80年前の南海トラフ巨大地震 家は流され壊滅「地震から6~7分で津波が来た」“避難できない”避難ルートも

南海トラフ巨大地震の津波が「わずか数分で到達する」と予想される地域があります。約80年前の地震を教訓に対策が進んだ一方で、新たな課題に直面しています。
三重県熊野市の七里御浜海岸。雄大な光景が広がり、多くの観光客を引き寄せます。
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しかし…(名古屋大学 鷺谷威教授)「ここは南海トラフに面しているので、巨大地震が起きると非常に強い揺れがくる。そして、揺れの直後に大きな津波もやって来る」熊野市は南海トラフ巨大地震では最大震度7、約4分で1メートルの津波が到達します。
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去年8月、日向灘の地震を受けて初めて発表された臨時情報で、花火大会は例年以上に入念な対策を迫られることに。
Q.開催が危ぶまれるという話も聞いたが、その時はどういう話し合いがされた?(熊野市観光協会 中平孝之会長)「延期すると決めても、いつまで延期したら大丈夫なのか。避難誘導をするボランティアを増やすとか、やれる限りの対応はした」
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市と観光協会は、避難経路の標識を新たに設置。さらに、避難場所を示した地図を初めて配布するなどの対策をとって、なんとか通常通りの開催に。(名古屋大学 鷺谷威教授)「予定通り開催されたのは、正しい判断だと思う。臨時情報が全くない時でも、大地震が起きる可能性はゼロではない」
南海トラフ沿いではプレートが沈み込み、これまでも巨大地震が繰り返されてきました。約80年前の1944年12月7日に起きた「昭和東南海地震」は、熊野灘が震源でマグニチュード7.9。強い揺れや津波で1200人以上が死亡しました。
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七里御浜海岸から約10キロ離れた熊野市新鹿町は、遠浅の海と白い砂浜の新鹿海水浴場で知られます。ここも昭和東南海地震で、甚大な津波被害に遭いました。(昭和東南海地震を経験 大矢耕太さん 93歳)「(地震から)6分から7分くらいだったと思う。津波が来たという情報が入ったので、みんなで避難しようということで、城山という高台に避難した。全部川べりがやられている。半壊の建物はあまりなかった」
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93歳の大矢耕太さんは当時、国民学校で強い揺れにあい、同級生らと一緒に高台に逃げて助かりました。津波で多くの家が流され、町は壊滅状態になったと振り返ります。Q.津波が来ることは、聞いていましたか?「この周辺で(津波は)90年ぶりでしたから。あんまり子ども心には、聞いたことはなかったと思いますよ」16人が死亡した新鹿町では、津波の経験を後世に残そうと、住民が津波の到達した場所に石碑を建てました。石碑は南海トラフを震源とする過去3回の地震のもので、現在のハザードマップと重ねるとすべてが津波浸水の想定エリアにあることが分かります。
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(名古屋大学 鷺谷威教授)「過去の記録がいろいろあるので、それを町中でわかるように残しておこうという取り組みがされたんだと思う。日頃こういったものを見慣れることで、どこに行けば逃げられるとか、どれくらいの高さだということがおそらく住民のみなさんの中にすり込まれているんじゃないかと思う」
町内では1997年に自主防災会を立ち上げ、年に1回、避難訓練を続けるなど防災意識を高めてきました。市も高台など9か所を避難場所に指定したほか、海水浴客を高台に誘導する看板もあちこちに。
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実際に海岸から看板の指示に従って高台まで歩いてみました。三重県の想定では新鹿町には、地震発生から約6分で20センチの津波が到達するとされています。(桜沢信司気象予報士)「到着しました。かかった時間は5分15秒です」ただ、別の避難場所への看板をたどっていくと…(名古屋大学 鷺谷教授)「開いていないですね」(桜沢気象予報士)「え?これ行けない?」
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民家の軒先を通る避難経路は、ここが空き家になったことで使うことができず、“避難できない”避難経路があることを地元の区長も知りませんでした。
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(桜沢気象予報士)「行き止まりになっていて、避難できないじゃんと思った場所もあったんですが…」(新鹿区長 内田正明さん)「そうなんですか、それはどこらへんなんなの?」(桜沢気象予報士)「湊高台という所」(新鹿区長 内田さん)「日和があったら見に行ってくる」
場所によっては矢印の向きが消えてしまっている看板も。人口約660人の新鹿町の高齢化率は約6割で、防災の担い手の高齢化も避けられないのが実態です。
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(名古屋大学 鷺谷教授)「津波は必ず襲ってくるまでの時間がある。ちゃんと逃げればみんな助かる。とにかく逃げるというのが基本です」昭和東南海地震から約80年で進められた「それぞれの地域にあった対策」は、高齢化など「時代にあった対策」に変えていけるかが問われています。
CBCテレビ「チャント!」2024年12月6日放送より

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