石破首相ホントに言ったの!?「戦車も運べる大型輸送機」の購入 じつは過去に断念も今回は?

共同通信が2月27日に報じたニュースによると、日米首脳会談において、石破首相がアメリカ製大型輸送機の購入に意欲を示したそうです。ただ、候補に挙がった機種は過去、日本には不向きとされています。今回は買えるのでしょうか。
共同通信が2025年2月27日に報じたニュースによると、今月7日にアメリカで行われた石破茂首相とトランプ米大統領の首脳会談において、石破首相は、アメリカ製大型輸送機の購入に意欲を示したと報じられています。
石破首相ホントに言ったの!?「戦車も運べる大型輸送機」の購入…の画像はこちら >>アメリカ空軍のC-17「グローブマスターIII」輸送機(アメリカ空軍)。
同記事によれば、この件において日本政府内で有力な選択肢として挙げられているのはボーイング社の軍用輸送機C-17「グローブマスターIII」だそうで、自衛隊が導入すれば、物資・人員の輸送能力が向上すると考えられています。
航空自衛隊では現在、国産のC-1(2025年度退役予定)とC-2(2016年就役)、アメリカ製のC-130H「ハーキュリーズ」(1984年就役)の3種類の軍用輸送機を運用していますが、C-17はこれらの機体よりも大型で、輸送能力も優れています。
特に重量物の輸送に関しては、アメリカ軍では重量50t以上のM1「エイブラムス」戦車を空輸することができ、これは現在の航空自衛隊の輸送機では実現できない、大きな強みといえます。
C-17は非常に高性能な軍用輸送機であり、一見するとそれを航空自衛隊が導入することは大きなメリットになるようにも思えます。しかし、この機体を石破首相の発言どおりに新しく購入するのは難しいといえるでしょう。
最大の問題は、C-17の生産が2015年に終了している点です。生産を再開させるという選択肢もありますが、その場合は工場の製造ラインを準備するだけでなく、機体に使われている膨大な数の部品類を生産する企業にも働きかけ、サプライチェーンを復活させる必要があります。これには膨大な時間と経費が掛かりますし、2015年の生産ライン閉鎖によって防衛産業から撤退した企業も少なくないため、実現の可能性は不透明です。
このため、現時点で日本がC-17を購入できる確実な方法は、他国で使用しているC-17を中古で購入するしかありません。
運用面でもC-17は問題があります。同機は、C-1輸送機の後継機を選定する際に候補の1つでもありましたが、機体が大型で重量もあるため、日本国内の一部空港では運用が難しいと判断されました。
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首脳会談でトランプ米大統領と握手する石破首相(画像:首相官邸ホームページ)。
このような経緯から、航空自衛隊はC-1の後継機として日本の空港事情に合ったC-2輸送機を開発し、調達しました。
なお、航空自衛隊には現在、C-2より大きな軍用輸送機の新たな導入計画はないことから、今回の「アメリカ製大型輸送機の購入」というハナシは、現場の要望ではなく、政治的な意図が強いと考えられます。実際、今回のニュースを報じる各社は、このアイデアを「交渉材料」だと論じています。
今年(2025年)から始まった第2次トランプ政権は、防衛負担の軽減を目指し、各国に防衛予算の増額を求めています。今年1月のダボス会議では、NATO加盟国に対し、防衛費をGDP比5%まで引き上げるよう要請しました。
中国の脅威や台湾有事を考えると、日本も安全保障問題では最前線にある国であり、トランプ大統領が同様な要求をしてくる可能性が高く、その交渉を有利に進めるためのカードとして、この「アメリカ製大型輸送機の購入」が持ち出された可能性があります。
合理的に考えれば、C-17の新造機を購入するのは非常に難しいですが、一国の元首から出た発言はそれだけの重みと影響があるともいえます。
目を転じても、航空自衛隊のC-130Hはすでに導入から40年が経過しつつあり、後継機の選定が必要になりつつあるのは事実です。それに対して、改良型のC-130J「スーパーハーキュリーズ」を新造で購入する以外に、前出のC-17の中古機を購入するというのも候補として挙げる可能性はなくはないでしょう。
今回の石破首相の発言、その真意とともにどのような波紋を呼ぶか筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)は引き続き注目していきます。

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