今さら戦闘機に機関砲って必要なんですか?「ミサイルや爆弾があれば何でも攻撃できるハズ」←それ間違いです!

戦闘機が搭載する機関砲は、対空戦闘においてはもはや必要性が薄まりつつあります。しかし、だからといって不要かというとそうではありません。対地攻撃では今もミサイルや爆弾より有用な場面が多々あります。
現代の戦闘機に搭載される機関砲は、その存在価値を問われ続けています。
今さら戦闘機に機関砲って必要なんですか?「ミサイルや爆弾があ…の画像はこちら >>25mm機関砲の射撃試験を行うF-35B。F-35B/Cは機内に機関砲が搭載されていないが、写真のように外装することが可能である(画像:ロッキード・マーチン)。
1990年代まで、すなわち東西冷戦期までの空中戦では、機関砲はパイロットのスキルと戦術を反映する最後の手段としての価値がありました。しかし、空対空ミサイルの性能が向上し、射程や命中精度が飛躍的に向上したことで、近接戦闘における機関砲の必要性は大幅に低下しています。実際、今日のドッグファイトはミサイルが主体で、機関砲はほとんど使用されません。
しかし、戦闘機の機関砲はミサイルにはないメリットがいまだあるのも事実でしょう。具体的には、その汎用性の高さです。特に、地上目標に対する攻撃、いわゆる地上掃射においては有用です。
地上掃射は目標を直接、破壊するだけではなく、敵部隊の移動を阻止したり、防御態勢を混乱させたりといった心理的な効果も大きいです。敵兵士からすると、突然降り注ぐ機関砲弾は恐怖そのものであり、その威力と音響は戦場での心理的優位を確立する手段ともなります。こうした効果を「制圧」と呼びます。
現代の戦闘機に搭載される機関砲は、強力でありながら使い勝手が良く、さまざまな場面で有用です。例えばF-15やF-16、F/A-18などといった戦闘機に搭載される20mmバルカン砲は連射速度が非常に高いのが特徴です。高速飛行するジェット戦闘機が地上目標を攻撃する場合、射撃のチャンスはごく短時間、通常0.5秒程度しかありません。しかし、この短時間でもバルカン砲は最大50発もの弾丸を発射できるのです。射撃時、弾は数十mから100mの範囲で散布され、目標地域を効率的に制圧します。
こうした地上制圧の用途に特化した象徴的な存在と言えるのが、A-10攻撃機が搭載するGAU-8「アベンジャー」30mm機関砲でしょう。
また最新鋭のF-35戦闘機に搭載される25mm機関砲は、20mmと30mmの中間的な性能を備えています。F-35はステルス性能が重視されていますが、その設計段階から近距離での地上掃射の任務も想定されています。
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Ju87G地上攻撃機。主翼下に37mm対戦車機関砲を搭載した異色の攻撃機。元々急降下爆撃機だったが地上掃射用に再設計された派生型だ(画像:パブリックドメイン)。
通常着陸型のF-35Aは機内に機関砲を標準搭載していますが、垂直離着陸型のF-35Bや空母艦載機型のF-35Cは機外に機関砲ポッドを携行することで装備可能であり、どのタイプとも対地攻撃の場面で地上掃射を行えます。
こうした機関砲の真価が発揮される場面のひとつが、「デンジャークローズ」と呼ばれる状況です。これは、地上部隊どうしの戦いにおいて味方と敵が極めて接近した状態を指しますが、大抵このような場合は激戦となるため、地上部隊からすると一刻も早い航空攻撃(対地支援)を要望します。
しかし、爆弾やロケット弾による航空支援は誤爆のリスクが高くなり、使用することが難しい場合、機関砲が多用されます。なぜなら、機関砲はミサイルをはじめとした誘導兵器ほどではないものの比較的精密な攻撃ができるからで、誤爆を回避しつつ目標を制圧可能です。
近年の戦闘機は昼夜問わず映像認識できる赤外線前方監視装置や、デジタルネットワーク端末の搭載が進んだことにより、味方の地上部隊が攻撃してほしい対象を正確にパイロットへ伝えられるようになっています。
そのため、地上掃射の有効性も増しつつあり、その高い汎用性のおかげで状況によってはミサイルや爆弾で対処できないものに対しても攻撃を加えることが可能であり、友軍に貴重な選択肢を提供します。特に、対テロ作戦やゲリラ戦といった非正規戦において、戦闘機の機関砲は迅速かつ精密な攻撃を可能にするため、重宝されています。
戦闘機が未来の戦場でどのように進化していくとしても、当面の間、機関砲はその歴史的意義と現代戦での実用性を兼ね備えた、欠かせない武器であり続けると考えられます。

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