防除で早期根絶を図ると同時に、生産者の不安を取り除く説明と目配りを求めたい。
緊急防除は、農作物に重大な損害を与える病害虫に対し農水相が実施する措置。過去に国内では15の事例があるが、県内では初となる。それだけに農家の驚きは小さくないだろう。
外来種のセグロウリミバエは、ゴーヤーやヘチマのほか、カボチャ、スイカ、トウガンなど主にウリ類に産卵し、ふ化した幼虫が作物を食い荒らしたり、腐らせたりする被害をもたらしている。
昨年3月、県内では21年ぶりに名護市で見つかって以降、確認は北部地域を中心に12市町村に広がる。発生範囲を特定するための調査や殺虫剤散布など対策が講じられてきたが、事態は深刻化しつつある。
緊急防除の対象は本島全域とされ、国の植物防疫官が検査する。
ただ対象となる作物や検査方法、期間などの詳細は決まっていない。移動規制を付着した作物だけとするのか、同じ場所で栽培されたウリ類まで広げるのかも未定という。
丹精込めて育てた作物が出荷できなくなれば、生産者にとっては大きな打撃だ。一斉廃棄となれば、補償を含めた対応の検討も必要となる。
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約30年前まで沖縄はウリミバエの生息地で、県外へのウリ類の出荷は制限されていた。
2021年度の出荷量はゴーヤー5313トン、カボチャ3140トン、トウガン2538トンというから隔世の感がある。
ここまで知られるようになった沖縄野菜や沖縄農業を守るためにも、重要な局面である。
それには防除対策が手薄で拡大の一因となっているとされる家庭菜園での取り組みを強めなければならない。
県は家庭菜園を楽しむ県民に対しウリ科野菜の栽培を控えるよう要請しているが、危機感を共有した上で、市民一人一人の自発的な協力が求められる。
防虫ネットなどの対策が難しいのであれば、いったん栽培をやめるなどの判断を促したい。
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防除強化のため約5億円の補正予算が開会中の県議会で可決された。
県はウリミバエ根絶に使った「不妊虫放飼法」の試験を進めており、6月にも開始する方針という。
ゴーヤーチャンプルーが全国の食卓に並ぶようになったのは、ウリミバエが根絶された1993年以降である。ゴーヤーの収穫量は、この30年で3倍近くに増えた。
ウリミバエ根絶までの関係者の努力や苦労を思えば、セグロウリミバエの拡大をここで何とか食い止めなければならない。
踏ん張りどころだ。